〜臨採教師を取り巻く現状〜


@臨採教師とは
 臨採教師とは、「教師の中で産休を取ったり、長期研修に出る人の代わりに臨時で教師を採用しちゃおう」というものです。まあ、分かりやすく言えば「アルバイト的な先生」といったところでしょう。しかし、臨時とはいっても仕事や給料は本物の先生(以下、本採用教員)と変わりがないので、生徒や保護者には全く区別はつきません。このような教師は地域にもよりますが、各学校に1〜2人ぐらいずついます。ただし、あくまで臨時ですので、もとの教員が戻ってきた時点で解雇ということになります。
A欠員補充
 また、臨採教師の中には毎年4月の段階で学校に教員の欠員が出た場合、1年間雇うことになる欠員補充の臨時採用というものもあります。例えば3月30日にある学校に転校生が何人かやってきて、急に翌年度からのクラスが増えて教員を増やさなければならなくなったときなどがこれに当たります。わたくし自身もこのような臨採教師として、勤めた経験があります。実際のところ、臨採教師の半数以上の人がこの形態で雇われています。
Bどうして本採用教員になれないの?
 臨採教師はあくまで臨時ですので、勤め先の学校が1年ぐらいでコロコロ変わります。運が悪いと臨採教師の要請がない年もあり、「今年は1年間プー太郎か…」ということだってあります。では、臨採教師はなぜ本採用教員になれないのでしょうか。
 実は、教員になるには「教員採用試験」というものを受けて合格しなければなりません。そして、この試験が少子化と地方自治体の財政難により近年とんでもない倍率になっているのです。地域差もありますが、30倍からすごいところでは100倍という都道府県もあります。そんな試験ですから、当然試験勉強もしなければなりません。が、臨採教師は毎日の教員としての仕事で手一杯であり、勉強をする余裕は全くないといっても過言ではありません。ここが、臨採教師の最もつらいところなのです…。
C何歳まで続ける?
 現在、教員になるためのいわゆる「教採浪人」は5浪6浪が当たり前の世界です。では、みんな一体何歳ぐらいまでこうした生活を続けるつもりなのでしょうか? 「教師になるのが夢だったんだから、一生臨採で続けてやる!」と、考える人もいるかもしれませんが、現実はそれほど甘くはありません。臨採教師だって一応公務員ですから、年配の人には自治体もそれなりの高い給料を払わなくてはなりません。「じゃあ、同じ臨採教師を雇うんだったら若い人を雇った方が安くすむからいいに決まってるじゃないか!…」ということになります。つまり、年齢が増すほど臨採の要請はきづらくなるというわけです。しかも、女性の臨採教師ならまだよいとして、男性の臨採教師は臨時のままではまず結婚できません。また、あきらめて進路変更したとしても30歳を超えてからでは今の世の中、就職は相当難しいと考えなければなりません。臨採教師はどこで見切りをつけるかということにも、いつも悩みつづけているのです。
Dもっと本採用教員の数を増やせばいいじゃないか!
 誰もが考える解決策です。教師を増やして1クラスの子供の数を減らせば、教師も楽になって個性豊かないい教育ができる…確かにそうです。しかし、現実はそう簡単にはいきません。まず、財政上の問題です。皆さん、中学三年生のとき地方自治について勉強したと思います。そのとき、どこに税金が一番たくさん使われていたかを覚えていますか? 実は税金は「教師の給料」に最も多く使われているのです。はっきり言えば、自治体にとって教師の給料は財政上の最大の重荷なのです。だから、地方自治体は「いかに教師の給料を安くすませるか」「いかに教師を減らすか」ということに必死なのです。そのため、新任教師の採用者数はここ数年で急激に減ってきています。ましてや、教員を増やすことなど夢のまた夢というのが現実なのです。
E教員の平均年齢
 ここ数年、教師の平均年齢が急激に上がっています。それもそのはず。上記したように、教員の採用者数は近年激減しています。しかし自治体は、教師の平均年齢は少しでも下げなければならない…そのために登場するのが、若い「臨採教師」なのです。若いときにだけ雇っておいて、年老いてきたらまた別の若い臨採教師を雇う…しかもこれなら給料も安くすませることができる…こう考えると「地方自治体も必死」、というよりちょっとえげつない感じすらします。そんな扱いを受けながらも、臨採教師は「夢の教師」になるために日々全力で頑張っているのです。
※追加考察記述
F臨採教師の給料はおいくら?(up 99/9/14)
 これは多くの先生方が気にしているところでしょう。特に臨採を経験せずに、いきなり本採用教員になった方はほとんど知らないはずです(教師でない方はもちろんですが…)。今回は臨採教員の給料についてみてみます(ただし、ここでいう臨採教師には特定の曜日にだけ働く『非常勤講師』は含まないこととします)。といっても、実は給料体系は都道府県によって全く違います。ここでは、埼玉県を例にとってお話ししましょう。
G埼玉県における臨採教師の給料体系(up 99/9/14)
 まず、臨採1年目は本採用教員1年目と全く同じ給料です(ボーナスも)。しかし、2年目以降から徐々に差がつきます。臨採10年目で本採用教員7年目と同じ給料になります。そしてもし、臨採を10年やってから教員採用試験に合格して本採用教員になったら、次の年の給料は本採用教員8年目からということになります。ま、臨時ですからこのぐらいの待遇が妥当なところでしょうか、と思うかもしれません。ところが、実は臨採教師には契約が1年ごとだからという理由で、毎年3月に給料とは別に退職金が出るのです(給料の半月分)。つまり、臨採教師は3月に給料・期末手当・退職金の3種類もお金がもらえて、意外といい待遇といえます。臨採教師の経験がなく、塾の講師などで食いつないでいる教採浪人の方は、1度は臨採の登録をしてみてはいかがかな?
(他の都道府県について、臨採教師の給料体系について知っている方は、ぜひメール&掲示板で情報をお寄せ下さい。)