さて、昼食を済ませてから私たち男3人は山頂から更に稜線を東へ、大座礼山に続く縦走路を散策に出かけることにした。
三ツ森山山頂からは一旦下りきって再び登り返すと、山頂から約10分後、シャクナゲの小群落を過ぎて岩場が続く。
縦走路自体危なげな箇所は少ないが、南斜面は鋭く切れ落ちている。
三ツ森山から大座礼山へ向けての稜線は、地図(1/25000)にも約2kmに渡って岩場の表記がある通り、南側には切り立った岩場や断崖が続いている。
四国脊梁山地の臍(ヘソ)ともいえる大座礼山界隈にあって、この稜線は遠目にも独特な景観を生み出している。
比較的ふくよかで女性的だった平家平からの稜線も、三ツ森山を越えここに来て野趣溢れる男性的変容をとげながら、やがてまた大座礼山のあの母のように大らかなブナ林へと変化してゆく。
石鎚から剣へと続く四国脊梁山地はこうした変化を繰り返しながら美しい景観を作り出している。
三ツ森山から東へおよそ10分ほどのところにあるシャクナゲの小群落。
大座礼山に続く道は思ったより良く踏まれていてヤブも少なく、明瞭な縦走路がほぼ県境に沿って延びている。
足元の岩場には様々な植物が張り付いており、イワタバコやケイビランが翠色の葉を広げ、シコクママコナが花を差しだし、傍らにはジンジソウがゆれていたりする。
ジンジソウ(人字草)。その名の通り「人」という字に似た花びらが特徴。良く似た仲間のダイモンジソウとともにユキノシタ科を代表する植物。
山頂から東にほぼ1.3Km、約25分で今回の散策は打ち切り三ツ森山山頂に引き返すことにした。
しかし、いずれ近い将来には大座礼山まで新発見を求めて歩いてみたいと思う。
三ツ森峠まで延びてきた林道は仕方ないにしても、平家平眼下まで延びてきた大規模林道がこの山肌を削るまでには是非にも歩いてみたいと思うのだった。
三森山から大座礼山への縦走路より眺める平家平の雄姿。
さて、山頂に引き返した私たちは、平家平にいた伊藤君と連絡を取りあった後に下山を開始した。
往路には急坂を喘ぐのに夢中で見逃していた風景を楽しみながら、しかしスリップには充分注意しながら三ツ森峠まで下る。
もと来た道を辿り、林道ではくるくる振り回していたステッキが、小麦畝が近くなると思わぬ大活躍を始める。何しろ足元の栗は想像以上の数だから。
帰途の山道、ステッキの先で栗のイガを広げ、栗拾いに夢中になる。シバグリ以外に、実の大きな栗も多い。
あらん限りのポケットをまるでリスの頬袋のように栗の実で一杯にして登山口に降り立つと、平家平まで遠出していた伊藤君も時を同じくして登山口に元気な顔をあらわした。
*全行程の私たちの所要時間(コースタイム)は以下の通り。
【往路】
登山口<51分>林道終点<40分>林道分岐(水場)<16分>中宿<4分>三ツ森峠<30分>三ツ森山山頂
【復路】
三ツ森山山頂<25分>三ツ森峠<4分>中宿<15分>林道分岐(水場)<25分>林道終点<40分>登山口