大小権現山 2002年5月3日
5月だというのにすっきりした五月晴れが一日と無い、気象台によれば遅い菜種梅雨ということだが、休日だけのハイカーにとって毎週末ごとの雨模様にはまったくもってうんざりさせられる。
だからといって晴れ間を待っていたら身体が鈍ってしまう。山に魅せられるとしばらく歩かないでいることが苦痛にさえなる。
今回行こうとする山はもともと山頂からの展望が望めない山なのだからそれはそれで良しとしよう、それが山に魅せられた愚かな私の結論だった。
そんな誘いだからあっさり断られるかと思えば、「雨もまた良し」「山頂の神社を見てみたい」「買ったばかりのレインウェアを着てみたい」と、結局私のおんぼろ軽四自動車は定員一杯になった。
4人を乗せた愛車は少々くたびれてきたが文句を言わないで走ってくれる。更に、新しく開通した須崎バイパスは高知県西部への移動を非常にスムーズにさせてくれた。おかげで、ゴールデンウィークだというのに雨の中たいした渋滞もなく窪川の町に入ることができた。
国道56号線でJR影野駅前を通過して間もなく松葉川への看板に従い右折して県道323号線に乗り入れ、しばらくして出会う奥呉地川に沿って町道を奥呉地(おくくれち)に向かい北上する。
町道の左手には国の天然記念物「ヒロハチシャノキ(備考を参照)」が有り、ここから北にはこれから向かう大小権現山の頂が見えている。
町道を奥に向かうと左手に「奥呉地集会所」が有り、やがてまとまった民家を過ぎると右手に広がる水田の中に河内神社の鳥居や狛犬が見えてきて、間もなく橋の手前の左側にある民家のそばに車を止める。
大小権現山へはこの民家の横から小さな谷沿いに歩き始める。
登山口には道標として丸い川石が置かれ、その石には「←大小権現山登山口」と記されている。
大小権現山登山口。画面左手に民家があり、右手に橋がある。写真右下に見える石に「大小権現山登山口」と書かれている。
雨は一向に止みそうもない。合羽を着込んでザックカバーを取り付け、身支度を整えて歩き出す。
小さな谷を右手に見ながら西方向へと道なりに進む。対岸には一軒の民家が雨に煙っている。
歩き始めてすぐに道は谷から少し遠ざかり、足元には今が見頃のユキモチソウが咲いて、傍には沢ガニが戯れている。
道は間もなく右に曲がると、すぐに左手に分岐が現れる。
分岐には「権現山登山口」と書かれた木の道標が立っているが、夏草の繁茂する頃にはうっかり見過ごしてしまうかもしれない。
分岐から左手の植林に向かう。
分岐からはヒノキの植林の急坂をジグザグに登る。
ヒノキ植林の林床ではシダの新葉がまるで飛行戦隊のようにきれいな隊列を組んで並んでいるように見える。
悪天でますます薄暗い中、足元に真っ白で小さな植物を見つける。
それはギンリョウソウだが、こんなに薄暗くガスの漂う日にはユウレイタケの別名の方がよく似合っている。
尾根に出て、植林の縁を登って行く。
登山口から15分ほどでようやく尾根に出てひと息つく。
ここからは一旦下って、すぐにまた長い登り坂が始まる。
植林の縁を登って行くと、左手は伐採跡で正面には帰途に辿る予定の尾根筋が見えている。
その尾根を麓に向けて後方へと見下ろせば仁井田に向けての低いやまなみが見えてくるが、海から吹き込んでくる濃いガスに繰り返し包まれてすっきりした展望は得られなかった。
ちなみに、この伐採跡には苗木が植えられていたので、この登山道からの展望もあと数年の間かもしれない。
登山道から帰途に辿る尾根を見る。後方のやまなみはガスに包まれている
尾根にとりついてから約10分後、左手の伐採跡に一本だけ残されたシイの木が見えてくる。
晴れた日なら陽光を受けて葉っぱが光りいきいきとしているだろうシイの木も、今日は雨と濃いガスでいささか寂しげに見える。
辺りには麓からのガスが立ちこめて、ついに向かいの尾根筋も見えなくなってしまった。
登山道に一本のシイの木。植林の縁を登って行く。