静かに、立つ。
静体は、『楽体』のベースになる最重要のポイント。ただ、「静かに立つ」状態です。
静かにというのは、筋肉を騒がせないということ。下半身の筋肉が、不必要に緊張しない状態を作ること。
そのための手法(というか足法ですか)を以下に記します。
1.自分の下脚の筋肉の状態を確かめる。
特にスネの筋肉。座った状態で、脚部をリラックスさせ、手で触れてみる。座っていても張っている、硬い筋肉があれば、それを憶えておきます。硬くない人は、静体は不要でしょう。スネの前部、側部の筋肉が硬い人は、急坂などを上り下りすると、そこが痛んだりするのでは。これは、日頃から下脚の筋肉が緊張状態にあり、さらにきつい働きをしたせいで痛むのでしょう。
2.立って、下脚の筋肉を意識する。
この後もしょっちゅう「意識」という言葉を使いますが、人体内部は通常ほとんど無自覚のまま働いているもの。けれど、ずっと意識し続けると、感覚できるようになります。立って、自分の下脚が緊張状態にある自覚を、まず呼び覚ますのが第一歩です。
3.体重を意識する。
筋肉の緊張が感じられてきたなら、体重の感覚をとらえるため、意識を自分の重さに向けます。これは、野口三千三先生がおっしゃった「重さに貞く」という言葉から思いついたことです。自分の重さを感じるのは、意外にむずかしいかもしれません。ポイントは、とにかく、ひたすら意識し続けること、ですか。いずれ、きっと、重さが感じられるかと思います。
4.体重を身体の中心に集める。
これが本旨。まずは、足底をタテに2分割して意識する。そして内側、親指から踵にかけて体重がかかるようにイメージする。(まずは身体左右の真ん中に体重をもってきます。前後は気にせず)膝を内側に絞って、足底小指側を浮かせればその状態は容易にわかるはず。しかし、膝を絞ってその感覚を実現するのではなく、いつも通り自然に立っている状態で、自覚的に体重を内側に持ってくるように意識し続けます。これは、すぐにできた感じがするかもしれませんが、ひとまずは常時、その状態でいられるようにしないといけません。ある時、ふと、気がついたら、体重が外側、小指側にかかっていた、というのでは無意味です。私的体験では、この感覚を作る(常態にする)まで、半年くらい要しました。

一説では「足底全体均一に」といわれますが、体重の感覚をとらえるには、まず、内側を感じ取るのが近道。
なかなか感覚がつかめない場合は、「幅10〜15cm、1cm厚くらいの板(長さは適当に)」を使うと良いでしょう。この上に、板幅の中央で左右の足が接するように立ち、板からはみ出した小指側が床に着かないようにすると、わかりやすいでしょう。
5.脚の筋肉をリラックスさせる。
これで、とりあえず体重は、太い骨がある両脚内側の方に移るはず。この状態で、意識を下脚外側の筋肉にもっていき、緩めるイメージをもち続けます。そう遠くない内に、筋肉の緊張がいくらか解けてくる感じがあると思います。それが、ここで静体と表現している状態です。

重要な点は、まず内側体重の感じをつかむこと。体重が内側にくれば、脚外側を支えていた筋肉は、緊張する必要がなくなります。
立った状態で「脱力する」ためには、これが不可欠でしょう。
本当の脱力やリラックスは、この後の話。
自分の体重を太く強い骨にのせることで、脚部の筋肉をリラックス可能にするのが「静体」のもっとも重要な意味であり、『楽体』の八割方は静体ありきです。
これにより、下脚が痛みやすいなどの問題は軽減するでしょう。また、膝にかかる負担もいくらか軽くなるはずです。
体重が内側に安定して(静体が常態になり)、脚外側の筋肉が過度に緊張しなくなると、上半身の筋肉も緩んでくると思われます。静体になったなら、リラックスの意識を上半身、特に肩に広げてください。腕の重みを感じつつ、肩の力を抜き、ダラリと腕をぶら下げた状態にして。
武術などをされない方にとっての「楽体」は、これだけでも充分かもしれません。
