〜生徒の呼び方で教師の印象が変わる!〜


@新しい職場での戸惑い
 大学を出て、はれて教師になった新人教師、長年勤務した学校を離れて異動したばかりの先生…。初めての職場に戸惑うことがたくさんあるでしょう。一概に学校といっても、その様子は学校によりさまざまです。「郷に入らば、郷に従え」…教育実習や前任校での経験が通じないことだってたくさんあります。「今まで自分はこんなことしたことなかったのに…」「あれ? 教育実習とはずいぶん違うな〜」…毎回異動のたびに、先生はそう思うことがあるはずです。今日はそんな話題の一つとして、「生徒の呼び方」を取り上げてみようではないかと思います。ほんとに些細なことと思うかもしれませんが、これが意外に生徒の第一印象に大きくかかわったりもします(特に小・中学校)。さあ、それでは生徒の呼び方についてちょっと考えてみましょう!
A男子には「〜君」、女子には「〜さん」 vs 苗字呼び捨て
 一応、「君さん付け」は児童・生徒の呼び方の基本とされています。生徒が先生のことを「〜先生」と呼び、先生が生徒を「〜君」「〜さん」と呼ぶ…こうして生徒と教師の間にはしっかりとした師弟関係が築き上げられます。呼び方ひとつとっても生徒と教師の間にはしっかりとした一線があり、それを超えちゃいけないんだぞ! というこの雰囲気をしっかりと維持していけば、教師が生徒になめられるという事態は、ある程度は回避可能なはずです。しかし最近、この呼び方ではちょっと不都合が生じるということが多くなってきたようです。
 それは、「君さん付けをしていると、生徒が心を割って話してきてくれない」という事態が起こりつつあるということです。教師も生徒とともに学んでいかなければいけない…と、最近では謳われますが、そのためにはどうしても生徒と同じ視点に立った会話ができる教師を目指さなければなりません。でも「君さん付け」をしていたら、教師と生徒はその距離を詰めていくことができないのです。また、生徒を叱るときも「君さん付け」をしていると、教師側にもちょっと違和感があり、生徒もなんだか他人に文句を言われているようで、親身になって言葉を受け止めようとしない者さえいるようです。さあ、これをお読みの先生…あなたは「君さん」をつける派?…つけない派?…
B名前(苗字じゃないほう)で呼ぶ・ニックネームで呼ぶ
 「千春〜」とか、「康ちゃ〜ん!」とかです…。小学校では名前(苗字じゃないほう→以下、名前)でそのまま呼ぶっていうのはまだ少ないのかな? 中学校・高校ではいまやあたりまえのように呼んでますね。中には、生徒・教師ともにいつも名前で呼んでいるので、とっさに苗字が頭に浮かんでこない生徒すらいることもあります。確かにこうやって呼ぶと、最初は抵抗がありますが、なれてしまえば教師自身も生徒と同じように会話に溶け込めたりして、教師という堅さからちょっと開放された感覚で毎日が生活できます。指導の困難な生徒も少しは話を聞いてくれるようになるかもしれませんしね…。しかし、この呼び方にもちょっとした落とし穴はあります。
 それは、「すべての生徒を名前で呼ぶ教師はほとんどいない」ということです。まあ、よく目立つ生徒やお気に入りの生徒、そして一つのクラスに同じ苗字の生徒がいる場合…こんなところじゃないでしょうか…名前で呼ぶのは。でも、きっとほとんどの生徒は「自分も名前や、『ちゃん付け』でよんでほしいな〜」と、甘え心がどこかにあるものです。すべての生徒を苗字で呼ばない!、という平等に生徒に愛を注げる先生を目指して、「来年はちょっと全員ちゃん付けにしてみようかな〜」と、考えてみてはいかがでしょうか?…
C年度途中で呼び方を変更する
 新学期から2ヶ月くらいは「〜君」って呼んでたのに、急に呼び捨てにする…こんな先生も多いことでしょう。でも先生、こういうときのタイミングってすっごく難しいんですよね〜。なんか、恋人を「〜さん」付けから名前呼び捨てにするときのようで…。こんな感覚、教師なら1度は体験したことがあるんじゃないでしょうか。そのとき生徒はどう感じるんだろう?って…。でも最近の子供は、これに関しては昔ほど抵抗を示さないような気がします。ま、名前の呼び捨てから急に「君さん付け」をするような、逆の変更はちょっと生徒が堪えるので控えたほうがよいと思いますが…。こうしてきっと生徒との壁が崩れていくんだ! って、自分は思います。でも、そのタイミングを失わないように、生徒の活動を毎日しっかりと見守っていきましょうね。
D学校の方針と自分の呼び方が合わない
 学校の方針では「君さん付け」をしないといけないのでみんなちゃんとつけているが、異動してきたばかりで「ど〜してもそれができない…」。そんな先生、きっとたくさんいると思います。この場合、どっちがいいともいえませんが、自分だけ呼び捨てや名前で呼ぶことで生徒が引いちゃって、逆効果になってしまうことが多いと思いますので、やっぱり教師の意思統一を図っていくとよろしいのではないかと私は考えます(最低でも学年内では統一しましょうね)。いや〜、こう考えると「生徒の呼び方」なんて、こんな些細なことが結構気になるもんなんですよね。やっぱり名前って大事だな〜っと、思いにふける私でありました…。
E同姓同名の生徒が同じ学年内に2人以上いた場合
 こんな経験のある先生、いらっしゃいますか? 私が小学生の頃、実はいました。しかもすごいことに、漢字もまったく同じなのです。もちろん学校の配慮から同じクラスにはなりませんでした。二人のうち一人は苗字で、そしてもう一人は名前のほうで「ひろちゃん」と呼ばれていました(実名はちょっと出せないのですいません…)。ま、これで慣れちゃえばどうってことないんですが、本人たちはどう思ってたんだろうな〜と、今でもちょっと気になります。これと似たような経験のある方、ぜひご意見聞かせてくださいね…。
F男女ともに「〜さん」をつける
 最近一部の小学校で、低学年から児童にこの習慣付けしようとしているところがあるようです(私は中学校教師なので、ちょっと詳しい実情はわからない…)。男子も「〜さん」をつける…ま、要するに男女差別を減らしていこうとする試みの一環ですね。仲のよい人同士は、呼び捨てでもいいようですけど…これが完全に実施されれば、なんか大人っぽい社会が生まれるような気がしないでもないですが…。でもこの習慣は、数校の小学校の卒業生が同じ中学校に通うような地域では、まず無意味です。実際、私が去年いた中学校の学区にある小学校の卒業生が、中学校に入学して来たときに、2ヶ月足らずでほとんどの生徒が男子の「〜さん」付けをやめてしまいました。結局生徒にとっては、呼び方の強制をすることは、人と人の間に壁を作ってしまうことになるのかもしれませんね。