均しく、立つ。
均体は、バランスよく立つための工夫。
静体が実現されれば、自ずからバランス感覚は目覚めるに違いありません。その感覚を、もう一歩進めるための方法です。
1.骨盤で脚を動かす。(静体第二段階)
前段の「静体」は、体重感覚を目覚めさせることで、脚外側の筋肉を緩められる状態を作りましたが、体重感覚がでてきたら、次は骨盤を使って、より楽に骨にのる工夫もお奨め。
骨盤(腸骨)は、わずかに可動性のある骨です。仙骨を挟んで左右に2枚、蝶の羽のように横に開いた状態になっています。これを左右ともに、前方に滑らせるイメージでやります。蝶番のように閉じるのではなく、丸いものの上を滑って動くような、接合部が開いて皿のような骨盤が前方に滑っていく感覚で。実際に骨盤が動かなくても、その付近に意識をもつことが重要かと思われます。

わかりにくい場合は、椅子に座り、まず左の骨盤を意識して、少し左脚を上げて、骨盤を回すつもりで左脚を動かしてみる。脚を意識せず、骨盤が動いた結果として脚が動くように。これを、左右やれば、骨盤あたりの感覚がわかりやすいでしょう。
こうすると自然に脚部がやや内転します。足先や膝を動かさなくても、骨盤あたりの意識で動かせることを、体感覚として自覚するのが狙い(これはかなり重要かな)。脚部が内旋すると、膝を絞ったときと同じように、体重が内側にかかりやすくなります。その状態を膝に負担をかけず、下半身全体で実現するわけです。O脚の人には特にお奨めです。また、居合い、剣術などをやる方で骨盤を気にしたことがない方は、この意味をちょっと考えると良いかもしれません。
この理屈は、末端を動かす必要はないことを知る上で、とても意義あると思われるので、もう少しくどくやりましょう。
腰を柔らかくするために、仰臥した状態で両膝を立て、ゆっくり左右へ交互に倒すという体操があります。
腰の具合が良いときに、これを仙骨を動かす意識でやってみます。ただし腰の調子が良いときに試してください。
仙骨を体の下前方に滑りこませるように意識すると、大腿が少し引き寄せられる感じがします。この時、膝の重みを左右どちらかに傾けると、両膝はそちらに倒れていく。
また仙骨を滑らせれば、膝が引き上げられる。
腰の中をちょっと動かすと、膝を動かせるわけです。これは均体とはあまり関係ないけれど、体幹部の意識と操作で、離れた部位を動かすという点で、重要な意味を含んでいるのではと。とりあえず参考までに。
2.膝を一気に抜く。
体重の感覚ができてきたら、今度はそれを動かす。とりあえず、しゃがむ動作をしてみます。
とても簡単なことだけど、楽体でいう「しゃがむ」とは、「体を落下させる」こと。筋力で膝を曲げるのではなく、膝と股関節を一気に解除して、パタッと折りたたまれてしまうようにする。これが、意外にむずかしいもの。まずは、人目につかないところで、練習を。誰かに見られ、具合が悪いか、変な人かとか思われるといけませんから。
3.体重心を意識する。
膝を一気に抜いて、バサッと体が落ちる感じになったなら、どこか壁の前に立ってみます。壁に面と向かって立ち、爪先が壁から3〜5センチメートルほどの、ほとんど壁に接するような位置にします。ここで、膝が45度くらいに折れる状態まで、一気にしゃがむ。まずは、お試しを。初めは5センチは空けた方が良いでしょう。これをやって尻餅をつかなければ、体重心が良い感じということかと思います。

ただ、これはできれば良いのではなく、あくまでも体重感覚のチェックに過ぎません。やろうと思えば、筋肉を操作しても簡単にできます。大切なことは、自分が脱力して落下し、体重が背側に偏ってしまわないかどうか、をチェックすることにあります。
4.壁に向かって座る。
これは重心感覚の修練のひとつ。壁に向かい、壁に膝が接するギリギリの位置に正座する。この正座した状態から、なるべく後退せずに両爪先を立て、足の位置をそのままにゆっくり立ち上がる。そして、足の位置をそのままにして、またゆっくり正座する。何のことはない、ただ、立ち座りするだけですが、体重の動きを感じながらゆっくりやるのがポイント。体重をやや前後に揺するようにして立ち上がると、重さの感覚がわかりやすいかと思います。ただし、ちょっと膝に負担がかかるかもしれないので、ほどほどに。
また、極力、脚外側の腓骨に体重がかからないように、内側体重を意識し続けてやるべきです。
体重が感じられてきたなら、もう壁は不要。どこでも静かに正座し、バランス感覚で立ち上がる練習ができます。
礼法や居合いの他は、多くの武道で正座する際に足の位置を動かすようですが、この練習では足の位置は固定しないとあまり役に立ちません。
5.体を回す。
ここでは、合気道の構えと「体の変更二」という基本動作を利用します。ただし、合気道としてではなく、あくまでも、重心感覚を作るための運動として利用します。
とりあえず手は無視して、両脚そろえた状態から左右いずれかの足を軽く一歩踏みだし、前の足に体重の六割くらいをかけます。これが、構えの状態。
その姿勢のまま、体全体を後方に90度クルリと回転させる。(体の変更二)動作は、これだけ。
要点は、前の足の拇指丘を中心軸として回ること。前の足を捻って始動しないこと。後ろ足で蹴って始動しないこと。
じゃ、どうやって動くんだ、と怒られそうですが、ここまでに感じ取った体重を傾けることで動くつもりでやります。

実際は、捻れや加速があってもかまいません。極力、捻らず勢いをつけず、体重の傾きでフラッと始動することが重要。
捻れや加速で回ると、多くの場合、回り終えたときに、体が後退して、後ろの足に体重が移動しています。これでは体重感覚がないということです。重心の操作で回ると、回転軸があまりぶれないため、回り終えたときも重心位置がほとんど変わりません。体重をとらえる意味では、これが重要です。
均体というのは、体の重心を感覚できる体になること。
重心というのは、重さの中心だから、これがぶれなければ体は安定できる。
実際には、これを感じ取り常に安定させておくのは非常に難しいことです。それでも、日々の暮らしの中で、常時、自分の体の重さを感じていれば、さまざまなメリットがあります。
もっとも大きな利点は、体重を太い骨に多めに預けられるので、筋肉のリラックスが得られやすいこと。そして、例えば、段差でうっかり躓いたとしても、均衡を取り戻しやすく、転倒するリスクが減少します。
さらに言えば、上体も仙骨辺りにのってくれば、もっと快適になるはず。
