それにしても伊予富士山頂からの展望は素晴らしい。
この展望が伊予富士を日本300名山として称える要因でもあろう、そこには360度どの方角を眺めても絵になる風景が広がっている。
西日本最高峰の石鎚山、どこから眺めてもドーム形の筒上山、高知県単独の山として最高峰になる手箱山、日本200名山の笹ケ峰や、300名山として伊予富士と肩を並べるササ原の美山瓶ケ森など、四国を代表する高名な山々が次々と視線に飛び込んでくる。
もちろん中には見覚えのない山もあったりするが、それはそれで地図を広げて山座同定する楽しみもある。


西方向の眺望。中央奥には赤石山系も覗く。

ところで、伊予富士の山頂から尾根を南にササ原の中の踏み跡を下ると、シャクナゲの群落もあり、夏ならホツツジ(穂躑躅)の花にも出会える。
ホツツジはほのぼのとしたユーモラスな花が特徴で、きっと初対面なら心和まされることだろう。


長い舌を伸ばしたような花柱が愛らしいホツツジ(穂躑躅)は秋の紅葉も美しい。

さて、山頂で360度のパノラマを楽しみながら温かいコーヒーでくつろいだ後は東黒森に向かい伊予富士を後にする。

往路を引き返し、東黒森別れまで20分あまりで下りてきてから、そのまま稜線の縦走路を西に向かい、尾根の北側をトラバースして再び稜線に出てからは尾根の左手を登って行く。
登山道にはヒヨドリバナやヤマハッカ、アザミやイタドリの花が咲き、頭上ではガマズミの実がもう赤く色づいている。


伊予富士を背に東黒森(正面のピーク)に向かう。

山頂手前で左手に大きな岩を過ぎると、東黒森別れから15分足らずで東黒森の山頂に辿り着く。
こちらも山名板を中心にわずかだけ裸地の見える狭い頂だが、遮る樹木の無いおかげで伊予富士同様ぐるり展望が広がっている。
ここからは伊予富士から眺めた石鎚山系の名山がまた違った角度で私達の目を楽しませてくれる。
余りにもまわりにたくさんの展望の良い山が有るために忘れられがちな東黒森の頂だが、ここからの眺めも決して捨て置くことはできない。


東黒森山頂にて。右奥に石鎚山、左手には筒上山や手箱山が見えている。

さて、東黒森からは更に西に向かい自念子ノ頭(じねんごのかしら)とのコルに下れば村道瓶ケ森線に下山することもできるが、私達は来た道を引き返すことにした。

黒森別れを過ぎて更に下れば眼下には村道瓶ケ森線が近づいてくる。
村道瓶ケ森線といえば、雄大な景観を損なう車道として以前から何かと非難の的になってきた道でもある。
しかし、この車道のおかげでそれまでアプローチの遠かった石鎚山系の山々が身近になったことは確かであり、おかげで山に親しむ人々が増えたこともまた事実である。
すべての登山者が公共交通機関を使い寺川から鎌藪を越え延々と伊予富士をめざして長距離を歩けるとばかりは限らない。
こんなに素晴らしい山々の頂で、老若男女を問わず自然について語り合えることもまた、改めてこの車道のおかげなのだと私は思っている。


黒森別れからササのスロープを下山する。正面で伊予富士が見下ろしている。



*全行程の私たちの所要時間(コースタイム)は以下の通り。
【往路】
登山口<18分>東黒森別れ<31分>伊予富士山頂
=計49分

【復路】
伊予富士山頂<22分>東黒森別れ<13分>東黒森山頂<10分>東黒森別れ<15分>登山口
=計60分
*東黒森に行かないで往路をそのまま下山する場合は約37分の所要時間になります。


備考

伊予富士界隈の自然をたっぷりと楽しみたい方には旧寒風山トンネルから桑瀬峠を経て、伊予富士から東黒森に登り、帰途は伊予富士の南をトラバースする巻き道を歩いて往復することをお薦めします。
その場合は、旧寒風山トンネル南口に駐車し、寒風山に向かうのと同じルートで桑瀬峠に向かい、桑瀬峠からは稜線を西に、伊予富士まで往路約2時間半、更に東黒森まで40分、帰路は巻き道を経て約2時間半〜3時間をみておけばよいでしょう。

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