岩場を過ぎて急坂を一気に登ると、一旦なだらかになるがそれもつかの間、間もなく山頂に向かって最後の急登が始まる。
山頂手前の急坂にさしかかる辺り。
しんどい坂も林立する無数のブナに慰められながら登りつめて、目の前のササをこぐとポッカリと山頂に飛び出す。
ここまで1274mのピークから約45分、猿田峠からはおよそ1時間15分の道のりであった。
辿り着いた山頂は樹木に囲まれ展望はきかないがそれでも、落葉した木々の間からは奥工石山や白髪山などを確認することはできる。
ササと樹木に覆われた玉取山山頂。それでも後方には樹間から白髪山が見えている。山頂には三角点の標石があり、高松軽登山会と名前の知れない木製の山名板のたった2つだけが三角点の標石に寄り添って立っている。
ところで、当初は山頂でお楽しみの昼食をと思っていたのだが、狭い山頂ではあまり気分がわかない。それにまだそれほど空腹でもなかった。
そこで、山頂を後にして兵庫山へと続く稜線を南西に向かった。
山頂からなだらかに県境を辿ると5分足らずで雰囲気のよい平坦なブナ林に出る。ここは休憩や食事に最適な場所とも思ったが、私はこの際一気に林道まで下って昼食にする方を選択した。
さて、ここで道は二手に分かれる。
一方は南に明瞭な踏み跡をたどり兵庫山へ、他方は西へと赤テープや踏み跡を追いかけて林道終点に向かう。
山頂から西に4分、なだらかな尾根で県境を離れる。なお、画面中央のササの中に見える道は兵庫山へと向かっている。
あらためて地図で林道終点辺りの標高と下るべき方向を確かめて県境の稜線を離れ、ササの生い茂る中、赤いテープや踏み跡を追いかけながら尾根を忠実に下ってゆく。
下るにつれて植生が変わりモミの木が目立ち始める。
標高差100mほど下ると尾根の右手がなだらかになって後、辺りにマツやアセビが目立ちはじめると、やがてヤセ尾根に変わり、尾根の端に出る。
地図によれば尾根の北側70〜80m下方には林道が走っているはずなのだがまだ確認はできない。
中央の木の枝に赤いテープが見える。そんな目印や踏み跡と地図を頼りに林道に向かう。
地図を頼りに、ここからは方向をやや北に転じて、樹間から覗く二ツ岳を目標に急下降する。
(足元をよく観察すると踏み跡を見出すことができるであろうし、注意して見渡せば赤いテープなども目に入るだろう。)
3分ほどで急斜面を下ってヒメシャラの木の傍に赤いプラスチックの標柱が打ち込まれているのを見つければ林道はもう目の前である。
尾根の右手は植林帯で、左手は急な斜面になっている。その植林の縁を尾根に沿ってなだらかに下れば、植林が切れて前方にカヤ原が現れる。それと同時に右手下方に林道が見えてくる。
尾根を下ってきたら正面にカヤの原っぱが見えてきて、右下に林道のカーブが見えてひと安心する。正面奥のピークは、下山の際終始目標にしてきた二ツ岳。
植林とカヤ原の境界を林道に向けて下ると、県境の稜線を離れてから20分あまりで、林道が右に大きくカーブする辺りに降り立つことができる。
下山した場所の近くには「水源かんよう保安林」の黄色い看板が立っており、山手にそれらしい踏み跡がある。
もちろん、こちらから逆に辿れば玉取山への最短コースになる訳で、ゆっくり歩いても1時間もあれば登頂できるであろう。また、降り立った林道はすぐ近くが広くなっていて、こちらから逆に登る時には乗用車3台程度は駐車可能であろう。
なお、林道に下りた後は東に向かい登山起点とした林道分岐まで引き返す。
途中には大一運送の作業小屋や水場があり、およそ25分で林道分岐に帰ることができる。
林道の下山地点(右回りのヘアピン付近)。こちらから登るには、適当な踏み跡から正面の尾根に取り付き、画面左へと尾根を登って行く。
ところで、少々遅くなった昼食は、林道に腰を下ろして赤星山を遠望しながらいただくことにした。
晩秋の山は厚い霜が降りるほど冷え込んできたとはいえそれは朝晩のこと、日中は風さえ無ければ意外に暖かい。大好きな日高昆布のおむすびを頬張りながら、そんな穏やかな季節の移ろいにようやく当初の目的を思い出した。そうだった、今年という1年を振り返りながら歩くはずだったのだが、、、。
結局夢中で歩き続けて目の前の山のこと以外考えることはできなかった。
私の日常なんて案外こんなものかも知れない。そして、案外こんな事で良いのかも知れない。
そんな自分に愉快になりながら高く澄んだ空を見上げ、ひと息ついてからまたおむすびを頬張った。
*全行程の私の所要時間(コースタイム)は以下の通り。
【往路】
登山起点(林道分岐)<2分>カツラの巨木<21分>林道終点<3分>猿田峠<15分>504番の山界標柱<16分>1274mのピーク<44分>玉取山山頂
【復路】
玉取山山頂<4分>稜線分岐<25分>林道<11分>大一運送作業小屋<13分>登山起点(林道分岐)
備考
稜線上に水場はありませんが、林道では大一運送の作業小屋の近くに水場があります。
林道の下山地点から10分ほどの林道の路肩側に「大一運送(株)社有林約六拾町歩」の石碑と比較的新しい作業小屋が有り、その近くの山手に湧き水が出ています。青いポリ管の樋が設えられているので林道から容易に確認できます。
現時点での携帯電話による通話は困難です。
文中で紹介したカツラとイタヤカエデの幹周や樹高、推定樹齢などは環境庁編「日本の巨樹・巨木林(全国版と中国四国版)」などの資料を参考に致しました。したがいまして現地に立てられている伊予三島市教育委員会の看板とは大きく違う記述もあります。例えばイタヤカエデの推定樹齢は文中では250年を採用いたしましたが、現地の看板には1000年とあります。このあたりは、記述の正否をつきつめるよりも、その違いを現地で確かめる楽しさをお持ちいただければと思います。
最後に、天然記念物「玉取山の大カツラ」にまつわる「ごぜんの森の姉妹の話」を記述するにあたり、巨木などの樹木について四国を代表するホームページ「四国の巨樹・銘木」の管理人「YASUSI」さんに大変お世話になりました。ここにその素晴らしいHPのアドレスを記し、改めて感謝の意を表します。
「四国の巨樹・銘木」
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/bigtree/