四国沖にある台風のせいだろうか?北よりの風が強く、体感温度はぐんぐん下がってゆく。しばらく山頂で素晴らしい眺望に酔った後は、昼食を摂るために移動することにした。

さて、山頂を後にして、下山は2番目の木の鳥居まで、約10分ほどを一気に下る。
鳥居からは「帰りのコース」の指標に従い、アセビの広い道をなだらかに下る。

すぐにかつての土俵場だった広場に下り立つ。
広いカヤ原の中央には土俵の名残があるが、タケニグサがいくつも生え、辺りはイノシシの出現で荒れている。
賑やかだった奉納相撲はもう30年も前に途絶えたらしい。
なお、ここからもと来た登山道へは相撲場の片隅から道が通じているので、時間の無い方は往路を下れば若干の短縮になるだろう。


古き良き時代に奉納相撲の行われた広い敷地も、今はカヤ原。かつての土俵の上に立ってみる。

旧相撲場からは尾根を登り、登り切ると、右手にマツやアセビ、左手にヒノキを眺めながら緩やかに下ってゆく。
下山を開始して20分ほどで尾根にある「五在所眺望所」に着く。標高約890m。
ここからは山頂を間近に仰ぐことが出来る(トップページの山頂の画像はここで撮影)。

ここで景色を楽しみながら昼食をとることにした。
コンビニのおむすびだが、こういう所で食べればそれなりに美味しい。
ところで、この日は「水で出来るアイスコーヒー」なるものを持参していた。杉村さんがコンビニで買ってくれたカップコーヒーである。カップにドリップをセットして、水でたてるのだが、これが想像以上に美味しい。1カップ140円は少々高価だが、山の上ではちょっとおしゃれな気分に浸れる。ちなみにこの商品はUCCより発売されている。

さて、食後再び下山を開始。
山頂から南に派生した尾根を下ると、眺望所から約7分で南南西に越知町が、南に伊野町などの展望が開ける。


十田峠に向かう尾根からの眺望。

更に10分で、標高約790mにある「十田峠」に着く。
ここ、十田峠(とおだとうげ)は、少し前までは頻繁に吾北村と行き来のあった場所であり、土地の人いわく「夜這い道」。かつて両地区の若者達は提灯の明かりを頼りに繁くこの峠を越えたことだろう。なお、夜這いの風習はどこにでも有ったようだが、私の年代ではそんな経験もない。しかし、結婚しない出来ない世代の増える現在では考えられないほど、のどかで古き良き時代だったのでしょう、、、


十田峠に立つ。広い峠を横切れば谷ノ内の集落まで下りられる。下山はここを右手にと下る。

さて、十田峠からは、更に尾根を行くと谷ノ内の集落に下りることも出来る。
この日、峠の南西にあるピークまでは散策がてらその道を辿ったが、それほど荒れても居なかった。

ところで、十田峠からは15分ほど下るとようやく谷の音が聞こえてきて、右手に小さな流れと出会う。すぐに、耕作放棄されて間もない広い水田跡が左手に見えてくる。道の脇にはウバユリの花が咲いている。


つづらに下山する。終始登山道はよく整備され、朝露や雑草の心配もない。

十田峠から25分ほど下って来ると、大きな岩の陰に水場がある。
ここで顔を洗えば心地よい。コースを逆に辿るときは貴重な水場ともなる。

水場からは谷に架かる橋などを経て、今は住む人もないだろう広い民家(しかし、畑は時々手入れに訪れているようだ)の上を通り、駐車した2番目の左カーブにある2軒の民家の間に出てくる。水場から約10分あまり、山頂からだと休憩なしで約65分の帰路であった。


車道終点から十田峠を望む。右側の最低鞍部が十田峠。

下りてきた民家の納屋にはカジ(コウゾ)を蒸す釜が今でも残っているので、聞けば、今でも毎年カジを蒸しているとのこと。私の住む大豊町でも昭和40年代前半頃までは、よく見られた風景が、今では立川地区などにわずかに残っているだけなのに、ここでは今なお守られていることに尊敬をおぼえた。


備考

往路に水場はありません。登り坂が続くので飲み水は充分に持参してください。
五在所神社の大祭は旧暦の9月1日で、年1回のみ行われています。
ここにも平家伝説が幾つか残っているようで、また、土佐藩城主山内家の札も数代あると聞きます。
十田峠からの下山道の途中には桑藪神社(八面神社)があります。

山頂に立つ山名板のうち、越知町が建てたものに「SONIA」の文字がありますが、これは、S(佐川町)O(越知町)N(仁淀村)I(池川町)A(吾川村)の、広域行政の頭文字です。

余談ですが、この日は帰途に伊野町の「仏ケ峠(ほとけがとうげ<ほとがとう>)」にも出向きました。
山頂まで車で行ける所なので私の登山対象からは外れていましたが、様々な名所や旧跡があります。そこ成山の集落が見える峠では、「土佐七色紙」の伝説に触れる事が出来ます。ちょっと奥まったところにある「村次の悲恋」をまつる神社では、高知県には比較的珍しく生殖器信仰の神社があります。ただ、残念なのは近年に形作られたようで歴史の浅いことです。

なお、五在所山については、"あ〜ぴょんさん"の「あ〜ぴょんのHP」でも紹介されています。
そこには案内図もありますので登られる方は参考にされてください(TNX"あ〜ぴょん"さん)。