■ 7月の戯言 ■

7月3日

昨日の早朝、おかんから電話がかかってきました。

「ちょっとー! プリンが襲われたんよっ!」

えぇー?

「しかも2回もーっ!」

えぇぇぇーっ!

「猿にっ!」

えぇぇぇぇぇぇーっ!

ここ最近、実家の近所では土地開発が原因なのか、時々猿が目撃されているらしいのです。以前にも、「猿がセブンイレブン寄った後、マックスバリューに行きよった」とゆー報告が上がっております。ウィンドーショッピングを楽しむ猿情報の提供者は、後を付けていった探偵おかんだけど。

おとんとおかん、二人で愛犬の散歩に出かけた一昨日の夕刻。

藪の中から突然飛び出してきた猿が、プリンの尻に飛びついてきたんだとか。思わず叫んだおかんの声に、猿はそのまま逃走。噛まれた様子はなかったので、気を取り直して歩を進めたらしいのですが…。

数分後、2度目の攻撃を今度は足に受けたんですと。愛犬の後ろ足。噛み付かれたのではなく、飛びかかってきて、掴んだだけだったようで、2度目も外傷を受けた様子はなかったとのこと。

不意を衝かれ後ろを取られてしまった愛犬は、尻尾をダラリと落としたまま、意気消沈。

それにしても、1度だけではなく執拗に2度とは。

ふと、おかんが前方に目をやると、先ほどの猿が路地陰からジーっとこちらの様子を伺っていたそうです。

ひゃぁぁー。

狙われた家族…。

猿に(笑。

「それにしても、1日のうちに2度なんて、凄いね。隙あらば3度目もあったね。でも、攻撃的だったわけぢゃないし…」

猿の年齢は2,3歳といったところ(そんなに大きくなかった。でも母親に抱っこされてるような子猿でもなかった、とゆーおかんの言葉より妻が勝手に推測)。

おかんに親近感を感じたんぢゃないの?

でもって、一緒に歩いているプリンに嫉妬したのかもね。

なんてことを言ったら、おかん…。

「ウキィィィー!」

と怒っておりました。

7月5日

近くのホームセンターに、犬の餌を買いに行ったおとん。

両手に犬餌の大袋を抱えている間に、財布を掏られたというのです。

その話を聞いて、お江戸にいる夫のことが心配になった妻は、あなたも十分気をつけるようにと電話を掛けました。

「いやぁ、世の中油断も隙もあったもんぢゃないねー」

そう妻が言うと、すかさず夫。

「とーちゃんは油断と隙だらけだったんだね」

会話終了。

すぐさまおかんへ電話を入れる妻。

妻と夫の会話を一語一句正確におかんに伝えました。

すると、おかん。

「かっちゃんも、たまには気のきいたこと言えるんやね」

褒められ…たのか?

----------------------------------------------------

妻とおかんは、それからダラダラと1時間近くも長話をしておりました。

話題は年金のこととか久間氏の「しょうがない」発言についてとか、ミートホープの話とか。

そして深い溜息をつく二人。

「なんか虚しくなるねー」

「だねー」

「でもさー。何が一番虚しいかってさーアタシはね…起きて1階に下りてきたときよ。

部屋の真ん中に、パパが買ったマッサージチェアと乗馬の機械(ロデオボーイ)がデーンとあるの見たときっちゃ。窓開けてもマッサージチェアが邪魔で、風は入ってこんし…空気が淀んどるんよ。

アタシはね…あの二つを見ると虚しくなって涙が出てくるんよ…」

おとんの衝動買い問題については、「しょうがない」で60年以上黙認されてきました。

しょうがない。

しょうがない。

後任もいないしね。

------------------------------------------------------

ところで、掏られたとゆーおとんの財布ですが…。

警察の態度は「とりあえず被害届けは受付けますけどねー。たいていはどっかに置き忘れたっちゅーことが多いんすよねー」とヤル気なさげだったそうです。

その対応に随分とおかんむりではあったのですが。

台所のオーブントースターの前にあったそうです。

ポイントカード満載のおとんの財布。

しょうがない。

しょうがない。

人生は己を探す旅だからね。

妻は財布や印鑑や通帳を探す旅の真っ最中だよ。

DNAっておっとろしー。

7月10日

テーブルに手鏡を置いて、その鏡を覗き込んだら10年後のアナタに会えます!

なんてことをTVでやっておりました。

下を向き瞼や顎の肉が弛んだ状態のその顔が、10年の老いを現すとゆーんですな。

「10年後の妻に会ってみたーい!」

てことで手鏡を探す。んが、普段全く化粧をしない妻にはそーゆー洒落たものがありません。

「顔が映りゃええんでそ?」

引き出しから取り出した代用品を、床と平行に持ちそーっと覗き込んでみる。

誰?

浮腫んだ皮膚より、巨大な鼻に目がいくんですけどーっ。

つか、どこのオヤジ?

手鏡がないからといって、スプーンで代用するのはかなり衝撃的でありんす。

7月12日

「超極細毛だから、歯と歯ぐきの狭い隙間に入り込んで汚れを掻き出す〜」

なんつー謳い文句の抗菌歯ブラシ。

なるほど、歯に挟まったネギも見事に掻き出してくれました。

んがーっ。

妻の口の中から、ブラシへと移動したそのネギは、ブラシをしつこく指の腹で洗ってもズンズンと奥へと入り込んでなかなか取れやしない。

丸一日ブラシの間で放置されたネギ。

抗菌歯ブラシとゆーけれど。

ネギは腐ってんぢゃねーの?

危ない菌を放ってんぢゃねーの?

そうなると歯ブラシを綺麗にブラッシングする歯ブラシブラシがいるんぢゃないのか。

で、今度は歯ブラシブラシに移動したネギを掃除する為の歯ブラシブラシブラシなんてのもいりそうだし…。でもって、歯ブラシブラシブラシブラシのブラシも…。と限りなくブラシをくっつけていくと、ブラシがもはや汚い響きにしか聞こえなくなってしまう妻なのでありました。

7月19日

未だに下着の捨て時が分からない。

死んだばーちゃんには、「いつ交通事故に遭って病院に運ばれるか分からんのだから、下着くらいはいいモンつけとかないかん」と言われてたのに。

それが遺言だったのに。

いや、遺言とは違うけど。

ごめんね、ばーちゃん。

30歳を過ぎた辺りから、貴方の孫は言いつけを守れなくなっちゃってるよ。

パンツなんて最後に新調したのって、いつだか思い出せないもんね。

引き出しの中にある下着は、どれも古着。ビンテーヂもんだよ。擦り切れて穴の開いたパンツ。ワイヤーのよれたブラヂャー。昨日履いてたこげ茶色のパンツなんて、糸がほつれて、トイレでパンツ上げようとする度にその垂れ下がった糸をシモの毛と見間違ってギョっとしてたもんね。

なのに「あぁ、糸だったか」って安心したら、鋏で切って処理しようともせずそのまま放置。洗濯したらまた履くね。で、洗濯してもっと長くなったこげ茶色の糸に、昨日以上にまたギョっとするね。

パンツくらいいいよね。いい。交通事故にあって目撃されたとしても、どーせ医者くらいだし。恥ずかしがるトシぢゃないよ、うん。

そう思ってたら…。

今日つけてるこの乳当てバンド。布地がテロテロとゆーか、気合い入ってないとゆーか、つけてるうちにカップ部分の上半分がフニャ〜っと下りてきて、いつの間にやらびーちくコニチワーしてんの。

知らずに散歩、行っちゃったよ。

町内練り歩いちゃったよ。

明日から妻はシャラポワさんって呼ばれるかな。

7月21日

今にもガソリンランプが付きそうな愛車で、買い物の帰りに銀行へ。向かったのは融資の窓口。ガソリン代を貸してもらうためです。

嘘です。

先日、銀行から電話があって、住宅ローンのことでお話があるから来い!といわれたため。

要は現在返済している住宅金融公庫のローンの金利が、10年目を迎える来年からドドーンと上がるので、代わりに銀行で借り換えをしたらどーかとゆー話だったわけです。住宅金融公庫とは手を切って、オレと付き合えこの先20年。てことですな。

Oさんは、いろんな資料を机に並べ、電卓を叩いておりました。

「こっちのだと2.75%。これが4%になるわけで…で、こっちだと今後10年間2.4%なわけで…」

妻の目の前にあった真っ白い紙に、どんどん並べられる数字の数々。

机を挟み、担当のOさんの前で肘をつき神妙な面持ちの妻。

ほぅほぅほほぅー。

「固定金利の期間が終了してもですね、変動金利にするか固定金利にするか選ぶことができるわけです。で、固定金利期間中はうんぢゃらかんぢゃら…」

サインコサインタンヂェントースイヘーリーベボクノフネーイイクニツクローカマクラバクフーピーピーガガガガッドッカーン!

Oさんが喋り始めて僅か数分で、妻の脳内コンプーター爆発。

あぁ、そうだ…。

こーゆー空気って、学生時代の物理とか数学の授業と同じだなぁ、と。

あの頃、もうちょっと真面目に勉強してれば、違う人生歩めただろうなぁ、と。

でもなー、やっぱ眠かったんだよなー。

黒板に書かれてる文字が暗号にしか見えなかったんだよなー。

分からないことがあったら質問しろ!とか言われたけど、何が分からないのかもわからない状態でさー。

先生の喋る言葉も、お経に聞こえて…それが子守唄に変化して…。

そんなことを思い出してたら、いつの間にか思い切り居眠りしとりました。

Oさんの目の前で。

7月26日

義母はる子さんから電話がありました。

「さっき実家のおかーさんに、お中元のお礼の電話をかけたんだけどね…」

はる子さんの言う「実家のおかーさん」ってのは、つまり妻のおかんのこと。

「詳しいことは、よく分がんねかったけど…最近、家の近所に猿が出るって。詳しいことは、よく分がんねかったけど…おかーさん、TVに映ったんだと! 塀の上に座ってる猿を撮りにTVが来たとかナンとか…」

ええ!?

うちのおかんがTVに?

そんな話、妻は聞いてないですよ。

てなわけで、早速詳細を聞こうとはる子さんとの会話を打ち切り、おかんに電話をかけた妻。

「誰がね。誰がTVに映ったちね? アタシ? 嘘やろ。アタシ、そんなこと言うてないがっ!」

はて…?

これは一体どーゆーことなんでしょ。そういえば、はる子さんは、おかんが何を喋っていたのか詳しいことはよく分からなかったけど、と前置きしてたっけ。

「アタシの言葉が訛っとったけ、分からんかったっちゅーんやろか?」

うん。多分、そんなところだと思うけど。

「なんがねっ! アタシのどこが訛っとるっちゅーん? んもぅ、失礼なっ! おかーさん(はる子さん)との会話、ものすご弾んだのにから…うわー、そうですか、とか言うとったのにから…なんでやろ、なんでやろ。どこが分からんかったっちゅーんやろか…ブツブツ」

おかん、かなりショックを受けておりました。

妻が実家を離れてお江戸で働くことになったとき、おかんはこう言いました。

「地方から東京に行った人は方言が抜けんで困るっちゅーけど、アンタは困らんやろ? 北九州は標準語やけんねぇ」 

妻は上京してしばらくの間、おかんのこの言葉を信じていました。

人前で「東京は土地の値段が高くてねぇ」という言葉を発した後、「ポチかよ!」と突っ込まれるまで。

北九州ではね、「土地」って言葉のイントネーションが犬猫の名前でよく使われる「ポチ」ってのと同じなの。語尾が下がるの。

つか、東京ぢゃ、とっとーと?とか言わねーし!  

7月30日

CSNチャンネルで、「世界で一番パパが好き」を放映していたのを、見るともなしに眺めておりました。

「あと5,6年もすりゃ、パパ臭い!ウザい!あっちいけ!とか言うくせに」とか呟きながら。

まぁ、そんなことは、どーでもいいんですが。

主演のベン・アフレック。

カッコいいけどベン・アフレック。

ベン・アフレック。

ベン・アフレック。

どうも、彼の名前を聞くと…。

こんな状態を思い描いて、思わず便所を確認してしまうのです。

Back