辿り着いた岩場の上に立つと、苦労したヤブコギを忘れさせてくれる展望が目に飛び込んできた。


岩場に立ち展望を楽しむ。左奥は越して来た1135mのピーク。なお、この岩場は縦走路にそそり立っており、越して進むことは困難で、写真向かって右側をまくことになる。

岩場からは、北に杖立山が望め、来た道を振り返ると道中の苦労が報われる思いがする。そして、これから向かう先には広い尾根に手つかずの自然が残されている。ザックを降ろし休憩をとることにした。
ふと見ると岩場の目の前に沢山のイガをつけた山栗の木を見つけた。見渡すとすぐ近くにも同様に良く実をつけた栗の木がある。間もなくイガが笑って落とした実は、この辺りの生き物たちの胃袋を豊かにしてくれることだろう。
ところで、生き物といえば岩場の上に大きなヘビの抜け殻を見つけた。山を歩いていると突拍子もなく大きなヘビに出会うが、それも自然が豊かな証拠なのだろう。


岩場からの展望。遠くに杖立山が望める(中央最奥)。手前で茶色い木は山栗。

しばらくの休憩で元気を取り戻し再びザックを背負った。
岩場は手前に引き返し、南側をまいて行くが、身の丈の倍以上あるスズタケがまたもや私たちを待ちかまえていた。惰性に任せて進むうちにササはやや低くなりちょっとしたピークに出る。ここからは一旦下りになる。南斜面は植林だが北斜面には雑木林が広がる。ここでもササの林床を嫌い植林の中を行く。
尾根を登り返しやがてなだらかな林の中で山と野原の会が立木にさげた「引き割り大岩(標高約990m)」の看板を見つける。ここまで先の岩場から1時間あまり。
矢印通り北に30歩も行くと大岩に出る。名前の通り岩には巨大な亀裂があり、岩の突端にはこの亀裂をまたいで渡る。注意して裂け目を飛び越え大岩の上に出ると見下ろす麓の集落や、眼下に広がる広葉樹林、遠くに望む杖立山や、高ノ森、そして辿ってきた縦走路の奥にわずかに望む茂ノ森などが息をのむほどに美しい。
山肌にぽっかりと棚田をかかえる芦谷の集落は郷愁を誘われる。


引き割り大岩から身を乗り出して芦谷の集落を俯瞰する。

引き割り大岩は、その西側にも巨大な岩が山肌からせり出して独特な雰囲気がある。
身を乗り出して大岩の真下を眺めると広大な樹林が素晴らしい。紅葉の時期はきっと言葉を失うことだろう。


引き割り大岩の亀裂。ひとまたぎするほどの亀裂は底が見えないほどに深い。渡るなら、くれぐれも注意してください。