東光森  2000年7月20日

ひとりきりの山行きなら、なおさら静かな山に出かけたい。そう思って、東光森山を目指した。
かねてから、高知県土佐郡大川村にある大座礼山(おおざれやま)に登るたび、東に対峙するこの山の頂はとても魅力的に映っていたこともひとつの要因ではある。

東光森山への登山口は、大座礼山の登山口と目と鼻の先である(詳しくは大座礼山のページを参照)。
大川村からだと、県道高知伊予三島線で、大座礼山登山口を過ぎて大田尾越の峠に出ると、登山口は右側(東側)に見つかる。登山口のたもとには乗用車1台分のスペースがある。


登山口には木の標がある。左の県道の向こうには赤石山系が連なる。

先ほど横目で通り過ぎてきた大座礼山登山口では、車が県道に溢れるほどの賑わいで、20名ほどの団体も身支度を整えていたが、それに比べるとこの日の東光森山登山口は何とも静かで、一人の登山者もいない。
私一人の貸し切りという贅沢な思いに浸りながら、いつものザックを背負い歩き始める。
登山口からいきなりきつい登り坂が始まる。まだ序の口なので焦らないで、とは思うのだが、一人だとついつい自分のペースでぐいぐい一気に登りきってしまう。
県境尾根に出るとブナやモミ、ヒメシャラなどの樹木が登山道を取り囲む。

尾根を行くと、いくつものプラスチック製の山界標柱(県境標識)と出会う。
歩き始めて間もなくの標柱には61番の表記がある。
この標柱は登山道にいくつも点在し、山頂直下では147番まで数えることになる。
身体に充分酸素が行き渡らない無酸素状態のままでいきなり飛ばしたせいか、10分足らずで早くも最初の小休止をとる。かたわらに立つマツの巨木を見上げながら額の汗を拭う。


県境尾根の登山道は終始樹木に覆われ、厳しい夏の陽射しをしのいでくれる。

蝉の鳴き声を聞きながら、67番の標柱を過ぎると、自然のままのヒノキの雰囲気が良い。

登山口から15分あまり、70番の標柱でようやく尾根の水平道に出る。
標高は約1250m。ここで後方を振り返ると大座礼山南面のなだらかな尾根が美しく、大座礼山登山口がずいぶん下に見えて、短時間の割に標高を稼いできたことがわかる。


右上が大座礼山、左下に白く見える県道のカーブが大座礼山登山口。

展望を楽しみながら2度目の小休止を終えると、ヤセ尾根の岩場を左右にまきながら進んで行く。樹木がなければ非常な高度感のある尾根なので慎重に歩を進めてゆく。
まもなくシャクナゲの豊富な尾根筋に出て、74番の標柱からはやや下り、正面に見える小さなピークへと向かう。
登山道からは、ついに目指す山頂が視野に入り始め、意気揚々とした気分にさせてくれる。



登山道の正面に目指す山頂が見えてきた。右手前はこれから向かう小ピーク。

81番の標柱から、山頂手前の小ピークを目指して、緩やかに登り返すと、登山口から約25分で山界石標に出会う、標高約1270m。ここからは南東の景色が良いので、足を止めて展望を楽しみ、息を整える。

簡単な小休止の後、再び歩を進めるとミツバツツジやアケボノツツジなどが両脇にあり、アセビも目立つ尾根を下って行くことになる。この辺りは、浮き石もあるので歩行は慎重になる。

登山口から約40分で尾根の最低鞍部を過ぎ、110番の標柱からはいよいよ本格的な登りがはじまる。しかし、身体はすっかり山慣れしてきたので序盤は苦にならない。
とはいえ、約5分で小ピークを越えて上を見上げると、険しい山頂が迫っている光景には、自然とこの山のクライマックスである急登に、身の引き締まる思いがする。


登山道から頂を見上げる。ここから最後の急登が始まる。