■ 3月の戯言 ■
3月3日
本日の午前中、やっと給湯器の修理に業者さんがやってきてくれまして。
これで、今晩から心置きなくシャワーが使えるというものです。
そんなことはさておき、この給湯器の修理中。
なぜか、台所の水道の蛇口を捻っても水が一滴も落ちてきませんで。多分、通水状態だと修理に差し障りがあるからと、業者のSさんが勝手に水を止めておるんだろうと、そう解釈しておりました。
水が使えない。
そう思うと、無性にトイレに行きたくなる面倒な妻の体。
「あ、でもタンクの中には水が一杯に溜まってるわけだから、おしっこ1回分なら流せるか」
で、1階のトイレでジョロロー。
そしてジャバー。
事なきを得ました。
んが。
数分すると、今度は便意が。
1階のトイレのタンクには、当然水が溜まっておりません。
仕方がない。2階で用を足すか。
パンツを下ろして便座にヨッコラショ。
ニュルルー。
あぁ、すっきり。
「2階のこのトイレタンクの水がなくなったら、修理が完全に終わるまでマジで便所には行けないんだゾ」
そう思うと、なんだか第二波が押し寄せてきます。
ニュルルー。
「この1回きりで事を済まさねばならぬのだ、うぐぐー」
腹を揉んだら、第三波。
もう一息頑張れば、第四波がやってくるかもしれないぞンガグググ。
とそこへ、玄関扉の開く音が。
「おくさーん! 終わったんですけどー。あのーっ! おくさーん! 修理代金なんですけどーっ!」
わかっとる。
わかっとるがな、ちょいと待てぃ。
「あれ? いませんかーっ? どこですかー」
2階でうんこ中だなんて、教えられるもんですかっ!
(香りで察しろ)
3月4日
夫が3月6日生まれの妻の誕生日にとくれたプレゼントは、健康診断の書類であります。
しかも、検診の日が誕生日当日、もしくはそれ以降だと、書類に記入する妻の年齢が1つ増えちゃうっつーんで、誕生日の1日前が検診日。つまり明日。涙が出るほど嬉しい優しさ。
そんなことはさておき…、本日早朝、なぜか昨日作業にやってきてくれたSさんが再び我が家を訪ねてきました。
「昨日渡したやつ、あれに旦那さんの名前を書いてなかったんすよ。下の名前…」
あぁ、そうだったっけ?
玄関口で夫の下の名前を教えるも、漢字が分からぬと困った様子のSさん。
「奥さんに渡したやつと、こっちで持ってる用紙…転写式になってんのね。あ、あります? 昨日渡した用紙。んぢゃ、ココに挟んで…」
妻がその場で夫の名前を書き足せばいいだけかと思いきや…。
Sさん、靴を脱いでドカドカと家の中に上がってきました。
いや、べつにええんですけどね。
アナタ、昨日も一日中出たり入ったりしてたわけだし。
我が家の散らかりようも、昨日と同じだし。
書類を持ったSさんは、リビングのテーブルではなく(センターテーブルは低いので、座ると愚犬たちが飛びつくのを避けたんでしょうかねぇ)、ダイニングの方へと迷うことなく歩を進め、そしてテーブルの上に書類を置きました。
「あ、昨日渡した用紙がソレね。んぢゃちょっと貸して…」
ペラペラと捲り、妻の手渡した用紙を挟み込むと、テーブルの上に転がっていた棒状の物に手を伸ばそうとしました。
「ボールペン…(借りますよ?)」
ぎゃー!
違う、違う違うソレは違ーうっ!
ボールペン、ノンノン。
明日提出する検便容器です。しかも昨日のブツ、採取済み。
慌ててSさんから奪い取リ、ウンコぢゃなくてインクの出てくるボールペンを渡したので「バレずにすんだわぃ」と安心したのですが…。
Sさんがコリコリと記入している用紙の、すぐ真横には…
「正しい大便の取り方」と派手に書かれた緑色のチラシが置いてありました。
3月6日
眼科検診にて。
「ハイ、まずは裸眼で検査しましょう。んぢゃレンズの中を覗いてくださいー。数字がありますよね?」
『…』
「1とゆー数字が見えますよね?」
『…』
「その数字の下にある記号がありますよね? どこが開いてるか教えてください」
『…右下…』
「2番の下は?」
『…んぢゃ左上…?』
「3番の下は?」
『…ええとー、右上?』
「…適当に言ってるでしょ」
『あわわ…』
「記号の開いてる場所、上か下か右か左かの4パターンしかないのっ。右下とか左上とか、ないからっ!」
ひゃー!ナンか逆切れ?
仰せの通り、何も見えてなかったですよ。でも、アナタ、ありますよね!ね!て、めっちゃ断定的に言ってたし。「いいえ」て答える余裕すら与えなかったし。
つか、数字って何。その数字すら妻には何がなにやら…。もわっと見えてたアレが数字?
「はぁ〜(溜息)。それぢゃもう一度最初から。あのね、左上から1,2,3て数字が書かれてあるの。で、その下に記号があるから、その記号の開いてる箇所を上下右左のどれかで答えて! はい、1番の下」
『…見えません…』
「視力は、っと…0・0。んぢゃ、次、眼鏡した状態で測りまーす」
えぇーっ!?
ちょっと待ってー。0・0て。
視力ナシってこと?
こんなのアリ?
その下の桁まで調べてくれよー。
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採血にて。
名前を呼んだ女性(白衣を着たこの20代後半と思われる女性)のところへ行くと、妻の問診表をチラっと見せて「名前の欄、間違ってない〜?」と言った。
物凄いチラ見せ。
確認できんがな。
「んぢゃ、今から採血するねぇー。右腕と左腕、普段はどっちでやってるぅ〜?」
なんなの、この押し付けがましいほどのフレンドリーさ。
つか、タメ口やんけ。
おまい20代。妻、明日で43歳。
もともと、病院なんかでお年寄りに対して幼児語で語りかける看護婦さんを目にすると、「人生の大先輩やゾ!」と怒鳴りたくなる方なので、目の前の女性にも当然不快感を顕にする妻。仏頂面で袖口を捲り上げた左腕を差し出した。
「あ、左腕かぁーウンウン。んぢゃ今から、アルコール消毒するけどぉ、アルコール負けしない人ぉ〜?そっかー、大丈夫ね。じゃ、塗るねー。今回はぁー、4本分、コレとコレと…採血するからぁー。最初、ちょっとチクっとして痛いけど、我慢できるかなぁ」
うぐぐぐぐー。
「あれ? ちょっと気分が悪いのかなぁ。大丈夫?我慢できなくなったら言ってねー」
うぐぐぐぐー。
おまいの喋り方に我慢でけんのぢゃーっ!
--------------------------------------------------------超音波検査にて。
診査着の前をガバーっと開けて横になったら、腹や胸にゼリーがドボドボ。
超音波の出てくるプローベだったかプローブだったかを体に押し付け、ゼリーを伸ばすように動かしていく検査員A子さん。
「はい、息を吸って〜お腹をポーンと膨らませて〜息を止めて〜」
「はい、ゆっくりはいて〜楽にしてくださーい」
「もう一度、息を吸って〜お腹をポーン…」
言われた通り従順に、下っ腹をこれでもかと突き出す妻。
「もう一度いきますよー。はい、息を吸って〜お腹をポーンと膨らませて〜…そこで息を止めて〜…はい、もう一度息を大きく吸って〜」
ちょっと待てーっ。
吸う前に、はかせろーっ!
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胃のバリウム検査にて。
仰々しい装置の前に立たされ、これを飲んでくださいと顆粒状の発泡剤と少量の水を渡されました。
「それを飲んだら、今度はこっち。バリウムです。全部飲み干してくださいね…ええと、ゲップは…」
ゲフーッ!
彼女が最後まで言い終わらないうちに、妻の口から派手なゲップ音発射。
しまった。
気を抜いとりました。
つか、検査の前に肩に筋肉注射(ブスコバンだっけ?)されなかったんだけど、それが原因でゲップが出るんぢゃねーの?と責任転嫁してみましたが…。
白けた顔で「お代わりですね」と発泡剤とバリウムを手渡され、1からやり直しとなりました。
もぅお腹一杯。
仰々しい装置は、妻を乗せたままウィーンと後ろに反り返ります。
平らになった状態で止まると、別室にいる彼女の声がスピーカーから聞こえてきました。
「それでは、体を向こう側に捻ってくださーい」
クィッ。
こうかしら?
「もうちょっとお尻をずらす感じでー」
えへ。
2人を思い出した妻。
よろしくーねっ。
つい、ゆーとぴあの真似しちゃいまして。
「足はまっすぐのままですよー」
指導が入りました。
「右に1回転してください」
「そこで息を止めてください」
「ちょっとだけ体をこちらに向けてー」
「そこで息を止めてー」
ゲップを止めてるのが苦しいんだか、息を止めてるのが苦しいのかわからなくなる妻。
「では右に3回転…」
ええーっ!?
3回て。
ないやろ、それ。
せめて2回までにしときましょうよ。
「はい、息を止めてー」
汗がじんわりと出てきます。
つらい。
息を止めてたら、お尻からゲップが出てきそうになります。
つまりオナラっちゅーやつですね。
でも、体の中をくまなく観察されている身。
ココで屁をこいても、きっと彼女にはバレるんだナ。
我慢あるのみ。
上からも下からも出さぬよう、細心の注意を払わねばなりません。
「じゃ、今度はうつ伏せになってー、そうそう。で、お尻だけを上げてくださーい、突き出すような感じでー。もっともっとー」
うそん。
ありえんやろ、こんな恰好。
もしかして、彼女は妻がオナラを我慢していることまで分かってたのでしょうか。
分かっててさせたポーズなのでしょうか。
だとしたら、出すべきだったんですよね、ココで一気に。
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検査前日は午後9時を過ぎると、飲み食い一切禁止となっておりました。
晩飯食うなら夜9時までに。
そして、食べたのは…。
手作り餃子だったわけで。
大蒜5片も入れたやつ(入れすぎ?)。
56個を昼から午後9時にかけての食いまくり。
そして受けた今回の人間ドック。
各所でイラっとさせられたのは、妻の吐く息の臭さにイラっとしたスタッフの報復だったのでしょうか。
3月28日
陰口叩くのは得意だけど、先頭に立ったり、皆を纏めたりすることが滅法苦手なのであります。
明日から野営に出かけるため、鼻歌交じりで買い物から帰ってきたら、「帰ってくるの、待ってたんだよー」と玄関前で声を掛けられました。
やってきたのはご近所のAさん。
両手になにやらゴッソリと荷物を抱えております。
「コレ、4月から使うやつー」
えっ? あっ! そうだった…。
妻は町内の次期班長なのでした。
さっきまでのルンルン気分から、一気に奈落の底へ。
箱から書類を引っ張り出し、簡単な引継ぎ作業が始まります。
開始3分。
妻、発狂。
「大丈夫だってば。アタシだって1年間それなりに勤めたんだから」
Aさんは、数年前に日本に帰化したモンゴル出身の方。
そうよね。
アナタがやれたんだから…。
「分かんなくなったら、『アタシ、ニホンゴ、ヨクワカラナイー』て言えばいいの」て。
それ、使えない…。
大きな溜息をついて、仕方ない…と立ち上がろうとしたそのとき、Aさんが町内の地図を指差してこう言いました。
「あ、ココのTさんは、名誉会員とかゆーのらしくて、会費は集金しなくていいし回覧板も回さなくていいから。あと、ココのWさんね。集金に行っても、いつも居留守使うから。庭で水撒きしてるときなんかに声掛けても、無視されるよ…あんまりしつこく言うと怒鳴るしね」
ええーっ!?
んぢゃ、どーやって町内会費を集金すりゃええのよーっ!
「頑張って集金してネ! まぁ、班長なんて、1年間でしょ。あっとゆーまだから。それより役員だってば。役員になると、もっといろんな仕事があるし、毎週のように集会所で集まりあるし、2年間やんなきゃいけないんだよ。まぁ、あと20年くらいは回ってこないとは思うけどねー」
マジで長生きしたくないと思いました。
3月31日
町内の班長さんの初仕事。
小雨がパラつく中、40世帯分の市政だより(だとか他2部)を配り歩きます。重い。手が千切れそう。
やっとこれで全部配り終わったぞ〜と思ったのに、袋の中には2セット分の配布物が。
あら?
右手に2セット分の配布物の入ったビニール袋をぶら下げたまま、道路の真ん中で途方に暮れる妻。
『このお宅、配ったっけ?』
数分前の出来事なのに、さっぱり思い出せません。
仕方がないので、門扉のところにある郵便受けの蓋をパカパカやって、中を覗いてみます。
『見えねぇ』
パカパカパカパカ。
『敷地の中に入って、向こう側(住人が郵便物を取り出すほう)をから見なきゃ、わからんのぅ』
パカパカパカパカ。
『どうしようかしら。入っていっちゃおうかしら…』
パカパカパカパカ。
『渡し忘れより、多めにっつー方がまだマシか?』
パカパカパカパカ。
『うーん、やっぱ見えねーっ。つか、市政だよりなんて首長くして待ってるやつなんか、いねーよなぁ』
パカパカパカパカ。
毒つきながら蓋をパカパカしていると、通りすがりのおっさんに「おいっ、コラッ!」と怒鳴られました。
明らかに不審者扱い。
いや、違うんですって。違うんですよ。怪しいものぢゃないんですよ。ええと、アテクシ、4月から担当になりました、町内の班長さんなんですよー。
そう言い訳しようとしてハタと気づきました。
まだ3月ぢゃんかよ。
つか、3月なのに班長の仕事よこすなっつの!