ツガ、ヒノキ、ビャクシンなどの大木の中を登山道はぐんぐんと下降してゆく。
明るい原生林を縫う登山道。
標高1050m付近で目指す別府の駐車場が真下に見えてきた。いっそ、ひとっ飛びすると着きそうな高度感がある。
岩場を急降下し、ひたすら降りてゆくと右手に沢の音が聞こえてくる。見下ろすと細い流れがある。この谷は竜頭谷と呼ばれ、別府からの登山では貴重な水場となっているが、天候により水量は激しく変動するらしく、涸れ沢になることもあるらしい。したがってガイドブックによればこの谷を遡上する沢登りコースを紹介しているものもある。
登山道が横切る龍頭谷(りゅうずだに)。
秋にはモミジやカエデで彩られるV字の渓谷、竜頭谷を右岸に渡り、少しばかり杉の植林を行くと明るい自然林の気持ちの良い下り坂が続くが、木々が生えていなければ目が眩みそうな傾斜で、ちょっとしたザレ場もありところどころにワイヤーの柵が設けられている。スミナガシが舞いヒオウギが咲く坂道を下って行くと、眼下に登山口の赤い吊り橋がチラチラ見えてきた。竜頭谷から30分ほど下って木の指標がある遊歩道の分岐まで降りてきた。
別府から登ると一番最初にある指標、木のベンチもある。下山時には下り右手の階段を降りる。
遊歩道の分岐まで辿り着けばもう帰り着いたも同然。階段を下りて赤い吊り橋を渡ればすぐに別府の茶屋に着く(分岐から茶屋までは5分ほど)。
標高差1200m、距離4kmの急下降はこうして終わった。
別府からの石立山登山口。吊り橋の向こうは壁のような断崖絶壁に登山道が続く。
注意!(備考)
歩行時間が長いので飲み水には充分に注意してください。石灰岩の山は保水能力が弱いようです、水場はあてにしないようにしてください。
この山の歩行タイムは市販のガイドブックごとに違います。そのタイム差は、1時間2時間はざらです。つまり、その人のペースによって大きく左右されるのです。標高差1200mはもとより、延々続く急登は想像以上に過酷です。季節にもよりますが、山頂へ正午前後に到着できないと思われるときには思い切って登頂を断念し下山する覚悟でいてください。特に別府から登り、別府に下るコースは上級コースになります、必ず山馴れた人に同行してください。
石灰岩はもろく滑りやすいので、登り以上に下山には全神経を集中してください。
この記述後にも、2000年10月29日、下山途中の男性が40m滑落し、腕の骨を折るという事故が起こっています。この時は日没までに下山が出来ず、ライトも持ち合わせていなかったようですが、くれぐれも、どうか予定時間を超えた場合は、引き返す勇気をお持ちください。それでも陽のある内に下山できそうにない場合は、平坦な所や落石などの心配のない窪地など、ビバークできそうな場所をただちに探し、スギの枝や枯れ葉などを集め、早めにビバークの用意をしてください。たとえ一晩心細い思いをしても、無事に下山することこそが楽しい山行きを続ける秘訣だと思いますから。
別府の登山口である茶屋付近は別府峡と呼ばれ、高知県屈指のモミジの名所で紅葉時期に林道は一方通行になるので注意が必要です。
別府の茶屋の駐車場は有料でテントサイトとして利用が出来ます。水も、きれいなトイレも有ります。
別府からの登山拠点となる駐車場。