■ 3月の戯言 ■

3月3日

左胸になんだかちょっとだけ違和感を覚える。裸になり鏡の前に立ち、腕を上げてみると皮膚が引っ張られ、今までそこにあった大きいとはいえないたった一つの膨らみが消え失せ、鎖骨の真下から左の肋骨の一番下の辺りまで、小さな乳房がボコボコといくつも並んでいる。それはまるで、数日前に蔵王のスキー場で見たコブ斜面のように。そして、規則正しく並んだその小さなコブ斜面のちょうど真ん中らへんの膨らみの突端に、たった一つついていた乳首。多分、このここが元々の妻の乳房があった場所。

そう、妻の左乳房が1つではなく10個近くも増えていたのだ。一つ一つは以前よりも随分と小さくなっていたけれど。

乳首のついていないほかのコブに手を当ててみたけれど、硬いわけではない。シコリではなさそうだけれど…。

恐ろしくなり、とにかく病院へ急ぐ。

レントゲン写真を見ながら医者は、うーんと唸りこういった。

「異常はないんですけどね。まれにあるんですよ。胸が小さいというコンプレックスが、こんな形で現れたりすること。

ある程度、トシ取っちゃうと、もぅ胸が大きく成長するなんて無理でしょ。

でも、脳は『不満だ』って信号を送る。

そうるすとですね、ココ、ココの脂肪細胞の組織がですね…」

そういいつつ手にしていたサインペンで妻のコブ斜面のような左胸を上から順番に突付いていきながら、

「んだよ、だったら数で勝負してやろうぢゃねーか、って乳房自体を増やしちゃうんですな。脳に対する反発ですよ。

大きくなれよ、っていう指令を送ってる張本人はね、コレ」

と、医者はサインペンの先端でゴマ粒大にまで縮小してしまった左の乳首を押した。

「うわ、押すなって指令を今、ワタシに送ってますよ。キテますキテます。乳首パワーです。

あ、乳癌かもしれないとゆー不安がおありのようですが、そうぢゃないので安心してください」

安心しろといわれても。てゆーか、先生大丈夫?

「治りますよ。貴方の気持ちの持ち様次第で。大きくなりたいなんて思わないこと。それにつきます。でも貴方…治しちゃいたいんですか? 右側の貧相な胸みたいに。今の方がよっぽどいいぢゃないですか。質より量で勝負なんて素敵ですよ」

はぁ?

何を言っているんだ、この医者は。

「シュワちゃん、知ってます? シュワルツェネッガー。カリフォルニア州知事になった。アレが出ていた映画『トータルリコール』、観たことあります? あれにね、オッパイが3つ並んでる女性が出てくるんですけど、圧巻ですよ。

やっぱ、オッパイは質より量。

2つより3つ。3つより4つ。

犬や豚のオッパイなんてグっとくるぢゃないですか。

ワタクシ個人的な意見を言わせていただければ、この左胸、1つにしようと思わないで、右の胸も今の左胸と同じように増やして…」

イヤァァァァァァァー!

てところで、目が覚めました全くリアルで気色の悪い夢から。

鏡に写ったコブ斜面オッパイの映像が頭に焼き付いて離れず、パヂャマ代わりにしているTシャツを捲ったり、触って感触を確かめる勇気も出なかったので、ブラヂャーもつけずパヂャマ代わりのTシャツの上からフリース羽織って一日過ごした昨日(愚犬の散歩も当然ノーブラ)。

まぁ、夜にはすっかり朝見た夢を忘れて風呂場で思い切り裸になっちゃったのですが、そのときふと鏡に目がいって、「そういえば」と思い出し、自分の左乳房をまじまじと観察しました。腕を上げてみたりして。

スキー場のコブゲレンデにはなってませんでした。

よかった。

大きくもなってなかったけど。

3月8日

朝の散歩。

風が強くて、なんだか目が痒い。

もしかして花粉症?(顔洗ってないからだけど)

自宅に帰ると、クシャミもでる。

やっぱり花粉症?(紙縒りで鼻の中ツンツンしたからだけど)

朝のニゥスで「強風でスギ花粉が大量に舞いそうです」なんていってたから。

確信はないけど、なんとなく。

妻もやっと…やーっと流行に乗ったかな、なんて。

それに引き換え、我が家の2匹は大ベテラン。

カフンショーキャリアー。

過糞症の方だけど。

3月13日

金曜日は一日中偏頭痛に悩まされていた妻。その日の夕方、妻の携帯が夫からの「23:47着です」というメールを受信。要するに、仙台駅まで迎えに来いというわけです。23時を回った頃、車を暖機しておかねばとエンジンをかけ、家に入ると「あぁ、頭が痛いいたい」と唸りながらバファリン2錠を口の中に放り込む。

コメカミをグリグリと押してみたり、頭をマッサージしたり、痛みをなんとか和らげようとしたんですが、こーゆーとき、愛犬の温かい腹や腋の下に顔面をくっつけて埃くさい犬臭を思い切り吸い込むのが一番の治療法だということに気づきました。

あぁ、癒される。

時計の長い針が12分をさしまして。

あわわ、そろそろ家を出て駅に向かわなきゃと立ち上がる妻。

自宅の鍵は持った、おーし。

免許証は持った、おーし。

車の鍵は?

ええと、さっき電話の横に…ない。あれ? どこだ?

1階をウロウロと歩き回るが見つからない。

1階にないってことは2階か?

階段を駆け上がりPC部屋を覗いたり、洗面台を覗いたり。

ない。

そうか、昼間着ていたジャケットのポケットかも。

1階へ駆け下りるとソファーの上に投げ出されたジャケットを引っつかみ、ポケットをまさぐる。

ない。

昨日着てたダウンベストのポケット?

再び2階へ駆け上がると、椅子に掛けていたダウンベストのポケットに手を突っ込む。

なーいっ!

焦る妻。頭も痛い。泣きたい。

もぅ家を出なきゃ、絶対間に合わない。

どこどこ?

どこなの車の鍵…。

15分ほど家中を引っ掻き回して…もしかして、車の中かもと玄関の扉を開け、マフラーからモクモクと白い湯気を出している愛車を見てやっとやっと気づきました。

暖機中やんけ。

エンジンかかっとるやんけ。

妻の人生、半分は探し物。本気で夢の中へ行ってみたいと思っています。つか、もぅ帰ってくんなーっ!

3月17日

遅い時間に車屋の営業担当Fさんから電話がある。

『ぎゃ、何の用かしら? また金のかかる話だったら聞かないわよ。モデルチェンヂしたとか新車が出たとか言われても買う金なんてあるわきゃないし』

「いや、そうぢゃなくってーっ。車の調子はどうかなと思ってかけただけですってばー。どうっスか、最近、遠出してますか?」

『あ、そなの。まぁチョコチョコとね』

「そうですかー。ええと、どのくらい走ってます? いやね、アレから走行距離が5,000キロ越えたらそろそろオイル交換の時期かなーと思いましてね」

『ひぃ、やっぱり金のかかる話ぢゃん』

「いや別にそうぢゃなくってー。どのくらい走ってます?」

『大丈夫。

越えそうになったらバックで走行するから』

「…」

『減んないの?

走行距離、バックだと』

「んなわけないですからーっ! 

…そういや、前回も同じようなコト、言ってましたよね…」

ぎゃ! 二度出しだったとは…。妻、相変わらず進歩なし。

3月20日

今年に入って、初めてヘアブラシで髪の毛を梳かしました。

夢の中で、ですけど。

現実にはどーかとゆーと、ええと、ココ2年くらいヘアブラシなんか使ってません。手櫛です。

数年前に高級ヘアブラシを購入したとゆーのに。

そのブラシ、現在どこにあるのかも分かりません。

もしかしたら、夫が単身赴任先の江戸に持っていってんぢゃないでしょうか。

夫…坊主頭だけど。

3月21日

昨日、今日と外は物凄い暴風。明け方から続いた風は午後になっても収まる気配を見せず、風がサッシを押して隙間風がビュービューと侵入してくる。ファンヒーター一つでやっと16度前後にまで上がった室内温度を一気に奪っていく。

風が入ってこないように窓に突っ張り棒を施し、コの字でがっちりと噛みあっている左右のサッシが風によって押されて外れてしまうのを防ぐと、今度は窓枠自体がメリメリと音を立てて壊れてしまいそうな勢い。

県内では、屋根を吹き飛ばされてしまった家屋もあるという。

そのくらい凄い風。

今朝も午前3時に、ミシミシという木材の軋む激しく不気味な音に目を覚ましてしまった。

地震でもないのに揺れる2階の寝室。

「もしかしたら、我が家の屋根も吹き飛ばされちゃうかも」

どうしようどうしようと思いつつも、掛け布団で顔をスッポリと覆う。

ゴーゴー、メキメキミシミシ、ゴォォー。

バーンドスーン、メリメリ、パカパカ。

我が家の屋根が宙を舞う映像を思い浮かべたつもりが…。

何故か、それはいつの間にかボクシングの小口雅之選手の姿に変わっておりました。

午前3時から6時半まで、風と家の軋む音をBGMにエンドレスで流れる小口雅之選手のパカパカヅラ映像。

我が家の屋根がぶっ飛んでいったら、クログロ(9696)に電話すればいいですかね(汗。

3月28日

〜風呂釜に 女房飛び込む 水の音〜

ギャー、ちべたい。

んもーっ! 風呂のスイッチ入れたつもりだったのにー。あれは夢だったの?

〜震えつつ 汚パンツを履く 侘しさよ〜

つか、素っ裸で脱衣籠漁ってる自分の姿が情けないとゆーかナンとゆーか。

3月29日

コッパゲ天気予報士の斉藤サンが、今日は山登りはやめたほうがいいと申しておりました。山は吹雪いておるんですと。ふーん。我が家のあるココも既に雪がちらついて、風がすごーく強いんですけど…。

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愚犬の散歩ちゅう、Aさんとバッタリ。

「オハヨー」

声をかけると、Aさん、妻に向かってこういった。

「あら、ちょっと痩せたんぢゃない?」

「えぇぇーっ!? BJぢゃなくアタシ? サラぢゃなくアタシが?」

「うん」

ひゃっほーひゃっほー。嘘でも嬉しい。

「ホント? ホントに痩せたっぽい?」

「いや、わかんないけど…」

嘘かよ。

やっぱ、嘘は嬉しくない。

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