さて、林道を少し歩くと再び「旧官道国見越え」の看板と出会う。ここは国見峠と呼ばれ、かつて土佐藩九代藩主「山内豊雍(やまのうちとよちか)」は、この峠にて「山幾重越えつつ見れば土佐の海や、千里の波も霞む長閑さ」と詠っている。
この先から山頂へは再び山道をたどることになる。
山道に踏み入れて少し行けば岩場の好展望所(「遠見岩」ともいう)に出るが、ここから10分足らずで山頂である。
山頂は狭いが、数人で憩う程度には充分である。三角点の石標と見晴台がある。ただし、見晴台へのハシゴは壊れており、台の上へは足場をよじ登るしかない。
展望台の上から太平洋を望む。
それでも、見晴台からの展望はよく、南には高知市街から香長平野へと、そしてきらきらと光る太平洋が望める。(逆に見晴台に登らなければ頂の樹木が成長して展望はきかない)
西には笹ヶ峰やアンテナの目立つ三辻山などの尾根が延びている。
この頂にて先の九代藩主「山内豊雍」は、雨に散る山桜を惜しみつつ、「しはしなお心してふけ山風に、さける桜のちりなんもおし」と詠み、「川おとの霧より下にきこゆるは、是れそ国見の峰にやあらん」と詠っている。
時を隔てても、頂から市井を見下ろせば、故郷をあとにして遠く江戸まで参勤交代に出る土佐藩主の哀惜が聞こえてきそうである。
香長平野が一望。中央奥には野市町の三宝山(さんぽうざん)が見える。
さて、しばしの展望を楽しめば帰路は往路を辿るばかりだが、時間が有れば国見峠から「杖ケ森」まで足を延ばしてみるのも楽しい。
峠から「杖ケ森」までは800m、往復40分たらずである。
なお、杖ケ森への道は別に単独でご紹介しています。
備考
登山道に水場はないが、非常時は「国見越え」の第2看板から北に、「杖の森」へ向かう途中に小さな流れがある。ただし渇水期には涸渇してしまいそうなので注意して欲しい。
国見峠から北には本山町吉延へ、赤荒分岐から南には土佐山田町穴内へと、旧官道の殿様道を辿ることが出来る。
登山口の赤荒峠の本山町側には、国見山と反対に西に延びる林道がある。通常入り口は施錠されているのでマイカーでは進めないがここを歩いて20分ほど行くと吉野川の支流「樫ノ川(かしのかわ)」の上流域に出る。
ここには、小さいけれど清涼な水を蓄えた泉と湿地帯がある。
樫ノ川の、そして吉野川の一滴を蓄える泉と湿地。