14.年度代表馬について
(00.01.14)

競馬雑感13で触れた年度代表馬問題が、考えた以上に大変な騒動になっ
ていた。あくまでネット上の話だが、それぞれのファンが入り乱れて、品
の悪い誹謗中傷まで見受けられるようになり、改めて、もう少し考えをま
とめてみようと思った次第である。

まず、前回で触れたように、3頭の戦績の比較においては、自分はエルコ
ンドルパサーの選出に何のケチをつけられる必要もないと思う。問題にな
るのは、前回では先送りにしていた選考方法だろう。日本で1度も走って
いないエルコンドルパサーがなぜ、ということになる。北米の年度代表馬
は、規則上「年内に最低1度でも北米で走っていること」という規則が明
示されており、この規則があればエルコンドルパサーの年度代表馬はなか
ったわけだ。しかし今のJRAには、JRA所属馬であればいいという規
則しかないわけである。改めて言うことでもないだろうが。

スペシャルウィークファンの多くが言うことに、「日本の競馬を盛り上げ
たのはスペシャルウィークだ」という意見がある。今どきの超一流馬には
珍しい、年間8戦のスケジュール。これを走りぬき、かつG1を3勝した
戦績は、文句なしに称賛できるものだ。特に、ジャパンCで引退していれ
ば、あるいはさらに年度代表馬としての投票も増えていたかもしれないと
ころを、あえて有馬記念に出走した敢闘精神は、盛り上がりに貢献したと
いう点ですばらしい。しかし、である。では、エルコンドルパサーが日本
の競馬の盛り上がりに貢献しなかったのか? とボクは言いたい。ある意
味、スペシャルウィーク以上の貢献をしたと思う。

ボクの思い込みだとしか受け取られないかもしれないが、聞いていただき
たい。昨年ほど、ジャパンCに来日した外国馬が身近に感じられたことは
なかったはずだ。それはほかならぬエルコンドルパサーの戦ってきた相手
が多かったからである。モンジューしかり、タイガーヒルしかり、ボルジ
アもまたしかり。マスコミの外国馬評にも、いつにない説得力があったと
思う。結果はスペシャルウィークの完勝だったが、この盛り上がりを、た
だスペシャルウィークのひとり手柄にするのはいただけまい(いちいち言
うのも何だが、勝ちっぷりは完璧で、それに文句はない!)。もちろん、
天皇賞・秋、有馬記念も含めてのことだが、見えない敵・エルコンドルパ
サーを意識せずにいたか、となると、それはないはずだ。有馬記念の頃の
新聞、雑誌をみてほしい。尾形師も白井師も必ず「3番目の馬といわれた
くない」と言っている。年度代表馬は最強馬を決めるものではないが、少
なくとも、別に言葉じりを捕らえているわけでもなんでもなく、GW、S
Wの両陣営はエルコンドルの方が強いとは認めているわけだ。この点ひと
つを取っても、力量比較でエルコンドルパサーが選出されることに異議は
ないはずである。問題は、選考方法、選考基準のみに限定できるはずだ。

少し話がそれたが、エルコンドルパサーの日本競馬の盛り上がりに対する
貢献度は、何も昨年だけのものではないということも、忘れてはいけない
と思う。今年、グラスワンダーが凱旋門賞挑戦をぶち上げたのも、どこか
にエルコンドルパサーを意識してのものがあるはずだし、今後、続くであ
ろう海外遠征に向かう馬たちの多くが、まずエルコンドルパサーのことを
念頭に置くはずだ。エルコンドルを超えろ、は、凱旋門賞を勝つ馬が出る
まで、ずっと合い言葉として残り続ける。腰を据えた海外遠征=日本競馬
の盛り上がりに貢献しない。そんな短絡的な図式を正しいとまで断言する
ことはないだろうが、99年の比較において、エルコンドルパサーよりも
スペシャルの方が日本の競馬の盛り上がりに貢献したと決め付けるのは、
どうかと思う。特に秋シーズンが盛り上がったと思うのだが、それはとり
もなおさず、エルコンドルパサーの活躍を見た人々が、大きな希望をもっ
て競馬を見ていたからではなかろうか。

いたるところで触れているが、何もあとの2頭が代表馬にふさわしくない
と言っているのではない。それだけはご理解いただきたい。特にスペシャ
ルウィークの有馬記念出走は、いくら当初からの予定とはいえども、なか
なかできない英断だ。グラスワンダーについても、ボク個人はグラスが選
ばれると思っていたくらいで、やはりふさわしいと思っている。付け加え
ると、ボクは3頭がすべて顕彰馬になるべきだとも思っている。

さて、ここで話は変わる。選考方法についての意見だ。今回、3頭の比較
についての意見も多く見かけたが、それ以上にこの方法に対する意見が多
く見受けられた。これはごもっともである点が多い。ただ、日本で走って
いない馬をはずせぱいいのか、ということではないだろう。もちろん、規
則の見直しを図るのであれば、そうするのも手だ。エルコンドルは選ばれ
た。それは滞在遠征のパイオニアとしての功績が認められたものであり、
仮に今後、こうした馬が現れて、日本の年度代表馬に選ばれなくても、そ
れはそれでいいと思う。「今までにないことをした功績を評価した」。そ
れは十分にエルコンドルパサーの受賞理由としてふさわしいはずだ。

だが、何度も言うように、見直しはそれと違うところでも論じられるべき
である。地方競馬所属の馬にも資格を与えるべきだし、仮にエルコンドル
のような海外滞在馬に対して資格を与えないならば、もしも外国調教馬が
日本に滞在して調教を続け、G1を何勝もすることになった場合、逆にそ
の馬は本国ではなく日本の競馬に貢献したとなり、その馬を選出する覚悟
が必要なわけである。ただ、自分は、そのように改定するべきだろうとも
思う。だって、そうしなければ、エルコンドルが欧州年度代表馬になる資
格を否定することになるわけだから。また、きちんとした門戸開放を考え
るならば、日本調教馬で海外に滞在している馬を対象にして、かつ日本に
滞在する外国調教馬も対象にして、年度代表馬を選考するべきなのかどう
か。これは、今後論じられていくべき課題だろう。難しい問題であるが、
これこそ真の国際化への必要な議論だと思う。

あともう1つ、多数決で決めかかったものを委員会で逆転したことについ
て。基本的に、多くの多数決において、過半数に達しない場合は、決戦投
票か、該当なしになる。今回のような一種の諮問機関(?)によって別の
決定をすることもある。それをとりあえず省くとして、決選投票をすべき
だったのか、該当なしにすべきだったのか。ご想像あれ。該当なしの方が
よかったか? それはないだろう。ならば決選投票。
推測の領域になるが
グラスに投票した人は、年間を通しての活躍より、力関係を重視したもの
と判断できる。その論法で言えば、おそらくグラス落選の段階でエルコン
ドルに投票するのではなかろうか。決選投票で逆転したと思うのだが。

何だか、書いているうちにどんどん飛躍していくが、この飛躍こそ、今ま
でになかったことなのだ。その飛躍の足がかりを築いたのは、ほかならぬ
エルコンドルパサーである。このことだけは忘れてはならない。

多くのことに触れ過ぎた。支離滅裂になっている点はご勘弁いただきたい
と思う。モノ書きの端くれにあるまじき物言いだが、言いたいことをでき
る限りストレートに伝えようとしたら、このようになったというわけだ。
いい加減、騒動も沈静化してきたかな、という時期でもあるが、この年齢
になっても大人になりきれないのが自分で、納得できないことには、言い
たいことを言ってしまう。不快に感じたらご容赦いただきたい。ご意見、
ご感想は、歓迎いたします。メールにてどうぞ。

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