猿田峠から県境を辿って稜線の坂を登ると、少しの間、道の両側はスズタケで展望はきかない。
坂を3分ほどで最初のピークに出てからは一旦下る。
2分ほどで下りきると今度は雑木林の中の登り坂になり、所々ブナやヒメシャラを見ながら次のピークをめざす。
間もなく496番の石標からはなだらかになり、紅葉も終わり落葉した木々の間からは、前方右手にめざす玉取山が、振り返ると左後方には大森山が聳えている。
道を遮る倒木を何度か跨ぎ、黄色に赤のプラスチックの山界標柱を辿る。
姿のよいブナが右手に、その向こうに玉取山の山頂が見えてきたら、504番の標石のあるピークである。ここまで峠からおよそ15分。
ここからは正面に見える「1274mのピーク」に向かってアセビやシャクナゲをくぐり、岩場に注意しながら稜線を下ると正面に苔生した岩場が現れる。
登山道は岩の手前から右に逸れて岩場をまいてゆくのだが、2〜3分寄り道してシャクナゲの着生する岩場に登れば、南や西の展望が開けて心地よい。右手下方(北側)には爽やかなブナ林も広がっている。
稜線の岩場に立って玉取山山頂(右奥)を眺める、手前左は1274mのピーク。
ところでこの岩場から先は、岩場の中ほどを巻いて行ってもよいが、右手に見える美しいブナ林に下りて広々とした鞍部を歩いても楽しい。
どちらにしても、前方のヒノキの植林からは再び稜線を辿る。
登山道では大小のブナたちがあちこちでひなたぼっこしている。
さてここから少しの間急登が続く。喘ぎながら登って行くと、道の両側に幹周り3mほどのブナが2本、ゲートのように立っている場所を過ぎると「1274mのピーク」である。足元には標石がある。ここまで猿田峠から約30分。
登山道で大きな山門のようにどっかりと立つ2本のブナの木。静かな森で出会う樹々たちはヨーロッパに伝わる木の精の様。
「1274mのピーク」からは、北東方向に大森山〜佐々連尾山のササに覆われた稜線が美しく、南東方向にはお馴染みの奥工石山(立川工石)や白髪山(本山白髪)が肩を並べ、南には吉野川をはさんで国見山(本山国見)から笹ケ峰(前笹ケ峰)、三辻山などがほぼ水平に並んで見えている。転じて北西には下猿田の集落を見通してその奥に赤星山が肩を広げ、その西側には二ツ岳などの山なみが続いている。
残念ながらこの日は瀬戸内に浮かぶ低い雲に遮られていたが、晴れていたなら赤星山と二ツ岳の間に新居浜沖の瀬戸内海が輝いていたかも知れない。
さて「1274mのピーク」を後にすると、登山道は稜線の岩場を下り、ヒノキの植林の中の踏み跡を辿ることになる。
やがて稜線の踏み跡は少々心もとなくなるが、立木に付けられた赤テープや足元のプラスチック標柱を追いかけながら進んで行く。
ところどころ背丈ほどのササヤブを漕ぐような場所では、右手の植林にエスケープしつつ先に進む。
「1274mのピーク」から20分も西に歩くと、やがてヤセ尾根を登って477番の標柱を過ぎ、稜線の道は切り裂いたような岩のゲートにさしかかる。足元にはプラスチックの標柱が立っている。この引き裂かれたような岩の上に立つと北西方向の赤星山から西に向けて、赤石山脈の主要な山々が一望である。(玉取山のトップページの写真はこの岩場からのショットである。)
右奥のピークは赤星山、左奥の二つ並んだピークは二ツ岳、(写真には写っていないが)更に左へと東赤石山などが連なる。
赤星山の手前に見える白っぽい箇所は下猿田の集落。また、手前には上猿田地区があり、四国で最も標高の高い水稲栽培地としても知られるが、それは猿田川とそれを育む玉取山の森が大きく関与しているに相違ない。
ここからしばらくヤセ尾根の岩場が続き、稜線上に立ちはだかる大岩では南斜面に迂回する。
先ほどの岩場から5分あまりで、更に規模の大きい引き裂かれたような岩場になり、あちらこちらの奇岩にはシャクナゲが張りついて小さな群生をつくっており、その花時の壮観なことがうかがわれる。
ヤセ尾根には奇岩が連なる。左手は岩の上に生えるシャクナゲ。ここまで来ると山頂はもう間もなく。