アップダウンを繰り返しながら辿った縦走路も間もなくクライマックスにさしかかる。
東笹林道への分岐から約33分、ササ原にヒノキの風衝木を眺めながら、また更に5分ほどササ原の急坂を登って行くと山頂はもう目の前である。

頭上から降りそそぐ陽射しに額の汗をぬぐいながら歩を進める。


まるで砂丘のようなササ原を縫って、山頂はもう目の前に。

登山口から良く整備された縦走路を約130分、ほぼ予定通りの歩行時間で辿り着いた山頂には雄大な展望が待っていた。
北に屏風のように連なる三嶺山系の美しい連山はもとより、眼前の白髪山や口西山、その向こうの中東山や石立山そして剣山。
西には土佐矢筈山の向こうに小檜曽山、梶ケ森、更に御在所山や眼下に広がる物部村の風景も美しく、ぐるり360度お馴染みの山たちが私たちを出迎えてくれる。


綱附森山頂。後方のやまなみは、左から天狗塚、イザリ峠、西熊山、三嶺。

さて、私たちは2等三角点の標石と山名板のある山頂から少し北に離れて昼食をとることにする。
先着のパーティーの美味しそうな手作りのお弁当に負けじとザックの荷をほどくが、相変わらずのコンビニ弁当がちょっと淋しい。それでも、こんな風景の中で腰を下ろせば口に運ぶものは何でも美味しい。


山頂から北に延びる縦走路と三嶺山塊の展望。光石登山口からだとこちらから上がってくることになる。

昼食をとっていると光石からも2組ほど登山者が登ってきた。
それでも、この晴れ渡った日曜日にして5組12人は少ない方であろう。山頂はまだまだ広々としていた。


昼食を終え、美しいササ原をゆっくりと下山する。中央向こうは土佐矢筈山。

ところで、のんびりと下山する途中、林の中で足元にいくつもの「オトシブミ」を見つけた。
私にとっては久しぶりの「便り」である。かつて甚吉森への登山道で出会って以来のことだった。
きちんとたたまれた木の葉を手のひらでころころと転がせながら、ここにも大自然と共に生きる小さな命を見つけてうれしくなった。


登山道に落ちていたオトシブミ。木の葉がきれいにたたまれている。この中に、オトシブミ(甲虫)の小さな小さな卵が産み落とされている。


*全行程の私たちの所要時間(コースタイム)は以下の通り。
【往路】
登山口<56分>1421mのピーク<21分>東笹林道への分岐<53分>綱附森山頂

【復路】
綱附森山頂<48分>東笹林道への分岐<21分>1421mのピーク<37分>登山口


備考

この日の帰途、私たちは土佐矢筈山に登っていた杉村さんと待ち合わせ、有名な「笹温泉(笹渓谷温泉)」に立ち寄った。
杉の湯船に湯ノ花が浮かぶ温泉に浸かり、笹渓谷を眺めれば、自然疲れも癒される。
湯に浸かっていると懐かしい知人から声を掛けられた。彼はこの日三嶺に登っていたとのこと。ひとしきり近況報告と山の話に花を咲かせる。汗を流し充実感に浸りながらの山談義は、湯にのぼせながらも楽しいものだった。

また、矢筈峠に向かう林道の、最奥の集落「笹上」には「普賢堂」がある。
静寂な森の中に建つお堂は、応永2年に普賢菩薩を捧持したことから「普賢堂」と呼ばれ、南路誌には宝永5年建立とある。時間が有れば立ち寄ってみるのも良いでしょう。


矢筈峠の南の山腹にある、笹の「普賢堂」


「やまとの部屋」トップページへ