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●以前掲載していた写真は割愛。サービスが悪くなるけど、文字だらけにしました。


一カ条−1

 合気道は多くの場合、四方投げか一カ条(一教)を習う。ここでもまず一カ条とするのは、合気道の多彩な技のほとんどに、これが原理原則的に関わると考えるため。けれど、写真入りでていねいに解説された教本をいくら眺めても、技としての一カ条はなかなか理解しがたい。だから、少しくどく考察しておきたい。

 養神館系は初心の頃は、正面打ち一カ条抑えという型を学ぶ。
 養神館の正面打ちの場合、相手が刀を大上段に振りかぶって斬り付けるように手刀を振り上げ、こちらの脳天目掛けて打ち込んでくる攻撃を受けた状況を想定している。
 ちなみに、この手刀の打ち込みは、合気会の演武を見ていると、振りかぶる動作がないことも多い。大東流ではどうなのかわからないが、一カ条という技の意味を把握しやすくするためには、型としてはやや大袈裟に振りかぶった方が腕の状態が誇張されて見て取りやすいのではないだろうか。
 一カ条という型は、相手の腕をとって制圧する技になっている。まず型の概略を追いながら、「技」という視点について随時触れていく。
 型の体系には、攻撃を受けた状況に応じて(一)と(二)、また、それぞれに右左という対応の変化がある。
 基本的に(一)という型は、相手がこちらを引きつけるような動きをしたり、こちらが先を取った場合の戦術であり、(二)というのは相手が押す力を加えたり、こちらが後となった場合の戦術を意味する。手刀での打ち込みや突きの時は、押されはしても引かれることはほとんどないので、型では仕手(技をかける方)が先手を取って打ち込む型になる。
 (二)の場合は相手に押されている状況であり、「いなす」「すかす」という日本古来の徒手武術に多用されている技に近いと考えていいだろう。

 正面打ち一カ条抑え(一)という型を、詳細に観察してみよう。
 仕手・受けは相半身(お互いに同じ攻撃のための構え方)で対する。稽古の際の間合いは約一間。相手が剣をもっている場合は、もっと遠間になる。
 養神館の型では、仕手が先手を取って打ち込む。相手の正面打ちに力が乗り切らない内に、仕手は間合いを詰め(入り身する)、打ち込んでくる相手の腕を迎える(ただし、真の狙いは脇だろう)。
 ここに、すべての正否が懸かることになるのは当然だろう。
 もうひとつ重要な点は、なぜ仕手が先を取って打ち込むのか、ということの検討。
 合気道では基本的に後の先といわれ、受動的な戦略になっていると思われるが、養神館の型では、仕手が先を取るとされている。私はここに強く疑問を抱いていた。今は解決したが、この疑いは無益ではなかった。
 では、なぜ先なのか、と考えれば、
 @敵の攻撃、あるいは守りを引き出す。
 A実は先ではなく、後の先を作るための疑似先。
 もっと色々あるだろうが、後の先とした場合、直截的な先を除くと、この二点が、先を取って打ち込む理由になるだろう。
 真剣勝負なら(手刀の正面打ちで真剣勝負する人はあまりいないと思うが)、先手必勝である。先に仕掛けた方が早いに決まっている。しかし、型でいかに早くできたところで、実戦となると容易にできることではない。いかに早く動いたところで、互角がいいところではないだろうか。型稽古は、これが稽古でなかったら、と常に問いつつ稽古した方がいいのだろう。

 個人的には後の先が気に入っているので、振りかぶる初動をゆっくりやり、受けが打ちに転じてからこちらが打ち込むように稽古している。つまり、わざと先を後の先に転換させるようにやる。あくまで好みなので、いろいろ考え方や方法論は成り立つが。このやり方だと、受け側が先に打ち込むのに、仕手側が先手を取らなければならない、という点にちょっとだけ工夫が要る。

 ひとまず先手を取ったとしよう。
 そして無事に相手の腕を捉えられた。
 しかし、多くの場合、この段階の状態は、ただ相手の打ち込む手刀をちょっとだけ早めに押しとどめ得た、というに過ぎないことが多い。
 剣術をやる人間なら、もしも剣の手の内ということや斬りということに「技」という視点を向けていれば、肘は常に下がり、脇を締めているに違いない。合気道の動きは剣の理合いから出たと言われるのだから、攻撃してくる相手はある程度の剣術に通じた人間を想定するべきかも知れない。
 実際、剣術をやると、ますます相手の肘は下がり、脇は締まっているに違いないという考えが強まる。しっかり脇が締まった状態で衝突した場合、互角では、まず相手を崩し得ない。どうしても、先に間を詰めて、敵の斬り下ろされる腕をとらえ、脇を開けさせてしまわないといけないだろう。

 型の流れは中断してしまうが、軽く「先」や「後の先」について触れておきたい。
 合気道は「後の先」と言われる。一カ条の(一)では、「先」をとると解説されているようだが、私は基本的にすべて「後の先」になると解釈している。今取り上げている正面打ちの場合なら、相手の振りかぶりの動作を認めた瞬間に動き、相手の打ち込みが成功する前に、相手の力を奪ってしまうわけだが、「先」をとるなら早く入り身しなければならない。型の解説通りなら、相手の打ち込みより早く入り身して間を詰め、相手の腕のパワーが充分になる前にとらえなければならない。私のやり方は違うけれど、とりあえずそういう型として記述を進めよう。
 どうすれば、後の先が可能なのだろうか。歴史中に、そのような型によって、相手を制圧してきた人がいたから、かなり変形されている恐れはあるけれど、型が残されているのだろう。ということは、なかなかできないからといって、型がダメなのではなく、それに技を見ない我々がダメなのだという姿勢であるべきだろう。と、少し話が逸れたが、この型を技にするためには、先に動き出した受けよりも早く、間合いを詰めて、振り落とされる腕を、勢いが乗る前に捉えなくてはいけないわけだ。このための動きが、正面打ち一カ条抑え(一)が要求するひとつの「技」なのだろう。


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