巨大な崩壊地を過ぎると稜線の道はいったん急下降する。
この下りは、高度差は少ないものの見下ろすような急下降で、しかも伐採された樹木の株が足元をすくうように散在しており慎重に重心移動しながら下って行く。
県境の稜線を行く。大ザレ場から急下降すると再び登り坂になる。
下りきると今度は急登が待っている。
伐採された木々が歩行の妨げになり思うように前に進めない箇所もあるが、辛抱強く坂を制覇して行く。
やがてヤセ尾根から更に急な坂となり、木の根をたぐり寄せ、倒木を乗り越え、スズタケをくぐり、最後の悪戦苦闘が続く。
全員に疲労の色は濃いが、山頂を目差すただその思いだけが私たちの歩を進めている。
山頂が近くなるにつれスズタケも深くなる。
2度目の崩壊地から稜線を辿ること約30分、ようやく山頂の東端に出て稜線の道は少しなだらかになる。標高は約1380m。ここからは方向を西に転じていよいよ目の前に迫った山頂へと向かう。
ところで、私たちの延々の稜線伝いをあざ笑うかのように天候はやや下り坂となり、薄暗い空からは今にも水滴が落下しそうになる。大崩れはないだろうと確信しながらも、そんな気持ちとは裏腹にやや急ぎ足で最後のササを漕いでゆくと、2度目の崩壊地から40分あまり、突然山頂に飛び出す。
赤城尾山山頂は、スズタケに囲まれ四畳半ほどの隙間に三角点の標石と数本の山名板が立っている。
事前に得ていた想像以上に狭く、展望も皆無な山頂に落胆はするが、仲間を見渡せば「まぁ、こんなもんでしょう」と眼は笑っている。
狭い山頂で記念撮影。周囲はスズタケに覆われ展望は皆無。
ともかく、狭い山頂だが私たち4人が少し遅い昼食をとる程度には開けている。荷を下ろし思い思いの昼食をとることにする。
今日の食事に「素晴らしい景色」という副食は無いが疲れた身体には少々粗末な食事でも充分すぎるほどではある。
とはいえ、山の素晴らしさに山頂の展望の良し悪しが大きな要素であることは否めない。
食事を終える頃、辛抱できなくなった空が雨粒を落としはじめた。
そそくさと荷物をまとめ、無言のまま4人は雨具をまとって下山を開始する。
そんな雨も第2の崩壊地に降り立つ頃にはすっかり止んで、また元の青空が戻ってきた。
*全行程の私たちの所要時間(コースタイム)は以下の通り。
【往路】
登山口<27分>県境の稜線<15分>最低コル<25分>駒背山との分岐<12分>1番目の崩壊地<15分>1283mのピーク<18分>2番目の崩壊地<42分>赤城尾山山頂
【復路】
赤城尾山山頂<30分>2番目の崩壊地<35分>1番目の崩壊地<28分>最低コル<34分>登山口
備考
登山道に水場はありません。
携帯電話は使用不能でした。
この山の山名「赤城尾山」の読み方については、コンサイス日本山名辞典や日本山名総覧などでは「あかぎおやま」を使用していますが、ここでは、1/25000地形図や三角点の字名の読みを鑑み、「あかぎゅうやま」とさせていただきました。
赤城尾山は北の行者山から縦走することも可能ですが、その場合は登山口から行者山を経由し赤城尾山まで4時間は必要でしょう。
なお、行者山への登山ルートは2つありますが、詳しくは行者山の項をご覧ください。