フランス日記

(3)

19日(水)
 日記などというものは、その日のうちに書くから日記であって
2日も過ぎてしまうと何があったか覚えていない。不覚にも、疲
れがピークに達しつつあったこの日は、エルコンドルパサーの追
い切りを見た後、大急ぎで仕事を終わらせてサンクルー競馬場で
蛯名騎手の騎乗を見に行ったことくらいしか記憶にないのだ。夜
はフランス料理屋に行ったが、2日続けて爆睡。何とも情けない
夜を過ごしているものである。
 しかし、サンクルー競馬場では、初めてフランスの馬券にチャ
レンジできた。この国では単勝、複勝の他には、馬連(7頭以下
だと連単)、ワイド、3連複が売られている。1日に1レースく
らい、4連単とか5連単が売られることもあるようだが、この日
はそれはなかった。結果は全敗。特に戦法を変えてばかりいたの
が失敗のように思う。騎手から買い、血統で買い、パドックの馬
を見て買い…と手を変え品を変え、的中をもくろんだのだが、つ
いにかすりもしなかった。
 圧巻は6レース。このレースは、特にスタンスを決めていなか
ったのだが、血統を見ていたら「父ヴェールタマンド」の文字が
見えた。この日は力の要る重馬場。ジャパンCに来日した時の触
れ込みが「重の鬼」だったヴェールタマンドのことは、覚えてい
る人間の方が少ない。周りのみんなにその記憶を呼び起こさせ、
(というか、ほとんど気づいている人がいなかったが)、高らか
に宣言した上での総流し。人気はないが、父の血を引いていれば
確実に走れるはずだ。そう思い込んでいた。ギッチリと馬券を買
い込み、パドックへ向かう。普通なら、こんな順番で行動するこ
と自体がおかしいのだが、案の定、パドックで見たヴェールタマ
ンド産駒は、ゲッソリとやせ細り、素人目に見ても弱そうな1頭
だった。それでもその血にかすかな期待を寄せつつレースはスタ
ート。T頭立てで、「連敗複式」を完全的中だった。要はT着っ
てことだよ。ケッ。

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