〜養護教諭と生徒たち〜


@保健室といえば…
 その昔、保健室とは「時おり、けがや病気・体調不良になった生徒が、その体を一時的に癒しにくるところ」でした。が、今はそのようなところではすまないことは、すでに学校の先生ではなくても知るところとなっています。悪く言えば、「怠学生徒の溜まり場」であり、また、「不登校児が集団社会に復帰するためのワンステップの場」、「いじめ解決相談所」でもあります。そんな中で孤軍奮闘する保健の先生…。今回は、生徒指導の最前線に立つ勇敢な保健の先生(特に中学校を例にとってみました♪)にスポットを当ててみましょう!
A保健室は「聖域」!?
 「先生! ちょっと調子悪いから、保健室行ってくるわ〜…」、「あ、おれも〜!…」…なだれのように、そして堂々と保健室になだれ込む生徒たち…。よほど落ち着いた学校でない限り、現在の中学校ではどこでも見られる光景です。もちろん教科担当の先生や担任は、説得して学級の学習の場所に戻るように指導します。しかし、いかんせん、本当に体調の悪い生徒に戻るように指示することは「体罰」にあたるということを、今や生徒たち本人も知っています。そんな怠学生徒たちにとって保健室とは、まさに「聖域」です。戦争に例えると、絶対攻撃してはいけない「赤十字」の看板を掲げた部屋…といったところでしょうか。冷暖房が完備され、ベッドつき…。誰だって、受けたくない授業のときはそんな部屋で落ち着きたいと思うでしょう。が、この状態では本当の急患生徒を受け入れる体制とはいえません。しかも、この手の生徒はなぜか(←もちろん、しめし合わせている生徒もいますが…)一気に、しかも同時に保健室に現れます。さて、この状態を改善する策として、どのような手があるのでしょうか?
B徹底的なルール作り!
 一番よくとられている方法が、保健室利用に厳しいルールを設けることです。例えば、「1日のうち1時間以上利用したい人は、『完全な体調不良』ということで、強制的に帰宅してもらう」などという方法です。おそらく保健室の理想的な運営からいってもこの方法が一番効果的でしょう。ま、この手で保健室から追い出された生徒は、大概帰宅はぜずに、今度は別の溜まり場を捜し求める生徒が多いようですが…。それにしても、保健室の先生がたは大変です。普段、生徒指導を担当するいわゆる「恐そ〜な先生」が、束になって相手にする生徒たちを、一人で何人も一気に相手にするわけですから…。いや、どこの学校でも中学校の保健の先生はホントにえらいです。時々学校によっては、「いいな〜保健の先生は授業がなくて…」な〜んて、うらやましがっている先生がいるようですが…。保健の先生が楽してるように見える学校は、それはきっとまだまだ「平和な学校」だという象徴なのかもしれませんね。
C保健の先生は全教科担当教員!
 保健の先生が困っているのは、怠学生徒に限ったことではありません。実はそれ以上に大変かもしれないという「不登校児対策」の問題があります。担任の先生が何度も家庭訪問に足を運んで、ようやく「保健室でいいんなら、明日からちょっと登校してみようかな〜」という気を起こさせて、やっとの思いで登校までこぎつけた不登校児。保健室の先生は、このような生徒を学級に入れるまで何とか指導するという大役も担っているのです。その中でも特に大変なのが、学習指導。どのくらい前から不登校となっているかで、学習の習熟度はまったく違います。そんな生徒の学力を把握して、その生徒が学校にいる間の全教科の学習指導を一手に引き受けている保健の先生は数多くいるのです。もちろん、不登校児のメンタル的指導はもっと大変かもしれません。時には誉め、時には叱り…家庭教師と親の2役を演じながら、休むまもなく働く保健の先生…。時には、失敗して再び不登校になるというケースもあるでしょう。また、「私も元気で健康な、問題のない生徒を相手にしてみたいな〜…」と思うこともあるでしょう。…まわりの先生や保護者の皆さん、そんながんばる養護教諭をしっかり支えてあげましょうね。
D生徒の体調診断は…
 さて今度は、保健の先生の本来の仕事についてです。保健の先生の主な仕事として「生徒の病状をみて、授業受講の続行か早退を判断する」というものが挙げられます。しかし、保健の先生といえども医者ではないので、困ってしまうこともあります。特に大変なのが、冬のインフルエンザシーズン。大量の生徒が咳き込みながら「先生、体温測らして!」と保健室に殺到。熱はないのに、せきがすごい大量の生徒を目の前にして「も〜、全員早退しなさい!」って、言いたくなることもあるでしょう。しかし、この状況、何も保健室に限ったことではないのです。次にこれについて、ちょっと触れてみることにしましょう!
E皆勤賞の秘密
 実は近年、冬のインフルエンザシーズンに、病院でもこのように体調不良を訴えて生徒が殺到します。しかし、その中には明らかにインフルエンザとは違うかぜの症状の生徒もいるのです。もちろん、かぜで病院にいくだけなら何も問題はないのです。しかし、近年のインフルエンザ大流行のせいで、医者の中にはインフルエンザかどうかわからないのに「インフルエンザです」と診断してしまう人もいるのです。実は、ここに大きな問題があります。学校においてインフルエンザは、「欠席」ではなく「出席停止」の扱いになるのです。出席停止…つまり「学校にきてはいけません!」という扱いなので、欠席にはならないのです。つまり、インフルエンザなら何度かかっても欠席にはならず、それ以外で休みがなければ、学校卒業時に「皆勤賞」がもらえるということになるのです! この「皆勤賞」という制度、特に都会の学校では近年になって進学にかかわる内申点に、教科の成績以上に大きな影響を与える一要因となってしまっています。また、このようにインフルエンザでない人が大量にインフルエンザと診断されることで、マスコミで発表される「インフルエンザ感染者」がますます増えてしまっていることにもなります。さて、このインフルエンザと皆勤賞の問題…今後、大問題にならなければいいんですけどね…。

F保健室は、学校を映し出す「鏡」
 さて今回は、保健の先生からインフルエンザの話まで、さまざまな話題を取り上げました。ま、学校といえばクラスがあって、生徒がいて…そして特別教室や保健室があって…と、保健室は、あまり学校の主役として取り上げられることはありません。が、このコラムのタイトルにつけたように、今や保健室は「学校の顔」といっても過言ではないのです。1日の保健室の状況を調べれば、学校の全体像が見える! そんなことをいっていたある先輩教師もいました。心と体の健康な生徒作りを目指すために、そして保健室の利用が少しでも少なくなるように、養護教諭だけでなくすべての先生方が協力してがんばっていけるといいですね♪

(※特にこのコラムをお読みの学校関係者以外の方、ぜひ感想を送ってください!)