清滝山の祠から道は一旦下り、1分ほどで鞍部になり登り坂に転じる。
道にはだかる大岩は、その左手をまいて登って行く。足元には落ち葉に隠れてシバグリのイガが転がっている。
この辺りには雰囲気のある岩場が点在し、落葉広葉樹林も美しく、ムラサキシキブのかわいい実に和む。しかし道は案外急な登りである。

この坂道で左手の岩場に出ると、マツの木の間からは南に土佐市、東に高知市の展望が素晴らしい。
南北にたゆたう仁淀川の向こうには、アンテナのめだつ烏帽子山や採石のために削り取られた柏尾山を境に高知市と春野町の密集地が広がる。
南眼下には冬を待つ田園地帯と土佐市街が同居し、ゆっくりと目線を上げてゆくと清瀬山系の向こうで太平洋が空にとけこんでいる。
一方、目の前に浮かんでいるパラグライダーは、メインランディング場である仁淀川河川敷の八天大橋下流に向かって優雅に空の散歩を楽しんでいたりする。


左向こうに柏尾山や烏帽子山、中央に仁淀川河口、右は土佐市中心部と清瀬山系、そして背後に太平洋が広がる。(注*この写真は2枚の画像を連結させています)

しばし展望を楽しんだ後、坂を登りきるとなだらかになり、落ち葉の上にいっぱいのドングリを眺めながらの快適な道になる。
南西になだらかに登り、やがてやや西に方向を転じてほぼ水平に行くと、山頂手前の祠に着く。ここまで清滝山の祠から約15分。
鳥居と祠のそばには榊の木や「宇宙光照神道(あまひのみち)第6番聖地霊場」の石板が建てられており、あたりは社会教育団体「宇宙光照神道哲学(フィロソフィー)光団」の聖地として定められているようである。

立派な鳥居と祠は、この山が初めての登山者にはてっきりここが石土ノ森の山頂かと思ってしまう。事実、私も山頂から更に西方への散策を予定に入れていなければ、うっかりここで引き返すところだった。


石土ノ森山頂手前の祠。周囲を樹木に囲まれ展望が皆無なのは残念。

さて、山頂手前の祠からは2分ほどの登りで石土ノ森の山頂に着く。
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(*)6巳未年11月奉献の古い手洗石と新しい手洗石が並んで置かれ、少し傾いた木の鳥居の奥には石の台座の上に石鎚神社の祠がある。
三角点はその祠の西側4mほどのところにある。
(*)石が欠けて年代が判読不能だが、おそらく文政かと思われる。


石土ノ森山頂。三角点の標石は祠の左手にある。

辿り着いた山頂はマツやヒノキがこんもりとなだらかな広場で、西の一角には見晴らし岩があり、北には鷹羽ガ森、眼下には33号線沿いに日高村の町並みが見えている。幾つもの山なみの遙かには石鎚山系が横たわっている。


石土の森山頂から北方向の遠望。左奥に中津明神山、右は鷹羽ケ森の肩越しに筒上山、その脇にほんの少し石鎚山がのぞく。

ところで、山頂広場の南には手洗石の近くから南に下る道がはっきりと踏まれている。ここを下ればどうやら山腹を東西に走る林道に降りられそうだが今回は確かめることにならなかった(この道を踏査された方は詳しくお教えいただければ幸いです)。

山頂で休憩した後、稜線を更に西へと散策に向かう。
広い道を下って行くと、あちらこちらにイノシシが土を掘り返した跡があり、清滝山にワナが仕掛けられていたのも肯ける。

稜線の道はしっかりしており、脇見しながらゆっくりと歩いて行くと、山頂から10分足らずで高知県の境界標石に辿り着いた。
ここから道は南に方向を変えてまだずっと延びているが、私はここで引き返すことにした。


石土ノ森山頂から西に5分ほどの稜線にて。落ち葉の気持ちよい道が続く。

帰途は往路を引き返し、再び清滝寺に立ち寄った。
陽は傾きかけ、数時間前にはお遍路さんでにぎわっていた境内も今はひっそりとしている。
黄金色に降り積もった銀杏の落ち葉も息をひそめ名残惜しそうに斜陽を楽しんでいる。
店じまいしかけた露店でおばあさんに声をかけ、硬貨と引き換えに一袋の蜜柑と抱えきれないほどのお土産話をいただいて家路についた。


*全行程の私の所要時間(コースタイム)は以下の通り。
【往路】
登山口<3分>登山口の看板<23分>清滝山の祠<16分>宇宙光照神道霊場<2分>石土ノ森山頂

【復路】
石土ノ森山頂<2分>宇宙光照神道霊場<11分>清滝山の祠<16分>登山口の看板<2分>登山口


備考

清滝寺から登山口までの車道については本文中でも再三ふれたが、幅員が狭く農耕車優先ということも考え、可能なら清滝寺にお願いして境内に駐車させていただき車道を歩かれるか、あるいはミニ八十八ケ所を辿られる方が無難でしょう。
ミニ八十八ケ所のルート詳細については山と渓谷社刊「文献登山ガイド38高知県の山」清滝山の項を参考にされてください。


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