さて、第1の水場である小谷を渡り、相変わらずの植林をなだらかに進んで行くと、足元にはフタリシズカの花が咲き始めている。谷に沿い緩やかに登る道には炭焼きの跡が多く、雑木を伐採し木炭にした後で植林をしたものであろう、30年足らずの若い植林が立ち並んでいる。
しばらく行くと、所々に立派な石垣だけが残る水田跡を過ぎ右へと下る道と出会うが、ここも道なりに真っ直ぐと前方を目指す。


谷沿いの植林の中をなだらかに登って行く。登山道には杉の葉がびっしりと降り積もっている。


やがて道は右手の谷に近づき、ゴロゴロした大岩が美しい渓谷を演出して、眺めれば飽きのこない登りになる。
第1の水場である小谷から15分あまり、辻越えの道が小さな崩壊をした箇所では踏み跡通りに右手に迂回し上方に出る。
辺りではクロモジやミツマタの花が変化に乏しい山歩きを慰めてくれる。

登山口からおよそ50分、谷沿いの道は道標のある分岐(三叉路)に出会い、ここからは辻越えの旧道を分かれていよいよつつじが森登山道に踏み入れる。分岐の右手には雰囲気の良い岩場があり、ミツバツツジの咲く渓谷の岩場に登り谷川へと身を乗り出せば、谷沿いに残された自然に心が和む。また、谷の下流に向けて目をやれば、南遙かにわずかながら展望も開けている。
休憩には最良の岩場でザックを下ろし汗をぬぐう。今が旬のイタドリ(イタズリとも言う)を清音とともに折り取り、皮を剥いて少し頬張ると懐かしい春の味がした。


辻越えの往還道とつつじが森への登山道の分岐にある岩場にて。ツツジなどの渓谷美と南の展望が美しい。

さて、休憩後は足元にある木の標識通りに分岐を右へと下って行く。
(なお、この三叉路を左手へと登って行く道は、土佐町石原に越していた辻越えの往還道で、私たちは帰途にここへと降りてくることになる。)

登山道は分岐からすぐに渓谷を対岸へと渡る。対岸には赤いテープの目印がある。
この水量豊かな渓谷が最後の水場になるので、不安ならば水筒を潤しておきたい。


穴川川の源流部を徒渉する。対岸にある赤いテープからは右へと向かう。

谷を対岸に渡るとすぐの二股は右へと進んで行く。ふと見ると、左手には立派な作業小屋が見えている。この作業小屋、かつて山頂にあった反射板の設置作業の際、たくさんの従業員がここに寝泊まりをして作業に従事していたという。

谷を渡ってからしばらくは植林の中をなだらかに進んで行くが、やがて枯れ谷を越える辺りから傾斜が徐々に増してゆき、ついには上方の尾根に向かっての直登になる。ここからはY子さんを気遣って若干ペースダウンはするが、しかし休まないで一歩一歩確実に足を前に出して真っ直ぐに上方の尾根を目指し、辛抱強く標高を稼いでゆく。


植林の中を、尾根に向かって急坂が続く。

谷を渡ってから20分後、息を切らせてようやく尾根に出るが、辺りは植林に囲まれ眺望はきかない。
それでも、土佐山村側には雑木林が多く、木々の間からかすかに工石山方面が透けている。
さて、ここで休憩中に私と浜田さんは右手(南側)のピーク(912m)を散策に出かけた。西雑木、東植林の中、村界の尾根を歩いて南へと行くと、ミヤマシキビの白い花がところどころに、またシコクブシも蕾をつけ始めている。南へと尾根を忠実に辿って912mのピークに登るが、ここも樹木で展望は望めない。かすかに明るい2次林から土佐山のやまなみが見て取れる程度で、特筆すべきものは無く、ただちに尾根まで引き返した。(912mのピークまで往復の所要時間は約10分)
なお、この南への尾根道は土佐山村中切から延びてきた林道へと下る道である。


鏡村と土佐山村の境界尾根でひと休み。

さて、休憩後に尾根を出発すると、いきなりの急登だが、小休止で元気を取り戻した身体には思ったほどの苦はなく、躊躇することと言えば落花した椿の赤い花が登山道を埋めており、踏み込むのを少しためらわされるくらいのことである。

ほどなくなだらかになり、右手の照葉樹林にはアセビの古木が目立ち、花を終えたアセビは美しい赤色の新梢を伸ばしている。
やがて再び急坂になり、国土調査用(地籍調査用)のプラスチック杭や山林標石を追って登る。


尾根を辿りつつじが森を目指す。

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