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詳説の試み

 武術の技は本来、あまり詳しく解説されないもので、かつては生死の問題だったのだから、当然だろう。今日ではかなり語られるようになったが、それでも理解しにくい。一面、わざとわかりにくくしているような解説もある。この辺は武術習得において、かなりの弊害だろうと感じている。もちろん技は、体で感じ取る他に身につけられないと思う。できれば名人、達人に技をかけてもらい、その体感をもとに試行錯誤するのが近道だと思う。そういう意味では、なるべく館長に技をかけてもらうべきだ。たった一度受けるだけでも、だいぶ考えが進む。武道家はあまり言葉では語らないものらしいので、受ける時は集中して受ける必要がある。
 合気道も居合も僕にはまだ未知の世界に等しいが、あえて言葉にしてみるのは、多くの入門者が技を捉えにくいらしいからだ。写真入りで型を紹介する教本やビデオを見た人でも、なかなかわからない。僕も捉えられてはいないが、一歩ずつ近づけている体感がある。稚拙な体感だと思うけど、初心者には手頃なヒントになるらしい。
 そこで現状で感じている要点を、型に照らして、一般の教本では述べられない細かいことまで含めて詳しく解説してみるのは意義あるかもしれないと考えた。ただし弊害もあるだろうが。いくつもの型を取り上げる力はないので、初心者にとってやっかいな型を、ひとつだけ試してみる。


再び、三カ条の(二)

 しつこく合気道の三カ条の(二)を取り上げる。というのは、この型は複雑で実戦的とは思えないが、いろんな公案を与えてくれると感じるからだ。
 座り技の両手持ち三カ条の(二)(仕手・左半身)の私的解釈を詳述してみる。

 まず、仕手受けは逆半身に構えて歩み寄り、正座法で座る。受けは仕手の両手首を掴み、押して攻める。
 受けの力を感じた瞬間、仕手は両手を張り、前腕を押される力に合わせてわずかに内転させ、同時に脚を緩めて体を浮かし(技1)、左へ(受けからは右)受けの体の中心を軸として(技2)回り込むように移動する。この位置は45度くらいという説明もあるが、角度は相手によって変わると思った方がいい。各自練習して、相手に応じて適切な位置(というか、関係)を探るべきだろう。僕は相手の肩からこちらの腕に伝わってくる感覚(技3)を基準にしている。この際も、やはり体感が位置(関係)を把握するポイントになる。
 仕手は移動する時、受けが押し続けるようにする(技4)。次いで、仕手は重心を左へ寄せ、左手を受けの右手外側から小さく返し(技5)、手の平を相手の手首に宛う。この時、背中から肩、腕、手先まで連結する(技6)ように意識する。筋肉は固めない。これと同時進行で、右手をやや上方へ開くように返すが、手先だけでやらない。体の意識は、左と同じ。この形になった時も、受けの攻めてくる力が途切れないようにする。
 充分に形ができたなら、今度は左の重心を相手方向へ進め(技7)つつ、両手を自分の中心に向かって寄せていく。常に受けの力を感じ取りながら動く必要がある。受けが攻め続けてくるように、仕手は力を加減する(技8)べきだろう。受けの力を感じ取りながら動ければ、受けも仕手も前に出ているのに力の線がずれ、受けの手も仕手の手もわずかに斜めに進む。右手もほぼ同じ。その途次、仕手は左に寄せた重心を自分の中心に集め、体を後方へわずかに開く。すると受けの手が一気に仕手の中心へ進んでくる(技9)。この時、受けの右手が仕手の右手にすっぽり納まる。仕手が力で動かして受けの手を運ぼうとしても無駄なことだろう。相手よりも腕力があったとしても、力一杯攻めてくる相手の手を、簡単に手中にすることはできない。
 受けの右手の獲得に成功し、受けの押す力が消えた時、仕手は左手を離脱して受けの右前腕に沿って肘内側へあて(これはなくてもできる)、右手は掴み取った受けの右手の平を覗き込むようなつもりで、手を自分の鼻先へ捧げながら後方へ開いた体を戻す。この際、左右の手腕は自分の中心に固定し、手腕肩胸(背)が形成した三角形を歪めない(技10)。(技11 もちろん、掴み手にも工夫がいる)体を戻す時、左手は位置を保ち、右手は体の動きと共に前に進む(技12)、あるいはその逆になることもある。重要なのは、回転軸だろう。ただクルッと回っても、返されるのが落ちだ。仕手が体を戻した時、受けの重心を乗っ取っておく必要があると、僕は思っている。そのためには自分と相手をひとつの8の字のような形態として、ふたつの円の接点を回転軸にする(技13)べきだろう。初心者の多くは回転軸がなかったり、あっても自分の体軸の後ろ側だったりするようだ。
 この動きで、仕手は受けの手腕を捻ろうとしていないのに、受けは腕から肩に強烈な捻りが加わるような感覚に襲われ、力を逃そうとして立ち上がってしまう。この操作の時にも、終始受けの重心を感じて、自分のものにしておく必要がある(技14)。受けが後退しては緩む。そのためには仕手と受けの体をバネでつないでおく(技15)。こうすると受けの体がこちらを頼るような状態になる。
 受けの腰が完全に浮いたなら、今度は受けの右手を仕手は左手に三カ条の形に掴み替え、左足を軸に体を前回りに回転させる。この回転は急ぎすぎず、受けとの関係が外れないようにやる(技16)。充分に受けの攻める意識が減退したら、体を止める。すると受けは緊縛を緩めるように仕手の真横まで退き、締め上げられていた緊張を緩める。仕手はそこに乗って(技17)、自分の体を後方に下げる動きに合わせて受けの右手を切り下ろし、同時に右手で受けのこめかみ目がけて当て身を入れる。この当て身はストレートではなく、左手の切り下ろしと一対になった振り子のような当て方にする。全身が左右対称に協調して動く(技18)。ここの動きは、三カ条をしっかり効かせて稽古しないとわかりにくい。
 この後、受けを制していく流れは前に書いた通りだが、当て身された受けが下がろうとした重心の変化を感じたなら、それにすっと乗っていく(技19)。と同時に、次第に体を沈めていく(技20)。自分の動きに乗られた受けは、今度は別の方向に逃れようとする。その重心変化に乗り、さらに体を沈めていく。こうして、右方へ受けを誘導した頃には、受けは自分の体を支えきれずに俯せに倒れていく。
 一連の動きの要点として絶対に忘れたくない点が、受けとの関係を緩めず(技21)に動くことだ。左手で極めた三カ条を歪めない。その補助として、右手の添え方を考えるべきだろう。ギュッと掴んだり、グイグイ押すと、何も感覚できなくなる。右手は触角のように考えるといいかもしれない。触角として使うには、緩んで緩まない形が必要になるだろう。
 長い記述になってしまったが、これらはせいぜい十五〜二十秒程度の流れだ。そこに感じている具体的な技だけで21、より細かく見ればもっとある。これはあくまでも型である。例えば護身術としてこのように動いても、あまり役に立たないのではないかと思う。けれど、この型に内蔵されている技を身に発現できるなら、かなり危機を回避することはできそうだ。
 全体を通して、構えを崩さない、力を入れない、肩を強張らせて上げない、肘をゆったり下げておく、脇を開けない(というか、緩めない)、背骨を歪めない、自分の重心を保つ、脚で歩かない、手を握り締めないなどなど注意点は色々ある。概ねこんなところがこの型から技を学ぶポイントだろうと感じている。ただし、あくまでも個人的な考え方なので、正誤は自分で確認してもらいたい。



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