2. 売春宿の広告
エフェソは、西部アナトリアの最も繁栄した商業の中心としまして発展しつづけ 、一時は人口が二十万にもなったことがあります。パウロが滞
在したころは、そのダイアナの 街は、完全に再建されておりました。そこで発見されました売春宿や、男性のシンボルの神さ まであるベスによ
りまして、いかにも性的なことにうつつを抜かしていたような印象を与えら れるのですが、現在そこを訪ねる人たちの観光の名物から抱きます
エフェソに対しますイメージ は、必ずしも正しくはありません。
どんなに昔でありましても、性がビジネスになるということはありました。大 理石通りの西側の側道にある落書きがそのことを示しています。
それが売春宿の広告であると 言われています。 写真1 がそれです。そこで、その写真を見ながら、そこに描かれててることについて 取り上げ
てみましょう。そこには、王冠をつけた女性の像、十字、碑文,足、ハート、あるいは女性の性器などです。
まず女性の像ですが、これは近くの売春宿で働いていました娼婦をあらわすと 言われています。けれども、古代世界におきまして娼婦を描き
ましたものは多いのですが、こ のように王冠をかぶっている娼婦は少ないのです。ですから、それは娼婦ではなくて、キュベ レかティケの女神
を荒っぽく描いたものかも知れないのです。王冠の上の十字架は、初代キリスト教会の時代に描かれたものとも考えられます。その像の左上
に、いくつかのぼんやりと見 えます十字が描かれています。碑文のうちの何文字かは判読できますが、その絵画の日付を推 定しましたり、そ
の目的を推測したりするのには不十分です。足は、普通は売春宿の方角をさ していると言われています。古代世界の娼婦は、つま先の出て
います靴を履きまして、「わた しについていらっしゃい」という言葉を書きまして、広告されていたことが知られています。 けれども、その絵を細
かく検討いたしますと、その足は女性の足というよりは、男性の足のよ うに見えるのです。ローマ時代の二つの足の痕跡が、アテネにある神
殿で発見されました。こ れらの足は絵画ではありませんし、何の目的で書かれたのかということも分かりません。それ らは奉納物の一部であ
るとも考えられるのです。ですから、エフェソの絵画も、同じ目的のため に描かれたのかも知れないのです。
三角形のハート、あるいは性器は、いろいろな風に解釈されていますが、売春 宿との結びつきは、一番根拠が薄弱なように思われるので
す。まずそれが古代の絵画であると する理由は、少しも存在しません。たとえそうであったとしても、古代ローマの世界にあって 、ハートが愛
情、あるいは性のシンボルであるという証明はありません。古代人により、男性 の陰茎はよく描かれましたが、女性の性器はあまり描かれて
いません。たとえ描かれたとしま しても、通常、貝か葉で覆われていました。したがって、普通になされている解釈は成り立たないように思うの
です。さらにその三角形は、他の絵画よりも新しいものでありまして、この 絵画が売春宿の広告であるという普通になされている解釈を助長す
るために、後から付け足されたとも想像されるのです。
つぎに、その売春宿がありました。これは、皇帝トラヤヌスの時代に造られたものとされています。したがいまして、使徒パウロの時代には、
ありませんでした。これは、公衆便所、スコラスティカ浴場と一緒に、複合の施設として、利用されたものでしょう。写真2がそれです。
もう一つの、エフェソスの名物に、写真3のような男性の性器を誇張した像があります。これは、クレテス通りの井戸から発見されたものです
が、博物館に展示されています。こんなことから、エフェソは、性的に紊乱していたとする悪いイメージができたものでしょう。