中山グランドジャンプ決断
1.はじめに
先週の栗東から数えれば、約2週間、このレースを追いかけてきた。
皐月賞に思い入れのある馬がいないこともあり、今週の馬券勝負レー
スであると周りにも話してきた。それもこれも、外国馬が日本のペー
スについていけないことを予測し、日本馬で勝負できると踏んでいた
からなのだが、多少、これは修正したいと思う。各々の理由について
は、これから説明したい。
2.日本馬
栗東、美浦で取材してきた2週間だが、誰に聞いてもことごとく「ゴ
ーカイでしょう」という言葉が聞けた。安定した飛越、どこからでも
レースができる自在性、そして確実に伸びる末脚。充実していること
著しい。横山義Jも「状態はいいです」とキッパリ。自分も、ずっと
そのつもりでいたし、死角など感じられない。本命はこの馬で決まっ
た。問題は他の日本馬である。ずっと日本馬で決まると思って、ゴー
カイの相手となる馬を探してきたのだが、これといった決め手のある
馬がいないのだ。ファンドリロバリーの出津Jは「大竹柵さえ飛べば
何とかなると思います」と言っている。先手を取れば手応え以上のし
ぶとさを見せるタイプなので、相手候補の筆頭に挙げられる存在だ。
あとはポレール。いくら1年以上障害レースから遠ざかっているとい
えども、3勝2着1回というコース適性は、並のものではない。前走
も、平地の脚力と久々を思えば、十分に健闘の部類に入るとさえ思え
るだけに、配当面の妙味を考えても、買ってみたい1頭だ。ケイティ
タイガーは、さすがに年齢的な衰えが隠せないように思う。落馬ゼロ
の安定味はシャンパンファイトともども買えるところだが、馬券の対
象にまでなれるかとなると…。問題はノーザンレインボーだろう。田
中剛Jは「状態はすごくいいです」と評価しているが、どうしてもこ
こ数戦の内容からは高く評価できない。ファンドリとの兼ね合いもあ
るだけに、自分は評価を割り引く。コバノスコッチは宗像Jが「飛越
はたぶん大丈夫です」と言っているが、いかんせん実績不足。あとは
ヨイドレテンシで、こちらは大障害コースも経験しているし、酒井浩
Jも騎乗経験は豊富だ。抑えの1頭に数えておく。メイショウワカシ
オの扱いが難しい。3連勝の内容と、前走で芝をこなしたことは収穫
だが、中山コース初経験という点は、外国馬と同じで、地の利が感じ
られないことはマイナス材料。人気にはなるだろうが、自分は手を出
したくないと思っている。
3.外国馬
もともと買う気はゼロだった外国馬だが、やはりオール無印というわ
けにもいかないと思うようになった。小足を使って完歩を合わせてか
ら飛越するテクニックは、やはり日本馬にはないものがある。スピー
ドがないレースばかり経験していても、飛越の技術が違うなら、スピ
ードに対応した時に、台頭する余地が当然のように出てくるはずだ。
とはいえ、その候補選びは難しい。生で見たといっても、あまりアテ
にされるようなものではないが、自分がシルシをつけるのはメイビー
ラフ、ボカボカ、ナインピンズの3頭。メイビーは、何といっても日
本に近いとされるスピードでレースが行われるニュージーランドの馬
だ。障害レースから遠ざかっているといっても、ポレールと同じ条件
である。追走に苦労しないことを前提に考えれば、最も怖い外国馬と
みていいように思う。ボカボカは、意欲的な前日調整が気に入った。
人気がない部類に入る外国馬だけに、ちょっと狙ってみたいと思う。
ナインピンズはレベル的に疑問が残る米国馬だが、掛け値なしに現役
ナンバーワンの米国ジャンパー。危険な飛越を見せた木曜日のビデオ
が必要以上に喧伝されれば、人気を落とすことが考えられる。14歳
という年齢は年齢だけに、全くの惨敗に終わる可能性もあるだろうが
国際色豊かなレースになった参戦に敬意を表して1票を投じたい。シ
ドニーオペラは斜飛の癖があることと、引っ掛かり気味だった前日の
調整がやはり気になる。陣営は大丈夫だと言っているし、ハードルを
中心に出走している馬だけに人気になるだろうが、疑ってかかること
にした。セリベイト、ヒルソサエティー、ジアウトバックウェイの英
愛3頭は、本場から来た馬たちだが、3月中旬に行われるチェルトナ
ムの大レースには出ない、いわば二線級の馬たちである。そうした意
味合いもあるだけに、評価を割り引いた。
もっとも、シルシをつけた3頭にしろ、それ以外にしろ、外国馬に対
するスタンスは基本的に抑えるかどうか、という点までだ。このこと
は、短期騎手免許で来日していたティエリ・マジョルクリックJの言
葉が脳裏に焼き付いているからである。彼は言った。「自分がグラン
ドジャンプに乗れば、大きなアドバンテージになる。他の外国馬は、
力量があっても、騎手がペースに戸惑ってしまうだろうから」。つま
り、馬の力量うんぬんより、騎乗者が戸惑うということ。日本のペー
スは、それだけ速いのだ。ビデオでみるペースと実際のスピードの違
い。やはり、日本馬有利という基本的スタンスは変わらない。
2週間にわたって気合を入れて取材し、休みを返上して前日追いを見
に来てまで馬券が外れたら、バカをみることこの上ないところだ。し
かし、それ以上に、今回はいいレースが見たい。今まで障害レースに
大した興味を持っていなかった人が見ても「障害はこんなに面白いも
のなのか」と感じられるようなレースを見せてもらえれば、それで満
足だ。そのためにも、全馬が完走することを、まず第一に祈りたい。
記念すべき第1回の国際障害レースが、すばらしいレースになるよう
心から祈って、明日のレースを待とうと思う。馬券の買い目は、予想
ページに。