鶴松森  2000年7月2日

この山を「四国百山」という書物で知って、もう10年以上も前から、一度は登ってみたいなと思っていたのに、この日まで縁が無かったのはナゼだったろう?と、考えたとき、この日同行した浜田さんの一言が原因だったのかも知れないなと「ふと」思い当たった。
彼には気の毒な言い分だが、「以前、冬に鶴松(鶴松森)に登ったら、山頂近くに林道があり、、、云々、、、」と、聞いたのが事の始まりで、それ以来、私の中ではこの山を食わず嫌いに扱っていた節がある。
しかし、これほどの山なのに足を遠ざけていたのは、結局は私の怠慢だったのである。

須崎市から国道197号線で新荘川(しんじょうがわ)を遡り、葉山村を西へと横断してゆくと、右手(北側)に、壁のように連なる稜線がある。仁淀村との村境に連なる稜線上の峰々は北山と総称され、尾根にはよく目立つアンテナが2塔立っている。まず、そのアンテナ塔に向かってアプローチを開始する。

鶴松森は古くからポピュラーな山だったのだろう、いくつもの登山道があるが、今回私たちは林道仁淀葉山線からの縦走を目指した。

NTTドコモ中継所のアンテナが建つ尾根へは、葉山村精華小学校付近から林道北山貝名線へと入ることも出来るが、この日私たちは「大谷トンネル」のすぐ手前を、通行車両に注意して右折しアンテナ塔を目指した。よく見ると「大谷トンネル」手前の道には「アゾ川」への看板があり、そばには「しんあそうかわはし」がある。ここから目指す鉄塔までは9Kあまり。
壁のような山肌を登ってゆくからには、焦らないでハンドルを切って行く。


林道仁淀葉山線を西に走り、アンテナ塔が立つ尾根を振り返る。左奥のピークは黒森(984m)。

鉄塔の立つ尾根に出てからは、西に左折し、仁淀村に通ずる地道(未舗装)の林道仁淀葉山線に乗り入れるのだが、この道はとりつきが難路で車での通行はおすすめできない。特に、山肌が崩壊して路面が谷川に傾斜している場所では転落の危険さえあるので、私としてはここ(アンテナ塔付近)から歩くことをおすすめします。

なお、この時私たちはちょっと無理をして、林道に乗り入れたが、結局700mほど行ったところで車でのアプローチを断念した。尾根の開けた林道だけに、歩くのも悪くない気分にさせてくれるのが救いで、黒川森の手前で南側が少し広くなった場所に駐車し歩き始めた。


車を乗り捨て、林道仁淀葉山線を歩く。浜田さんの回りを無数の蝶が舞う。

林道をのんびり行くと、傍らではツマグロヒョウモンなど、珍しくはないけれど多くの蝶が乱舞している。林道脇にはヒメジョオンやオカトラノオなどが満開で、そんな蝶たちを誘っている。
梅雨の末期でたくさんの蝶たちが舞いながら私たちを取り囲む光景は、この世のものと思えないほど美しく、二人でたびたび感嘆の声をもらしながらシャッターを押しては歩いた(この山で撮影した蝶たちのいくつかは、文末の備考で紹介しています)。

そんな風にのろのろ歩いても、低いマツやアセビの林道を10分あまり行けば、右手山側に黒川森(くろかわもり)の登山口を見つけるところまで来た。登山口には「土佐のマイナー山」の著者が付けたのであろう、黄色い指標板がある。登山口の標高は950m。
黒川森へは、ここから山手へとヒノキの植林を3分程度で到着する。なだらかな山頂には2等三角点の石標があり、山名板には「黒川峰(萱ケ成<かやがなる>)」とある、標高は1003.5m。西には松の大木が立つ。
山頂はびっしりと樹木に覆われ、展望は皆無。三角点ハンターなど一部の方を除き、一般には登山対象と言い難い山である。
下山はもと来た道を2分あまりで林道に下り立つ。


黒川森(黒川峰)山頂、三角点の石標が無ければどこが頂かも分からないほど。

少し寄り道したが、再び「本命」の鶴松森を目指して、林道を西へと進む。
稜線を縫う林道からの展望は良く、空も開けて気持ちがよい。こんなさわやかな林道は久しぶりである。


林道を行く。林道は轍(わだち)以外草が蔓延(はびこ)る難路。山肌には石灰岩が露出している。

黒川峰登山口から約25分、駐車場所からは40分足らずで、林道の両脇に赤い鉄柱(H鋼)が建つ場所に来た。
ここを左手には中野峰(なかのみね)への登山道があるが、中野峰への登山は帰途に挑戦することとして、ここでは真っ直ぐに鶴松森を目指して林道を更に進んでゆく。


赤い鉄柱(H鋼)が建つ場所から林道を10分ほど行くと、尾根の交わりで右手に「普通林道仁淀葉山線終点」の白い木柱が現れる。
このすぐ左手が鶴松森の登山口で、ここから林道は仁淀村に下り、その方向には鳥形山が確認できる。
この時は登山口の指標が確認できたが、確認できないときでも、この辺りなら適当に尾根にとりつくと良いだろう。


登山口を駆け上がり、尾根を目指す。

林道脇から明瞭な踏み跡を辿り、尾根にとりつくと、巨大な岩の脇をすり抜けて、快適な登山道が延びている。仁淀側は植林だが葉山側には雑木林が続く。