私が撮影した山の風景を展示しています。
第12回 2003年1月15日
今回は「丸山荘の窓」です
今年の歩き初(ぞ)めも「笹ケ峰」でした。
正月寒波の押し寄せる中、一泊二日で笹ケ峰を目指した私達は、
ほぼ予定の時刻に8合目に立つ丸山荘に辿り着きました。
軒先のつららも屋根の雪も、昨年同様の銀世界がそこにはありました。
丸山荘では、管理人の片山さんと気さくな神野さんが、
冷え切った身体の私達を温かく迎えてくれました。
火鉢や薪ストーブや朝までポカポカの豆炭はもちろんのこと、
なんと嬉しいことに今年は山小屋のお風呂がリニューアルしていました。
老朽化した五右衛門風呂のかわりに、
真新しい浴槽が丸山荘にお目見えしていたのです。
それは、神野さん曰く「丸山荘のビッグニュース」でした。
ところで、夕食を待つ間に部屋の窓から外を見ると、
暮れかけた丸山荘の庭には、絶え間なく雪が降り注いでいました。
このぶんだと明日は吹雪きそうだな、と、
上着を羽織り両手に白い息を吐きかけたのでした。
案の定、翌朝、目覚めると外は氷点下11度の吹雪でした。
2重ガラスなのに部屋の窓は一面に白く氷結していて、
わずかな隙間からそっと外を覗くと、
昨日私達が残してあった足跡も白く深く覆い尽くされていました。
昨年は御来光を楽しみに早立ちした私達も、
今日は山頂をあきらめることにしました。
街で目覚めれば何かと煩わしさに束縛されがちですが、
山小屋で早立ちを断念すれば楽しみは朝食と二度寝です。
朝食までの間、もう一度豆炭を抱いてまどろむことにしました。
さて、再び目覚めて遅い朝食を終えると山小屋の外に出てみました。
そこには横殴りの雪以外に動くものはなくて、
昨夜眺めた2階の窓を見上げると、
軒先のつららも寒そうに吹雪に耐えていました。
頭上を渡る風の音に笹ケ峰の頂を見上げてみても、
もちろん一度も稜線が見えることはありませんでした。
ここで引き返すのはちょっと悔しい気もしないではないのですが、
でも、晴れた日ばかりが素晴らしいとも限らないものです。
だから、軽くなった食料の代わりにかけがえのない想い出をザックに詰め込んで、
無邪気に雪と戯れながら下山を始めたのです。
次に訪れた時、あの窓から今度は何が見えるのだろう?と、
もう一度丸山荘を振り返ると、
そこにはそっと私達を見送る小屋の主の姿がいつまでも見えていました。
<データ> |