三傍示山  2002年5月6日

三傍示山は笹ケ峰と野鹿池山との中間に位置し、その三角点は愛媛県と徳島県の県境にある。従って、高知県の山を紹介しているこのホームページには相応しくないかもしれないが、登山口が高知県側にも存在する、あるいは高知県県境に隣接し尾根続きの山であることなどからここに取り上げることにする。
このような山はメジャーなところでは天狗塚や三本杭なども今後紹介してゆく予定である。
なお、三傍示山は「さんぼうしやま」(土佐の峠風土記ほか)とも「さんぼうじやま」(日本山名総覧ほか)とも読むが、ここでは「角川地名大辞典」などにより「さんぼうじさん」とした。ちなみに三傍示山は「三傍爾」や「美津保宇志」とも書かれ、愛媛県では三峰とも呼ばれていた(土佐州郡志)。

参勤交代の旧官道を辿って笹ケ峰に登った私たちはその足で県境の稜線を東へと三傍示山に向かった。
榜木の立つ笹ケ峰峠の南端から県境の尾根に向かってササの中の踏み跡を辿ると、少し登ってから下り、なだらかに尾根を進む。
ところどころササの深い所もあるが踏み跡はしっかりしておりブッシュは少ない。
北面に植林されていたスギも目立たなくなると存在感のあるブナが点在する萌木の林になり、足元にはミヤマシキミの緑が広がる。
稜線に立つ木々にはツタウルシやサンカクズルなど、蔓や葛が巻き着き、大きなブナはまるで黄緑のモザイクをまとったようである。


新緑のブナ林を東に向かう。

笹ケ峰峠から10分ほど稜線を東に来ると尾根の端から急降下して、鞍部に下り立つと右手に爽やかな木立があり、樹間からは南下方に立川川が見えている。


中央下方に立川の山あいを俯瞰する。

アップダウンを繰り返す登山道にはシャクナゲの群落もあるが、今年の蕾は少ないのが残念である。
落ち葉の上に顔を出したミヤマカタバミやバイケイソウを見ながら進んでゆくと、ふと足元にベッコウヒラタシデムシを見つけた。
獣の排泄物を一生懸命分解しているシデムシ(死出虫/埋葬虫とも書く)は、読んで字の如く死骸や糞があれば何処からともなく現れてくる。
死骸などに群がるシデムシの姿はそれだけで嫌われ者と受け取られるが、しかし生きたままの虫を補食するカマキリなどに比べれば、死んだものたちを丁寧に埋葬する心優しい森の住人ともいえる。
彼らが居なければ、この森の主役である大きなブナの木も育つことは出来なかったろう。


広々としたササ原から尾根に向かって登り返す。

さて、石の山界標柱が立つ辺りを過ぎて、笹ケ峰峠からおよそ25分も来ると、辺り一面広々とした林の中をなだらかに進み、間もなく逸れた尾根に向かって登り返してから、その後はずっと登り坂が続く。
辺りのササは次第に背が高くなり、ところどころ狭い回廊のように登山道に迫っている。
落葉小低木類の枝も登山道を遮りはじめるが、依然踏み跡は明瞭であり立木には赤テープなども見えている。


やがて背の高いササの中の急登になる。

しかし、笹ケ峰峠からおよそ35分、だらだらとアップダウンしてきた稜線の道はここから傾斜を増してゆき、息の上がる急登が始まる。
ササや木の枝を引き寄せながら身体を移動させてゆけば、急坂の途中で後方の展望も開ける。
上がった息を整えながら後を振り返ると、先ほどまで居た笹ケ峰が眼下になり、その向こうに橡尾山やカガマシ山、奥工石山などが見えている。
また、橡尾山の左後方には白髪山の頂が覗き、南のキビス山に向かって延びるなだらかなスロープも見える。
(この辺りから眺めた笹ケ峰の写真は、笹ケ峰のトップページに掲載しています)


稜線上で振り返る西方向の展望、橡尾山(右手前)、奥工石山(右奥)、白髪山(左奥)などが見えている。

進む