W ローマに向けて
1. シチリアへ
シチリアは、イタリア半島の南端とアフリカ大陸との間に横たわる地中海で最 も大きな島です。一九世紀半ばに、イタリアの一部となりまし
た。わたしたちは、マフィアの 島位にしか考えていませんが、風光明媚でありまして、たとえば、レモンは一年に四回もとれます果物に恵まれ
ました島です。
さて、難破が十一月中頃か、終わりに起こったと仮定しますと、マルタからの 出港は、つぎの年の五七年二月か、三月であったのでしょう。
難破で懲りましたユリウスは 、あえて危険な航海をしたとは思われません。そこで、出帆は三月十一日のことと思われます 。彼らは幸いなこ
とに、イタリア向けの別の船を見つけることができました。それはマルタで 冬を過ごしていました穀物船であったのでしょう。その船は、ツイン・
ブラザーズ、いいかえ ますとディオスクロイと言われました。キャスターとポラックスのことです。ゼウスの神は白鳥になり、レダと交わります。
写真1、2は、それを描いたものです。その同じ夜、ティンダレウスもレタ゛と寝床を共にするのです。レダは卵を産み、それを孵化させます。そこ
から四人の子供が生まれます。その中の二人が、キャスターとポラックスです。またトロイア戦争の原因になりましたヘレンもその一人でした。
写真3は、キャスターとポラックスです。キャスターとポラックスは、大変仲良しの兄弟でありました。どんなことでも、二人で相談してやりまし
た。ポセイドンは、彼らに難破した船に乗っている人を助けるという力をあたえたのです。その紋章は、上に星のつ きました縁のない高い帽子
であり、船乗りを守護するものとして、その紋章がその名前のつい ている船首に、刻みこまれるか、絵が書かれるかされたのです。写真1、2
は、ゼウスとレダです。写真3は、キャスターとポラックです。
マルタから、シチリアのシラクサまでの距離は、約百三十キロです。一日の航 海で到着しました。逆風のために、ツイン・ブラザーズ号は、
シラクサに三日間停泊しました 。そこで、囚人たちのなかには、カターニヤの硫黄の鉱山で働かせるために、ローマの官憲に 手渡されるもの
もあったも知れません。 旅行にはハプニングはつきものです。わたしたちは、マルタをシラクサに出港 する船に一時間遅れましたために、シラ
クサに寄ることができなくなりまして、カターニヤ向 けの船から遠くから見ることに留まりました。 写真4、5、6は、カターニヤに向けて出帆しま
したヴァレッタの港です。ヴァレッタよ、さようなら。