■ 12月の戯言 ■

12月3日

ヨーグルトの食べすぎなのか、一日に3回もうんこが出たのよね。

3回よ!3回。

あ、BJぢゃなくて、妻の話なんだけどさ。

3回目はね、2階のトイレで気張ってたわけ。はぁ〜スッキリしたーと思ったところで、いきなり電話の呼び出し音が鳴っちゃってさー。

でもね、3回目にもなるとキレ味悪くなるっつーかさぁ。

電話には早く出ないといけないのに、拭いても拭いてもうんこはついてくるし。

しょうがないから、パンツを膝まで下ろした状態で1階まで駆け下りたさ…。

あ、パンツ膝まで下ろした状態で歩いたことある?

もっすご歩幅狭くて歩きづらいのねー。階段駆け下りるなんて、かなり高度な技術がいるよ。やってみ、今度。

ま、そんなことは、どーでもいいんだけど…。

電話は車屋からだったんだけどね。んで、車屋の人と喋ってる最中に、ピンポーンて今度はインターホンが鳴ったのよ。

パンツ下ろしてんのに。

とりあえず車屋にはそのまま待ってもらうことにして、受話器を置いてさ…さぁどーするよ。

パンツ下ろしたまま玄関の扉開けて、お客さんに「こんにちわー」は、いくらなんでもないよね。

でも、うんこつくんだよー。

んもぅ! パンツ履いたらうんこつくしーっ!なんて、独り言っつーか、けっこうデカい声出して騒ぎながら、結局履いたさ。ノーパンでご対面なんて、やっぱできないからね。

お客さんてのは、請求書を渡し忘れたつって戻ってきた生協のにーちゃんだったんだけどさ。

手渡された請求書もって、うんこつかないようにカニ歩きっつーの? すんごい変な格好で歩いて電話に戻ってね…。

受話器を耳に当てたら、受話器の向こうで笑い声聞こえてやんの。女の人の声でスカートがどうたらこうたら言ってる声が聞こえたからさ…てことは、多分、妻の「うんこつくしー」なんつー独り言が完璧に聞こえてたんだよね。そうだよね。

サイアクー。

んもぅ、うちの安電話、保留機能ないしさー。

てなことを散歩中にIさんに話しておりましたら、それまで軽快なステップで歩いていたBJがいきなり座り込み、そしてシリの穴をアスファルトに擦り付けておりました(両後ろ足が完全に宙ぶらりん状態で)。

以心伝心とゆーものがあるのかもしれません。

つか、1日3回もうんこが出た時点で、妻にBJが降臨してたのかも…(怖。

12月4日

寝る前にしっこをさせようと、サラを抱き上げダイニングの窓を開けました。

デッキの上に下ろして、さぁ行ってこいとお尻をチョンと押すと、いきなりよろけて倒れます。

ギクリ。

もしや、腹の腫れの影響が出て歩行が困難になったのかしら?

起き上がるも、一歩足を出すとフラフラ。庭に下りようとデッキの一番上の階段に足をかけた瞬間、派手に地面まで転げ落ちてしまいました。階段は3段ですが。

「だだだ、大丈夫ーっ!?」

慌てた妻、室内用スリッパのままデッキへ飛び出しサラに駆け寄…ろうとしたら、ギャォー!

足を踏み外してドーン。

階段の角っこが尻タブにガーン。

雨で濡れたデッキが、そのまま凍ってアイスバーンになってただけでした。

尻を摩りながらしゃがみこんだままの妻を残し、しっこを済ませたサラは涼しい顔で「早く窓を開けて中へ入れろ」と催促しとります。チェッ、なんだよっ…。

車のタイヤ交換みたいに、犬の肉球も冬仕様に変化するといいのに。

12月12日

今年一年を表す漢字一文字はナンヂャラホィってのが、本日午後2時に発表になるそうですね。

TVではコメンテーターなんかが、「偽」ぢゃないの? いやいや「謝」だろうなんて予想をしとります。

妻の周りのおばちゃん軍団でもこの話題が持ちきりなのですが、実家のおかんも例外ではないよーで。

今年一年を表す漢字。

おかんにとっての漢字一文字。

「アタシにとっての漢字は、猿やがっ! 猿っ! ウキィーッ」

なるへそ。

でもね…。

きっとその一文字は今年限りってことぢゃ、ないと思うヨ。

12月14日

ヘッドバットやギロチンドロップ。はたまたロープぢゃなくてソファーの背もたれを利用した、フライングラリアットやドロップキックなんつー飛び技まで体得しちゃった愚犬。時には2匹揃ってのツープラトン攻撃で妻にダメージを与えるのです。体に受ける衝撃は、時間が経てば治りますが、ひん曲がった眼鏡のフレームは元に戻ることがないわけで…。

まぁ、視力もここのところ落ちてきたらしく、レンズの度数も合わなくなったしと眼鏡屋さんへ行きました。

「まずは視力を測る前に顔写真を撮らせてくださいね」と、妻の顔にデジカメを向けた店員さん。

なんでだろと思ったのですが、その謎は後で分かりました。

それにしても、最近ぢゃ、うえー!斜め下ー!なんて言わなくても、機械のレンズを覗いただけで視力がある程度分かっちゃうんですね。

細かいチェックを済ませて、待っている間は、ずーっとカトちゃんみたいな丸眼鏡を掛けさせられておりました。

暇なので、眼鏡売り場に設置された鏡に向かってこっそり「カトちゃん、ペッ!」をやってみたりして。

今後、愚犬に頭突きをされても大丈夫なように、形状記憶のフレームを選んだ後は、こちらに座ってくださいな、とでっかいモニタの前へ移動させられました。我が家のモニタよりも二周りほどデカいやつ。

隣に座った店員さんがポチポチっと操作をすると…。

ギョエー!

何者、コイツ?

画面一杯に映し出された妻の顔。

「先ほど選んだフレームを、ちょっと掛けさせてみますね…」

手際よく操作をする店員さん。

「コンピューターでも、お客様の選んだ形のフレームが一番よくお似合いだと出てます。よかったですね」

よかったですねて。

よくない、よくない!

貴方は気にならないのですか?

それとも気づいてるけど、気づかないフリをしてくれてるのですか?

左目の端っこにくっついてる、そのでっかい目糞…。

12月19日

おかんから貰った種で、作り続けていたヨーグルト。

しばらく冷蔵庫の中にあった、このヨーグルトの存在を忘れておりまして。

蓋を開けてみたら、表面を彩るピンク色の膜。

ワ〜ォ、き・れ・い・・・ぢゃなくて、ウンギャー! カビですよねコリャ。

ヨーグルト自体、スプーン1杯分しか残っていなかったので(わざわざそれだけを残しておくなよ)、合掌をして捨てることに。

で、ストーブの上でシュンシュンと湯気を立てていたヤカンを引っ掴み、容器の中へドボドボと注いだのです。器の縁にへばり付いていた塊がペロンと剥がされ、ピンク色のカビの絨毯を雪崩のように浸食していきます。

スポンジでゴシゴシ洗うより綺麗に落ちるわぃとニタニタしていると、モワンと広がった異臭。

くっさーっ。

でも気づきました。

単身赴任中で、離れて暮らす夫へ。

寂しくなったら、腐ったヨーグルトに熱湯をかけて、その香りを嗅いで下さい。目を瞑って思い切り。

愛犬と同じ香りがします。

12月27日

子供の頃、火葬場に連れて行かれたとき、アノ臭いが嫌だと思った。

大好きなじーちゃんなのに、臭いと思った。

吐きそうになるくらい、気持ちの悪い臭いだなと思った。

でも、煙になって空に上っているじーちゃんが、鼻を摘んでオエーオエーなんてやっている妻の姿を見たら、きっと悲しむだろうなと思い直して、姿勢を正したっけ。

なんで人を焼くと臭いんだろう。

豚や牛を焼くと美味しそうな香りがするのに。

「生理的に嫌いな臭いを放つようになっておるのですよ。美味しそうな匂いだと、人が人を食べちゃうようになるからです。そうなると子孫繁栄に影響しますからね」と夫は言う。

同じ肉ぢゃないか。妻はどうしても納得いかない。

そうだ。

きっと、じーちゃんは白装束を着ていたからだ。

衣類の焦げる臭いが混じったんだ。

きっと、棺桶に花や生前の思い出の品なんかまで詰め込んだからだ。

生ごみや不燃物の燃える臭いも混じったんだ。

そう考えながら、小さなヤカンを五徳に乗せて火をつけた。

炎は思いのほか大きく、前屈みになっていた妻の前髪をチロチロと焼いた。

プ〜ン。

コレだよ、コレ。

毛だよ。

もしも妻が死んで焼かれるとき。

臭いと言われてしかめっ面はされたくはない。

臭いと言われるのは生前だけでいい。

「妻が死んだら、体毛は全て剃って、裸で棺桶に入れてね」

できることなら、たくさんの人に天まで見送ってもらいたい。

「んで、体中に薄ーく・・・薄ーくでいいから、醤油を塗っておいて・・・」

集まった人が、例え皿と箸を持ってたとしても、それはそれでいいから。

 

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