奥物部連峰展望所からの北東方面の眺望はこの山の大きな魅力の一つであり、剣山国定公園をかたちづくる奥物部の山々が見るものにさわやかな感動を与えてくれる。
展望所には「御在所山より土阿連山を望む」と題する親切な「山名板」が設置されていて、実際の山並みを追いながらその山名を確認することができる。(一部、神賀山と高板山の位置関係がおかしいがそれは愛嬌でしょう)
手前の小ピ−クが神賀山、その向こうに高板山、遙か後方は天狗塚、西熊山、三嶺などのやまなみ。右手に見える集落は物部村神池。
北東に向い、左から右へと山並みを眺めてゆくと、天狗塚あたりから三嶺を経て、白髪山から剣山界隈、そして石立山へと美しい連山がそこにある。特に、ここからの白髪山は秀麗でよく目立つ。すべてに飽きることのない眺めは時刻(とき)を忘れてしまう。
しばらくして麓に目をやると、急峻な山肌にへばりつくようにいくつかの集落があり、傍目に思うほど楽ではないだろう営みが見てとれる。
かつて、敗走をかさねてこの地に辿り着いた平家の人々は、越えてきた土阿県境の険しい山々を振り返りどんな思いを抱いたであろう。きらびやかだった京(みやこ)の生活を忘却してしまうことは出来なかったのだろうか。しかし、剣を鍬(クワ)に変え、荒々しい山肌を切り開き独自の文化をはぐくんできたことは、この大地で生き抜こうという強い決意の表れではなかったかと思う。そんな思いが、こうして見下ろす麓の集落に今なお息づいているからこそ、厳しい山の生活を支えているようにさえ、私には思えるのでした。
北を望むと、大ボシ山や中都山などが見渡せる。
さて、贅沢な眺めを欲しいままに、少し早い昼食を済ませてから、帰途につく。
下山は、尻見坂の展望所まで20分、山桜の大木が立つ広場までは更に15分。
1番目の水場までは山頂から約50分、更に10分で上の登山口まで降り立ち、下の登山口までは山頂から都合1時間10分ほどで帰り着くことが出来た。
備考
上の登山口の近くには、二位尼が着物を干したといわれる「お岩さま」があり、岩の上にたつと悪寒がするといわれる。
木馬茶屋の少し下手に、「五在所山韮生山祇神社遙拝所」という碑があり、小道を分け入ると右手には「公家神社」が、奥には「山追神社」がある。
登山口から谷間林道をさらに奥に行くと、紅葉で有名な「大荒の滝もみじ峡」がある。あたりは生活環境保全林として森林浴ロードや山野草ロードなどが整備されており、立派なトイレなどの設備も整っている。
メインである「大荒の滝」までは、第2駐車場に駐車し、「大荒の滝もみじ峡」としるされた石碑から、徒歩約350mである。滝に向かって右手には展望所があり、滝から離れているにもかかわらず飛沫が流れてくるのには、滝の壮大さを感じる。
紅葉の季節はもちろん、夏の下山後には是非ともお勧めの「天然のクーラー」である。
最後に、この山の記録を記すにあたり、大荒の滝世話人会の発足当時のメンバーで、地元大屋敷出身の小松福治さんに、大変お世話になりました。この場をお借りして、心からお礼を申し上げます。
土佐の名水「大荒の滝」。落差は20mあまり。ここには2体の竜(大蛇)の伝説があり、滝の左手の山肌は竜のウロコ、正面の大岩は竜が滝壺に飛び込んだ時に飛び出したものといわれる。