さて、この強風の中でさえ、登山客は10組をゆうに超えていた。
この山の人気をつくづく感じたが、聞けば麓は絶好のハイキング日和りらしい。だからという訳でもないだろうが軽装で訪れたほとんどの人が山頂の天候に震えるように早々に下山してしまった。
太陽が傾いた頃、あれだけ賑わった?山頂には風にそよぐ笹以外に動くものもなく、少しの寂しさと共に撤収し山頂を後にした。
霊山「笹ヶ峰」を目指す山岳信仰信者の一行。
旧道を20分足らずで急ぎ足に下って丸山荘に帰り着いた。
軒先の汚れたTシャツを取り込んで下山しようとしたが見あたらない。もちろん盗っていく人もないでしょうし、風に飛ばされたやと諦め、伊藤さんにしばしのお別れをと声を掛けると、「下着は乾いている」とのこと。なんと、小綺麗な管理人室のストーブの上に私のみすぼらしいTシャツが見えるではないか。おそらく夕方のガスで湿り返すため、室内に取り入れて下さっていたのでしょう。
薪の熱で芯からあたためられた下着を受け取りながらそれ以上にあたたかい心遣いに胸まで熱くなりました。何度も深々とお礼をして、丸山荘を後にしました。後ろからはそんな山小屋の主人を心から愛する今夜の泊まり客の賑やかな声が聞こえていました。
広大な笹ヶ峰とそれに勝るとも劣らない大らかな伊藤さんとの2人3脚で、ずっとこの山は輝き続けているのだといつも思う。
笹ヶ峰北斜面の笹原にて、山頂を振り返る。
丸山荘に別れを告げ、階段を下りながら、昨夜読んだ山田さんの絵はがきにあった言葉を思い出していた。
絵はがきにはこう書かれていた。
「高い山に登ったり、深い海に潜ったりする事で自然が判ってくるんです。そうして自然に対して自分には何が出来るか判ってくるように思えるのです。大人達は判ってくれなくても、子供達には判ってもらえる気がする、そんな風に思えるのです。」
備考
水場は登山口のほか、渓谷の登り、宿からすぐ、丸山荘などに豊富にありますが、丸山荘を出てから山頂までに水場はありません。
また、沓掛林道からの登山コースでは宿までの中程に水場があります。
丸山荘の宿泊は2000円程度です。
シュラフ持参の場合、布団借用の場合等、若干料金が異なります。詳しくは登山前に下記までお確かめください。
丸山荘(TEL)0897−57−7855
なお、お米を持参すれば美味しく炊いてくださいます。
食事やお弁当を用意していただける場合もありますが、基本的には自炊です。
夏休み当初には西条市などの学校登山で丸山荘は賑わいます。極力予約してからお伺いされると良いでしょう。
山頂付近のコメツツジは7月の花期、10月以降の紅葉期が見ごろです。
登山道ではアサギマダラに出会うこともできるでしょう。