戸中山 2000年6月4日
*2004年10月29日、高知市の松本さんの協力をいただいて「ルート案内図」を修正いたしました。
*紹介文中の写真にマムシの画像があります(3ページ4枚目)、嫌いな方は注意してください。
なお、関連して「毒蛇の咬傷について」の記事(協力:岸野達志氏)をこのページと3ページ目にリンクさせてあります。
今回の山行きは久しぶりの単独行である、このところ友達と一緒の山行きが続いていたのでちょっと寂しい気もするが、それはそれで新鮮でもある。
あえて梅雨時は不適だと指摘された山に、この時期登ってみようと思ったときから単独行は覚悟していた。
鮎漁が解禁になり、仁淀川(によどがわ)の瀬にはたくさんの釣り人が竿を並べている。そんな初夏の風景を横目(左手)に、紙の町「伊野町(いのちょう)」から「吾北村(ごほくむら)」へと入る。
吾北村の役場を過ぎると、やがて、正面(北)に巨大な屏風のごとき岩壁が現れる。清水構造帯と呼ばれるこの岩壁は東西4Kにもおよび、そこに流れ落ちる滝は吾北村観光のメインでもある。
これから向かおうとする戸中山はその滝の遙か上流にあり、人を拒むようにそそり立つその岩壁を越えなければたどり着くことは出来ない。だからこそ、闘志?(元気)もわくのかも知れない。
これから登ろうとする戸中山は、登山道で展望の開ける箇所も限られ、尾根に出てからはスズタケにも苦労はするが、尾根までの踏み跡は比較的しっかりしており、全体に急な登りは多いが、単独行なら尚更静かな山歩きの約束できる山でもある。
さて、国道194号線を高知市と西条市のほぼ中間まで来ると、東側に「グリーンパーク程野(ほどの)」の入り口が見える。ここから林道「程野黒丸線」を3.5Kほど行くと、轟橋の手前に左に折り返す道があり、「程野の滝」の案内板やトイレが設置してある。ここは、「程野の滝」(断崖を流れ落ちる4本の滝の総称で「吾北のナイアガラ」)と呼ばれる一帯でも、そのメインとなる「西滝」に向かう遊歩道の入り口である。
ここで轟橋の手前を左に登り返し、舗装された道を更に約1.2K、終点まで行き詰める。終点には西滝への遊歩道の看板がある。
マイカーはここに、Uターンする車の邪魔にならないように駐車する。なお、駐車は普通車3〜4台が精一杯なので、満車の時は下方に数カ所ある道路脇の広場を利用させてもらうと良いでしょう。
さて、遊歩道の看板は無視し「西滝見物」は帰途にして、地元の人の勧める道を辿り、往時の足跡を踏むことにした。
なお、ここで辿るルートは、私の手元で唯一「戸中山」を紹介したガイドブック(山と渓谷社刊「高知県の山」)に紹介されているルートとは、いくぶん異なるので、実際に登られる折には充分注意してください!
(念のため、ここでのコースは戸中山トップページにルート図として添えてあります)
なお、少し分かり難いかも知れない登山道については、不安ならば、すぐそばにある民家の老夫婦に訊ねると良いでしょう。とても懇切丁寧に教えてもらえるはずで、私もそのご夫婦のお世話になった。また、その付近の民家の人も同様に親切な対応をしてくださいます。
登山口。特に指標は無い。左上に最奥の民家がある。
登山口は、駐車した終点からほんの少し後戻りして、最初のカーブにある。標高は約600m。
ここには真っ直ぐに山手へと登る道がある。
登山口からほんの数歩で看板があり、真っ直ぐへは「西滝へ0.48km、東滝滝つぼへ1.32km」と記され、右へは「東滝滝つぼへ1.40km、水車小屋へ0.40km」と記されている。ここは真っ直ぐに登り、民家の手入れされた畑を抜けると、またすぐ指標に出会う。
「東滝西滝」と書かれた指標は、左右逆なのが「愛嬌」だろうか?、左手には先ほどの民家が見える。ここは当然右に行き、小さな谷沿いに登って行く。
登山口から5分あまりで、東滝から西滝をめぐる下の遊歩道に出る。ここで出会う指標(西滝へ0.38km、東滝滝つぼへ1.22km)では左に行く。植林の中に石畳様の道が延びている。
西滝展望所より登山口付近の集落を見下ろす。右手対岸の山には植樹祭の名残が認められる。
遊歩道を西に歩けば、またすぐに指標に出会う。「西滝へ0.27km、水車小屋へ0.61km」とある指標からは、遊歩道を山手に逸れて登る。
約5分後、上の遊歩道に出ると、ここにも指標がある。「西滝、東滝」と書かれた指標にはよく見るとマジックで戸中山への案内が書かれている。しかし、親切で書いてくれたとは思うのだが、矢印が無く一瞬とまどってしまう。書かれた案内の意図せんとするところは、ここから西(左)にむかい、西滝の上へと出て戸中山に向かうコースを指しているようだ。
ところで、私は、ここから地元の人の指示通り右手(東)へと進み、10mほど進んで、再び出会う指標(「東滝へ0.78km、西滝へ0.27km、権現滝、大樽の滝」と書かれている)で左手(山手)への坂道に逸れた(ここまで、登山口から10分あまり)。標高約700m
なお、赤滝から遊歩道を辿られた方でも、私と同じコースを辿られるなら、この指標を目印にしていただければ良いでしょう。ここで踏み入れる登山道の入り口には倒れた木が道をふさいでいるが、かえってそれが目印になる。
看板の元は遊歩道、左奥に倒れた木をまたいで山手へと踏み入れる。
ここからはヒノキやスギの植林の中を急な登り坂が続く。濡れた滑りやすい石に注意して急登をゆく。
岩壁の上に出るために辛抱の登りが続くのはやむをえないことだが、蒸し暑い梅雨時で、滝のように汗が吹き出るのには難儀する。とても一息に登りきるには辛いと思う頃、急登の途中で少しだけ展望の開ける場所があり、目の眩む高度感を確かめながら小休止できたのはせめてもの救いだった。
汗を拭いて、大岩の断崖を左手にしながら、なおも坂を登れば、標高差約90m(歩行約10分)を登り切ってようやく断崖の上の分岐に出る。
ここでは左へと西滝の上部を目指す(右は東の尾根筋へと向かっている)。
先ほどの急登が嘘のように快適な登山道をほぼ水平に西へと進む。
「蜘蛛の巣」が今日はまだ人の往来の無いことと、本日の天気予報をしてくれている。ありがたいことなのだが、払わないと歩けない、、、この辺りでの苦労と言えば唯一そのくらいである。
左に白い泡立ちは、清冽な渓の流れ。登山道は朽ちた木の橋に出会う。ここは注意して右側山手をまく。
やがて谷音が近くなり、西滝上部の谷(山伏谷=やまぶしだに)と登山道が並行すると、朽ちかけた木の橋に出会う。この木橋、痩せた私なら大丈夫かなとも思うが、梅雨時で湿ってもおり、大事をとって山手をまいた。
橋を過ぎるとすぐに山伏谷の最初の渡渉点である。ここまで登山口から約25分。
ここには小さな滝もあり、心和む渓谷美は休憩にうってつけの場所である。
顔の汗を洗い落とし、手ですくって谷の水を口に含むと、不思議なエネルギーが身体に滲みわたる。じっとしていてさえ汗の噴き出る梅雨の最中、蒸し暑い中の急登で消耗した体力は、こんな景色やひとときで救われるから不思議でもある。
なお、この渡渉点は増水したら渡りにくいので注意して欲しい。
渡渉点にある小さな滝。渡渉点の水深は浅いが谷幅は比較的広い。平常時なら登山靴を濡らすほどでもない。