■ 6月の戯言 ■

 

6月10日

スゥパで買い物中、妻が立っている棚の向こう側から、女性のキンキン声が聞こえてきました。

「キャラメルはダメだって言ったでしょっ! なんで籠に入れんのっ! んもぅーっ」と。

ははん、子供がおかーさんに分からないようにコッソリとキャラメル入れたのが、さてはバレたな。

子供は半べそかいてんぢゃなかろうか。

でもって、けっこうデカい声で叱り飛ばしてたけど、一体どんな感じのおかーさんなんだろか。

興味を持った妻、ついソコに買いたいものがありますのヲホホってな感じを装って二人を見に場所を移動したのです。

えっ?

いたのは、4,50代の中年女性…とカートを押してる6,70代のおばーちゃんでした。

叱られてたのは、ももも、もしかしておばーちゃんー?

「また入れ歯がどーとかって言い出すんでしょ! 年寄りにはねっ、年寄り用のお菓子ってのがあんのっ!」

中年女性は眉間に皺寄せたまま、おばーさんの腕を引っつかみサッサと歩き始めます。

思わずおばーさんのその後ろをノコノコとついてった妻。

「ホラッ、ココッ! ココから選びなさいってば!」

おばーさんが連れて行かれたのは、落雁やら水羊羹やら饅頭が地味〜に並ぶ、妻が普段目もくれない棚でした。

二人から1メートルと離れず、欲しくもないバームクーヘンが小分けにされた袋を手にして、視線の脇で様子を監視し続ける物好きな妻。

おっとーっ、おばーちゃん、ため息つきながら丸ボーロみたいなやつを手にしたーっ。

「それでいいのねっ!」

中年女性は、おばーさんから菓子袋を毟り取るように奪うと、カートに投げ入れました。

こ、こわーっ。

つか、そーゆーお菓子って、死んだばーちゃんが言うてたよ。

歯糞菓子だって。

てことは入れ歯にもガッツリつくで、歯糞が。

そいえば、死んだうちのばーちゃんが好んで食べてたお菓子。いつもポケットに入れてたお菓子つったら、ボンタンアメか兵六餅だったけどさ…でもってこの2種類のお菓子って、年寄りのおやつの定番って感じだったけどさ…アレもキャラメルっぽいんぢゃなかったっけ? 

うちのばーちゃんは入れ歯ぢゃなかったんだろーか…。

いや、キャラメルなら入れ歯外した状態で舐めてりゃオケーでしょうが…。

なんてこと考えてたら、おばーさんがポツリと呟いた声を耳にしちゃいました。

「アタシの年金なのに…」

ぎゃーっ!

もしかして、この二人は義母と鬼嫁の関係?

義母さんちょっと最近ボケちゃって、とかそゆ関係?

でも嫁が言うほど本当はボケてなくて、実際はけっこう頭しっかりしてて…でもあまり強く出るのも家庭内がギクシャクするし…息子や孫の手前もあるし…一応、家に住まわせてもらってるっつー身だし…なんて下手に出てたら、いつの間にか15日の年金支給日を嫁が舌なめずりして待つようになっちゃって…でもって「おかーさんのご飯は誰が作ってると思ってんのっ?」とか言われて全額嫁の懐に入るようになっちゃって…文句言うとご飯抜きにされちゃったりしてさ…きっと肩身の狭い思いをしてるんだろうな。んでその辛い生活から現実逃避するには、ちょっとだけボケたフリするのが都合がよかったりして…そゆことも計算してのおばーちゃんの行動なわけで…(妄想爆走中)。

嫌なものはイヤッ!

好きなものでも嫁に勧められたらイヤッ!という犬友達のIさんとそのお義母さんの関係もどうかと思うけど…。

周りに人がいようがいまいがお構いなしで、叱り飛ばす煩いこんな嫁との生活。

あぁ、妻には絶対に無理。

肩身の狭い思いをしながら老後生活していくなんてイヤだわぁ〜。

思い切り頭を振って気づきました。

あ。

うち、嫁もらうような息子いねーし。

6月15日

我が家の近所にプチドッグラン付きのドッグカヘとゆーか、ショップができました。

犬嫌いな犬と、ランに行っても走らない犬を飼っている我が家には、縁遠いお店なんですけどね。

散歩友達のIさんが、思ったことを何でもズバズバ口に出して言っちゃうお友達のKさんと2人で、つい最近冷やかしにそのお店にいったそーなんですよ。

店に入るなりピタリと客にくっつき、いきなり話しかけてきた店員さん。

「あ、うちのトリマーはですね、全国○位の腕を持っててですねー」

話す内容といったら、聞きたくもない店自慢。

するとKさん。

「ふーん、1位ぢゃないんだー。たいしたこと、なくね?」

ぶはっ。

でも店員さんは怯みません。

「この仔は看板犬で、毎週トリミングしてるから慣れちゃってるんですよねー。何をされても、ほら、大人しいでしょ〜」

「アタシはさー、声かけたり頭撫でたりしてあげると、喜んではしゃぐ犬のほうが好きだねー」

Kさんのその言葉に、店員さんはちょっとイヤそーな表情を浮かべたらしーですが、Kさんは畳み掛けます。

「何やっても無反応に座ってるだけの犬なんて…ぜんぜん可愛くないしっ」

これ以上いたら、なんだか喧嘩売ってる感じで(既に売っとるがな)ヤバいことになるとKさんの腕を引っ張って店を出ようとしたIさん。

店の扉を開け、外に出て…扉が閉まる間中、Kさんはかなり大きな声で喋り続けてたらしーです。

「ランの利用で金取るんでしょ。ランつっても、ここいらの戸建ての家の庭くらいの広さぢゃん。どこ走れっつのー?庭木だってないし、日陰なくてあちーよね…。ま、長くは持たないんぢゃないのー、ココ」

ドヒャー。

妻ぢゃありませんよ、妻ぢゃありませんからね、言うたのは。

ええ、同じコト、アテクシも思いましたけど。

6月23日

トシのせいなのか、ここのところサラのお漏らしに悩まされる日々でございます。

散歩で搾り出したくせに、自宅に帰ってきて玄関前のデッキに繋ぐとタラリンチョ。

外で漏らすのは、まぁええんですが…。

家の中でも、このお漏らしはあるわけで。

気持ちよさそうに寝ていて…

目を覚まして体を動かした瞬間、どうも漏れてしまうよーなのです。

無意識ですからね。

しゃーない。

サラ自身も絨毯にできたそのシミを見て、ナンダコリャー!とゆー表情を最初は見せておりました。

が、最近は己が作ったしっこジミだとゆーことを理解したようで、

「間違いない、しっこや。アチシのしっこの臭いや」

クンクンと臭いを嗅いで確かめた後、ヤバい!といった面持ちに。

トシなのよ。

緩んできたのよ。

それが自然の摂理とゆーもの。

人間もトシとるとそうなのよ。

特に女性に多いっつーしね。

チミも無意識にやっちゃったんだもんね。

しゃーないのよ。

しゃーないとは分かっているのですが…。

彼女が「ヤバい!」と困り顔になるのには理由があるのです。

そう。

しゃーないとは分かっていつつも、つい…

しっこジミ掃除の際に、舌打ちをしてしまう妻。

しゃーないとは分かっていつつも、つい…

「ったくもー」と口に出してしまう妻。

きっと「アタイに怒ってるのよね。しっこ漏らしたから怒ってるのよね」と彼女は理解しとんのでしょう。

そして最近…。

妻よりも先に己のしっこジミを発見した彼女は、こんなことするよーになりました。

鼻先で必死に座布団を動かして、しっこジミの上へ座布団を移動させるとゆー証拠隠滅作戦。

家の中の埃は見えないフリ…とか。

突然の来客に、ぶっちらかったテーブルの上のものは纏めてクローゼットにドーン…とか。

壁についたままの赤ワインのシミは、もたれかかってあら消えたー…とか。

特技、臭いものに蓋。

こんなところまで妻の真似せんでも…。

 

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