奥工石山 1995年11月3日

工石山という山が高知県には2山有って、もう一つの工石山(土佐山村にある県民の森)を前工石、この山を奥工石(立川工石とも)と呼んで区別している。
その昔は喰石山とも呼ばれていたようで、平家の落人が飢えに苦しみ「この石が喰えるものなら」と嘆いたといういわれもある。
また、別名「仁尾ケ内山(におがうちやま)」とも呼ばれている。

高知県大豊インターチェンジ付近から、高知自動車道と仲良く走る県道「川之江大豊線」を北上すると、大豊町立川刈屋(たぢかわかりや)地区に「工石山」と大きな看板が現れる。すぐ東手(右)には「立川御殿<旧立川番所書院>」(詳しくは「笹ケ峰1016m」の備考を参照)がある。
ここから西(左折)に少々狭い道を注意しながら進み、仁尾ヶ内(におがうち)地区を過ぎて工石橋を渡り少しすると車道は地道になる。お世辞にも快適とは言い難い林道を辛抱強く行くと右手に「工石山荘」が見えてくる。
ここが目指す奥工石山の登山口だ。

山荘脇の白石神社に手を合わせて、鳥居をくぐり歩き出すと若年の檜の植林が背中の荷物を撫でて歩き辛い。少し開けてくればちょっとしたガレ場の直登になり、振り返れば確実に標高を稼いでいる自分が確認できる。
歩き始めには少しだけキツイ登りだが、そんなに労せず1320mの尾根に辿り着く。急ぐことはないので最初の休憩はいつもここで摂っている。

水場
 尾根道で出会う水場。この時は涸れていた。

尾根道にはシャクナゲやツツジが多く花時は思わず和むのだが、この時の季節は秋。終わりかけた紅葉を惜しみつつ20分ほど歩くと坂道でいつもの水場に出会った。岩清水を樋(とい)で導いている。
しかし、楽しみにしていたのだが、この日の水場には一滴の水も落ちていなかった。

尾根道が東斜面に変わったところで鹿と出会った。眼があったがじっとしていると相手もその場に立ちつくしたままなので、そっとカメラを取り出したのだが、マジックテープの音に驚いてあっという間に姿を消してしまった。
ほぅ、とため息をついて再び尾根を行くと、すぐに目の前に大きな岩が現れた。ユルギ岩だ。


 登山道に聳え立つユルギ岩

巨大な岩峰の右手をまいて坂道をよじ登れば、山頂とユルギ岩との分岐に出る。
背中の荷を降ろして左に数歩も行けばユルギ岩のてっぺんに立つことができる。
ここからの眺めは見事だ。


 ユルギ岩の上から林道を見下ろす。思わず眼下に引き込まれそうになる。