■ 4月の戯言 ■

 

4月12日

昔、妻の上司だったKさんは、機械の音声に対して必ず受け答えをしておりました。

「通帳をおとりください」

「はいはい、分かったよ…」

銀行のキャッシュディスペンサーでも。

「駐車券をおとりください」

「分かってますって。今取りますからー」

駐車場の入り口でも、こんな感じで。

ヘンなのー、と妻が笑うとKさんは決まってこう言うてました。

「トシをとったからですかね。つい返事しちゃうのは。ホラ、お年寄はTVに受け答えしてるでしょ、アナウンサーが『おはようございます』なんていうと『ハイ、おはようさん』なんて。あれと同じだよ」と。

妻はここのところ30Lのザックを背負って買い物に出かけております。

最近ではセルフレジなんてものがあって、コレを利用するとWAONのポイントもニバーイニバーイなんて美味しいこというから、勿論迷わずこちらへと向かっております。

マイバッグ、マイ籠ぢゃなくて、マイザックですけど。

このマイザックがイマイチ筋の通ってないフニャっとしたヤツで、自立心がないためセットするのも一苦労。その中にスキャンした商品を入れていくわけです。缶ビール6本入りのケースを2つ、夫の焼酎1本、醤油や料理酒の瓶…重いものから順番に。

んもぅ、毎回パツンパツン。

こんな重いもの背負って帰ってくるだけで、時折肩口に痣を作ったりしとります。

その旨を夫に話すと「もっと大きな私のザックを利用すればいいのに」と、嬉しいんだかなんだかよくわからんアドバイスをいただいたのですが…。

そんなことはさておき、セルフレジ。

会計を済ませてザックの口を閉じたら、こいつを背負わなきゃいかんのです。

が。

重すぎちゃって片手でヒョイなんて、到底無理。

ザックのショルダーハーネス部分を自分のほうに向けたら、自分は回れ右。按配いい高さになるよう中腰になり、さて背負うぞ…と。

まるで始発電車の中でよく見かけてた行商のおばちゃんの姿、そのもの。

あぁぁ、ちょっとタイム、髪の毛が挟まりそう…上着が引っかかってるー。なんて、モタモタしてたら…。

「商品をおとりください!」

乾いた女性の声が機械からしてくるのです。

わかってるってば…今やってんぢゃん。あぁぁ、んもぅしっくりこないしー。

「商品をおとりください!」

だーかーらー、ちょっと待ってよ。ホラ、上着がまたつっかえた。

「商品をおとりください!」

3度目のアナウンスで、思わず声に出してしまいました。

「うっさい、せかすなっ!」

トシをとったからですかね、つい反応しちゃったのは。

まぁ、TVを見ながらアナウンサーの挨拶に返事しちゃうのは、随分前からだったりするんですけど。

4月22日

PCをいぢっていた夫がポツリ。

「知ってた? √2の出し方って、ちゃーんとあるんだよー」

ルート2…あぁ、あったあったヒトヨヒトヨニヒトミゴロ〜なんてやつだよね。

ヒトナミニオゴレヤー、とかフジサンロクニオームナクーとか覚えさせられたよねー。

そう答えたのはいいけど、平方根の求め方を今更ウダウダ説明されるのも勘弁して欲しいと正直思う妻。

酒飲んでうんこして寝るだけの日常生活には、ちっとも必要ぢゃないのです。

ジャスコでだって使わないし。

テレパシーが通じたのか、呆け顔の妻に夫はそれ以上話しかけることもなく、PC画面を見ながら「ほほぅー」とか「ふーん」とか分かったように頷いておりました。

あ。

ぢゃぁさ、これは何の平方根になるんだっけ?

ほらほら…

ええと…。

ナクヨウグイスー、とかゆーやつ。

「ナクヨウグイス?」

あったぢゃん、そーゆーの。

覚えさせられたもん〜ナクヨウグイス〜。

何の平方根なの?

「なんだろ…随分でっかい数字になる…みたいだケド…」

バカ夫婦の会話でありました。

『泣くよ鶯、平安京』 歴史だっつのっ!

4月26日

先週の水曜日辺りから、伸びをして上を向くと喉元に違和感を感じるようになったのです。

それが日増しに酷くなって、唾を飲み込むとなんだか魚の骨が引っかかったような痛みを伴うようになりまして。触ってみると若干腫れてるような気もするし…。

てことで近くの病院へ行ってきました。

診察室で医者に「どうされました?」と聞かれ、少しは賢いトコロを見せようなんて背伸びしつつ、自分の喉を触りながら「ココ、コノ扁桃腺がですね、どうも腫れてるようなのですよ。風邪をひいちゃったのかもしれませんね」と知的に答える妻。

その言葉に、医者が即答しました。

「あ、ソコ、扁桃腺ぢゃないから…」

んぎゃっ!

んぢゃナニよ、ナンなのー?

腫れている箇所を触りつつ、医者が言いました。

「甲状腺だね」と。

コージョーセン?

ソレって、おマタにある腺のこととちゃいました?

前立腺と甲状腺の違いが分かってない妻。知性とゆーより恥性。「セン」しか合ってねーし。

触診の後、CTを撮り、やはり甲状腺がかなり腫れていると指摘。

専門外なので詳しいことは分からないといいつつも、最悪の場合なんぞをツラツラと述べるわけです。

こええ。

「手の痺れとか出てくるとね…」

うわわわー、そう言われてみたら、なんか指先が痺れてる感じがするっスー!

「足が浮腫んだりすると…」

あわあわー、万年浮腫んでますっ! ホラッ! つか、単に太いだけっすかねコリャ?

「イライラしやすいとか…」

ありますあります! すぐムカつきますっ! 夫に。愚痴ってもいいですか?

「それはまた別の機会に…あとは眼球が出てくるとか…」

えーと、それは今後に期待します! 目、でっかくなりたーい。ほら、アテクシの目なんて、コンニャクにカッターで穴開けたみたいな目ぢゃないですか…。死んだばーちゃんが、おかんに言うたことがあるんですよ。『一重瞼の腫れぼったい目ぢゃ絶対嫁に行けない、可愛そう』て。『二重瞼にする手術を受けさせてやんなさい』て。結局金が惜しくてやってもらえんかったんですけどね…。いや、金が惜しかったのかどうかは聞いてないけど…。

そんなどーでもいい会話がなされた後、撮ったCT画像を渡され、某大学病院で詳しく検査するようにと紹介状をいただきました。

もぅそれだけで気分はドンヨリ。

待合室で1時間以上待たされている間、周りにいる具合の悪そうな人の気をぜーんぶいただいてしまったのか、「あぁ、アテクシはこのまま死ぬのかも…」なんてかなりナーバスになるし。

結局、自宅に戻ってから熱が急激に上がって、金曜〜土曜日と布団から出られない日を送っておったのです。

せっかくいいお天気だったのに。なんてこと…。

てことで、いまいち体調は優れなかったものの、日曜日は無理してデイキャンプへ行ってしまいました。

その行いが悪かったのか、早々とブヨに刺された妻。

またしても右目の瞼を。

眼球が出てくるどころか、瞼ボッコシ腫れまくっとります。んもぅ、あっちもこっちも腫れまくり。

ブヨよ、今度刺すなら乳にしてくれ。

4月28日

大学病院にいってきました。

「すんごい待たされるよー。きっと1日がかりだよー」

そう友人たちに言われていたんですが…いやぁー、いまどきの大学病院てスゲーのね。

支払いなんて受付のおねーちゃん相手ぢゃなくて、機械相手ですよ。なんて味気のないこと。その代わり、至る所にボランティアのおばちゃんらが突っ立ってて、「この用紙のココに記入して〜」とか「この紙持って○階の○○へ」と誘導してくださるので、さほど待たされてる感がないのです。

そんなこんなで、結局お昼前には全てを終えて病院を後にすることができたのですが…。

午前8時半に1階の受付前でウロウロしていた妻に、ボランティアさんが「この病院は初めてですか?」といろいろ聞いてきてくれました。

実は予約なんてしてないけど「午前8時半に予約しましたっ!つか8時半に来いって言われましたっ」と小さな嘘をついて(実際には、午前8時半から11時の間が外来受付なので、その時間内に来てくださいといわれただけ)無事にカルテを作成してもらい「腎・高血圧・内分泌科」へ。

この科の受付で体重、身長、血圧、熱を測って記入してくれと体温計を渡されます。

待合室の隅っこに設置されてる体重計や身長測定器は、かなり不人気らしくだーれもつこーとりません。

「靴を脱いで計ってください」の札がかかった体重計。

靴だけの重さしかさっぴいてくれないんですね。どうせ体重を計るなら、少しでも軽く表示してもらいたーい!だから全裸で計りたーい!ところだものね。うん、分かる気がする。アテクシも待合室の全患者さんに己の体重を大公開なんてしたくないわっ!

てことで、体重も身長もコッソリ適当に記入。

血圧は「血圧計から紙が出てくるので、それを貼り付けて提出してください」と言われたので、言われたとおり紙切れをペタリ。

んで、お熱。

脇の下に挟んだ体温計がピピピーと「測定完了」の合図を送ってきたので、表示された数値を見たらプギャー。

37.8度ですって!

熱があるぢゃないの、妻。

実は昨夜、寝る前に計ったときの体温が38.5度。

寝ている間に寝汗を大量にかきまくって、朝計ったら36.7度と、まぁまぁ平熱に近い体温にまで下がってたのに…。

もぅね、この体温を目にした途端、「あぁ、もぅダメ…」と力が抜けてヨロヨロと長椅子に倒れ込むヘタレっぷりですよ。

30分程待たされて診察室に呼ばれ、N先生による診察が始まりました。

近所の病院から持たされていたCT画像を見た後、妻の喉元を触り、症状を聞いた後出された病名は『亜急性甲状腺炎』とゆーものでございました。

「まぁ、これはウィルス性の病気なんだけどね、ほっぽっといても治る病気ではあるのよ」

なぬ?

「40代から60代の人がかかるね、まぁいわゆるハシカみたいなものっちゅーか…1度かかると、たいていの人はもぅ2度とかかんないから…」

えーっ?てことは、別に病院に来る必要もなかったっちゅーことですか?

「まぁそうなんだけどね、フフフ…でも長い人だと半月以上発熱とか頭痛といったこーゆー悪い症状が続くし、そうなると心配でしょ。原因分からないから。だからこうして診断下す医者が必要とゆーか、ね、ハハハ」

いやでも、センセーッ、手先も痺れるしー、あぁ、ホラ…力が入らない…。

でもってずーっと頭痛が治らないし…これ切実。寝てるときも辛いのよ、痛くて。

ほんでもって、耳鳴りもしだすし。なんちゅーの?耳の中にいつも水が入ってる感じがするっちゅーかね。

身体はダルくて何もする気が起きないし、熱は下がらないし…寝てる間にすんげー寝汗かくのね。シーツとかビッチャリになって気持ち悪いくらいなのね。んもぅ水溜りの中で寝てる感じ。でもね、シーツとかベットパットを洗う気力も体力もないわけ。きちゃないでしょー、でもできないんだもん…。

食欲もないし、ここ数日間で体重落ちたし…いや、体重落ちたのは嬉しいけどさ…何よりお酒が美味しくないし、とゆーか飲みたいっちゅー気にならないのが自分らしくないとゆーかなんとゆーか…。

それまでにこやかに接していたN先生の顔に「おまいみたいな年増女の与太話に付き合ってる暇なんて、ないで!」感が漂い始めました。やばいっ。

「あー、はいはい。そうだねー、頭痛いねー、なるなる。熱もね、出る出る。ま、そーゆー病気だから」

終了〜。

一番疑ってた更年期障害ってのは、否定されました。

「年齢的に考えられないこともないけど」とゆー言葉が付け加えられはしたけど。

そんなわけで、処方された薬は単に喉の痛みを抑える痛み止めケンタン錠(解熱効果あり)と胃薬(グロリアミン)のみ。

たったこれだけの診察で、7,000円近くの医療費を請求されたのが解せませんが…。

ウィルス性の病気だけど、これって他の人に感染する心配はないんですと。

「具合悪くて病院行って来た」と告げたときに、なるべくアテクシから距離をとろうとしたそこの奥様ーっ! だから逃げなくてよろしくてよ。

 

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