谷の水で元気を取り戻したら、谷を対岸(右岸)に渡って進むと、植林の切れ目で対岸の断崖に赤いツツジが美しい。右手へと移った谷の流れからやや離れて登ると、3分程度で「水源かん養保安林」の看板に出会う。ここで左からの道と合流する。
看板の現在地の印は風雪で消えているが、下に戸中山右への矢印がある。ここはまっすぐに右へと谷の上流を目指す。(なお、ここで左から合流する道は「高知県の山(山と渓谷社)」で紹介されているルートだと思われるが確認はしていませんので、詳しい方の情報をお待ちします。)


水源かん養保安林の看板がある分岐。あたりにはアセビが目立つ。

「水源かん養保安林」の看板からは、両脇に馬酔木の群落を抜けて、約3分でまたも分岐に出会う。しかし、ここでは、左に登る道も右に渓へと向かう道も無視してまっすぐに行く。
ここまで、目立った指標もないが、とにかく山伏谷沿いに登る道を選べば間違いはない。


登山道と山伏谷が合流するあたり。ここより、登山道は渓と同化する。清い流れは滑床を勢い良く滑り落ちる

「水源かん養保安林」の看板から5分ほどで道は渓と合流し、滑床を勢い良く滑り落ちる流れの脇を遡上する。
最初は谷の左手(右岸)を行き、やがて中央に渡り、渓が二手に分かれるところでは、両谷にはさまれた山手へと進むことになる。
ここでは、登山道は山伏谷と同化するので、注意して要所要所の赤いテープを辿らないと迷ってしまうかも知れない。ここで気にとめておいて欲しいのは、渓が2股に別れたら、その中央の陸地にとりつくこと。

さて、谷歩きを終えて山道に戻ると、最初は右の谷沿い進んで行く。
植林で相変わらず展望の利かない道を登って行くと、スギの植林の中でササが目立ちはじめる。ひととき松などの自然林へと入るも、ここも一瞬だけで、すぐに植林になる。
やがて、道は右の渓を離れ、左の渓に近づくと、正面に大岩、右手にスズタケで行く手を遮られるが、ちゃんと左手に谷へと向かうしっかりとした踏み跡が見つかる。ここまで、「水源かん養保安林」の看板からは約15分の道のりである。
ここで再び渓を渡る(第2の渡渉点)。一応ここは最後の水場と考え、水筒を満たしておきたい場所である。



第2の渡渉点、小さな流れを横切る。対岸に赤いテープが認められる。苔むした岩では転倒に気をつけたい。

渓を渡ると、今度は右手に谷音を聞きながらスギの植林を登ることになる。
不意に山肌で大きな羽音がしてヤマドリが飛び立った。長い尾をなびかせて飛んで行くヤマドリはカメラに収まる前に姿を消した。

赤滝の上流ではあれほど水量豊かだった流れも、次第に細く小さな流れとなるにつれ、登山道の傾斜も増してゆく。植林のかすかな隙間からは右手に目指す戸中山の山頂がちらほら見える。
シロモジの群落を抜け、フタリシズカやナルコユリが足元に咲く道を進み、ついに渓からまったく離れて尾根に向かう頃には谷の流れも雫となる。
山伏谷の源流と別れて左手に登りだすと、急坂を一気に、尾根へと出る。尾根のコルまでは、第一の渡渉点から約40分ほど、登山口からは約70分あまりである。

展望の良くない尾根に出てからは、ここを右(東)に戸中山を目指す。

尾根を東にすぐの分岐(気がつかないかも知れない)は忠実に尾根を辿る。なお、この分岐で左への踏み跡は本川村戸中への往還の道であろう。
さて、ここからの尾根歩きは、そのほとんどがスズタケに覆われているが、それでも、かつてのNTT反射板の跡地まではササが刈り払われて比較的歩き易い。
戸中山への尾根沿いにはイタヤメイゲツなどのカエデ類や、山頂近くにはブナの林などがあり、スズタケに覆われていなければ素晴らしい尾根歩きだろうと至極残念ではあるが、ともあれ、尾根に出てから10分足らずでNTT反射板のあった広場に着いた。


NTT反射板跡地の広場、唯一展望の開ける場所でもある。戸中山山頂へは正面の林へと入ってゆくことになる。

NTT反射板跡地の広場は、このルートで唯一展望の開ける場所なので、ここからはたっぷりとその展望を楽しんだ。特に、北から西への眺望が素晴らしく、正面の長沢山山塊を境に、右手(北方面)に平家平・冠山(大橋ダムの彼方)、左手(西方面)には長沢ダム湖の向こうに吉野川源流の山並みが広がる。


大橋ダム湖の向こうのなだらかな稜線は平家平。肉眼ならその雄大な笹原もしっかりと確認できる。