分岐からは、順路と書かれた道標に従い、先に向かう。
1000m地点の道標を通過して、植林や雑木林を繰り返しながら緩やかだが長い登り坂をゆく。
やがて息が上がってくる頃、坂の途中に「第2展望所」の看板が見えてくる。ここにも先ほどと同じく小さな祠がある。
登山道を右手に逸れて第2展望所に立つと、眼下の入田から四万十川を挟んで向かいに石見寺山が臥した蝙蝠のように横たわり、北西には大方町最高峰の仏ケ森も見えている。ここから見下ろす四万十には、流れにたゆたう遊覧船を眺めることもできるという。


「第2展望所」からの眺め。右手に石見寺山、中央奥には仏ケ森が見える。

ザックを背負ったままでしばらく展望を楽しんだ後、もとの登山道に引き返すと再び山頂をめざす。
落ち葉を踏みながらゆくと、右手の尾根には、また例の祠が見えている。

マメヅタが無数の小判のようにざくざく絡みついた樹々を眺めながら、尾根の左手を緩やかに登ってゆく。
第2展望所からほどなくして「1500m地点」と書かれた道標を通過すると、山腹をトラバースして尾根に出る。
すると、植林の切れ目で左方向に展望が開ける。ここが第1展望所で、足もとには「おつかれさま(小休憩)」「第1展望所1670m地点」などと書かれた道標が立っている。
限られた方向だけの展望ではあるが、ここからは南東方向に中村市市街地や香山寺などを望み、四万十川河口から太平洋、遙か水平線まで遠望することができる。


蛇行する四万十川、小京都中村市市街、黒潮寄せる太平洋などを望む。右手の山塊は香山寺。

足もとの看板通りに「小休憩」をとってから再び歩き出すと、数分後に登山道は直角に向きを変え、植林と照葉樹林との境を少しだけ直登する。
直登が終わり、なだらかになった登山道の脇には、これまでとはうってかわって立派な祠が現れる。祠には明治21年の年号とともに世話人や石工人の名も見て取れる。
更に祠から30mほど先の竹林には明治31年奉献の手水石だけが残る社跡も認められる。ここにはかつて石鎚神社があったといわれるが、現在は竹が生え放題に荒れ果てている。

 
登山道脇にある祠や手水鉢。

さて、社跡から山頂までは目と鼻の先である。
道の傍らに墓石らしき石組みを見ると、程なく前方に竹の疎林が見えてきて、中筋や平野の展望を案内した道標が見えてくる。
もうここは高森山山頂の一角であり、その道標のすぐ先には、「お疲れさまでした、高森山山頂です、336.5m」の立て札が見えている。
こうして辿り着いた山頂だが、残念ながら三角点の標石も、これといって特筆すべきものも無い。
唯一、「中筋、平野展望、楠島、森沢方面」と書かれた案内に従い、伐採整備された竹藪を山頂の南端まで行けば、眼下に穀倉地帯の東中筋地域などを俯瞰することができる。一方、山頂をへだてて反対側には「四万十川展望」の標識が立つが、残念ながらそちらは樹木ばかりですっきりとした展望は得られない。

 
植林に囲まれた山頂(写真左)と、中筋平野展望所からの眺望(写真右)。

ところで、持参した昼食を何処でとうろうかと彼女に問いかけると、やっぱり気持ちの良い景色を眺めながら食後のコーヒーも飲みたいという。
それならばと、躊躇なく第2展望所まで引き返して、ガスバーナーに火をつけた。
しばらくして、そこで鍋焼きうどんをかき混ぜながら「あんがい良い山ね」と彼女がつぶやいた。
メジャーな山岳にばかり感動してきた彼女だが、最近ではこんな里山の魅力もだいぶん分かってきたようである。
これで、登山道の栗を手にしていたなら、ますます「忘れられない山」のひとつになっていたことだろう。




私たちのコースタイムは以下の通り。
【往路】
トンボ自然公園登山口「遊歩道案内板」<18分>車道終点「遊歩道入り口」<16分>「500m地点」の標識<19分>「1000m地点」の標識<9分>第2展望所<8分>第1展望所<7分>高森山山頂
=計77分

【復路】
高森山山頂<4分>第1展望所<5分>第2展望所<8分>「1000m地点」の標識<12分>「500m地点」の標識<9分>車道終点「遊歩道入り口」<20分>トンボ自然公園登山口「遊歩道案内板」
=計58分


登山ガイド

【登山口】
中村市トンボ自然公園までは標識も豊富です。
トンボ自然公園の四万十学遊館と駐車場との間の道を西に向かって100メートルほど行くと、右手に「高森山遊歩道ハイキングコース」の案内板があります。ここが登山口で、マイカーは付近の広場に駐車します。
【コース案内】
登山口から遊歩道入り口までは車道を辿ります。随所に道標がありますが、少し分かり難い分岐などもあります。迷った時は直進すれば無難です。車道終点の遊歩道入り口までは坂もない水平な道です。
車道終点の遊歩道入り口からは道標がしっかりしています。明確な道を辿り、道標さえ見逃さなければおのずと山頂に至ります。
なお、バリエーションルートを探られる場合、入田秋トシや具同自由ケ丘団地へ下る道との分岐は比較的容易に把握できるでしょう。
また、山頂から平元や久礼場地区に下る道も踏み跡はしっかりしていましたが、何れも踏査はしていませんので慎重なトライをお願いいたします。



備考

高森山の標高は、高森山遊歩道ハイキングコースの案内板や山頂の道標によりました。


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