竜頭山  2003年5月24日

先頃ひょんなことから竜頭山の登山口を見つけてしまったばかりに、私たちは一週間後この山をめざす羽目になった。もっとも、だからといってどうしても登らなければならない理由など何一つ無かったのだが、森林管理署が立派な看板を設置したとあっては放ってもおけないのが私たちの悲しい性なのである。

竜頭山は石立山から西に直線でほぼ2Kmにある標高1264.4mの三角点で、石立山塊から派生した尾根の一角にあり、どちらかといえば山頂のある山と言うよりは林と思った方が正しいであろう。したがって三角点からの展望は皆無である。
しかし、1000mを越える辺りからの暖温帯から冷温帯に移行するツガの群生など美しい林には、奇妙な形のミズナラやダイナミックなオオヤマツツジなど見所も多い。

竜頭山登山口は石立山登山口より更に奥にある。
別府から「ふるさと林道西熊別府線」に入り、石立山登山口を通り過ぎて約2km、左カーブの手前右手に「竜頭山登山口」の看板がある。
マイカーは左カーブの路肩にある乗用車3台分ほどの駐車スペースを利用する。ここには「奥物部紅香橋まで5km」の標柱が立っており、ペットボトルで作られたスズメバチのトラップも下げられている。


林道脇の登山口から前方の吊り橋に向かい、対岸に渡る。

森林管理署の設置した登山口の道標から車道を眼下の川に向かって下り、補助ロープの掛けられた丸太の橋を進み、前方に見える吊り橋を対岸に渡る。
欄干代わりのロープをしっかりと握って、揺れる吊り橋を一人ずつ渡る。橋の高さはあまりないが川は水量があって案外スリルがある。

吊り橋を渡り終えると対岸の山肌をジグザグに登って行く。辺りは照葉樹林で、登山道の右手には杉の植林がある。
右手に小さな谷の水音が聞こえてくると、前方に白糸のような2本の筋の流れる小さな滝が見えてくる。
登山道は滝の手前で折り返し滝の上部に出る。この先登山道はこの谷に接近したり離れたりしながら上方に向かう。

谷に向かう脇道を見送り、しばらく植林の中を杉の落ち葉を踏みながら登って行くと、足もとにはこの時期の花であるギンリョウソウが見える。


深山幽谷の雰囲気ある広葉樹林帯を登って行く。

やがて植林帯を抜けると気持ちの良い広葉樹林が一時のアクセントを加えてくれる。
右手に付かず離れず沿って登る谷は源頭部になり水は伏流水となって枯れ谷と変わる。
辺りではサワグルミの木が私たちを見下ろし、谷沿いに散在するガクウツギは白い花を咲かせている。

ほどなく再び植林帯に入ると、あまり手入れされていないスギ林など殺風景な登行が続く。
足もとに所々あるミツバテンナンショウもすでに花期を終えている。
唯一、頭上でさえずる小鳥の声だけが私たちの励みである。

そうして、登山口から約25分、標高差150mほどを登ってきて、上方に作業小屋が見えてくると、小屋のすぐ上で道は立派な横道に合流する。
合流した所には「刃物足もとに注意しよう、日本の緑、国有林」の看板が足もとに見えている。
ここは左へと折れるのだが、ここを右に行けば竜頭谷に向かうのかもしれないが確認はしていない。


作業小屋の上で横道に出る。

さて、横道を左に折れてからはなだらかに山腹をトラバースする。
右上に間伐されて明るい杉の若木林が現れると、横道を2分ほど歩いてきて尾根の張り出しを巻くとトラバース道は分岐になる。
ここでは右手の立木に巻かれた水色のテープに従い右上に折り返し杉の若木林の中を登って行く。
木々の間から上方には竜頭山が見えてくるが、標高を稼ぐ割には山頂は一向に近づかず、まだまだ遠くに感じられる。


植林帯を登る。右奥に竜頭山が覗く。

時折眼下に別府を見下ろしながら、ヒノキやスギの植林の中を殺風景な坂道が続く。
次第に汗が浮き体温も上がってくる頃、ちょっとした分岐に出会う。しかし右手の作業道には黄色いテープで進入禁止のサインがあるので迷うことなく真っ直ぐに上をめざして行く。なお、この分岐で右手の作業道に入ると造林作業小屋があるが、今では朽ち果てて緊急避難場所としても使えそうにない。

分岐から間もなく、登山道は植林帯を抜け、前方がなだらかになると北西にザレた場所で小休止して汗をぬぐうことにした。
ここからは北北西方向に谷を俯瞰して、前方にはみやびの丘から口西山に向かう尾根筋や、その奥には白髪山から白髪別れにかけての稜線が遠望できる。
傍には花の終わりかけたネコヤナギや一輪だけ花をつけたオオヤマツツジがある。


ザレ場の上で小休止。左奥に見える白髪山の稜線はたびたびガスに覆われる。

進む