
ユッスー・ンドゥール
 リチャード・
トンプソン

山本精一

ソウル・フラワー・
ユニオン

ジョン・コルトレーン

チーフタンズ

桑山哲也

吉田美奈子
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◎ユッスー・ンドゥール/NOTHING'S IN VAIN(Coono du reer)[NONESUCH,2002]セネガル
ユッスーの初めての日本ツアー初日、五反田のホールでシンセの音色が静かに流れてきたときのドキドキはいまだによく覚えている。そのシンセだけで「今日はすごいライヴになりそうだ」と予感させてくれた。ソロ公演の前のジャパン・エイドから数えて彼のライヴは10回くらい見ているけど、ワールドワイドでのCDの発売があろうとなかろうと、生の演奏はいつだって素晴らしくて、アフリカ全土を代表する同世代のミュージシャンの充実した活動は頼もしく見続けてきた。とにかく張りのあるどこまでも伸びていくあの声と、トーキング・ドラムや各種パーカッションとベース、ギターが絡み合って織りなす精妙なリズム・アンサンブル(世界最強!とか言いたくなる)はますます熟成されて、もう言うことなし。腰も胸もムズムズしてくる感じはなんと言ったらいいのか。このアルバムは久しぶりに愛聴しそうな快心作で、ほんとユッスーが元気だと嬉しくてたまりません。コラの響きから始まる1曲目以下、どの曲もユッスーの魅力全開。カブールの街中でサッカーに興じる子供たちの写真を使ったジャケットや、ブックレットにあしらわれているダカールとおぼしきストリートの写真も素晴らしいし、ノンサッチとの契約は大正解では? また来日してくれないかな。タイトルを見る限りでは、セネガル盤の“BA-TAY”と2曲だぶっている。
◎リチャード・トンプソン/RICHARD THOMPSON BAND LIVE! SEMI-DETACHED
MOCK TUDOR[BEESWING RECORDS,2002]イングランド
公式サイトだけで販売しているライヴCDの第4弾で、今回は99年のアルバム“MOCK TUODR”発売時のツアーを収録したもの。とにかく世界一好きなミュージシャンなんで、これもひたすらリチャードのギターと歌とバンドの演奏に酔ってます。いつも通りおよそアコースティックとは思えないスピード感あふれるダブルベースのダニー・トンプソンほか、ギターやコーラスに息子のテディ、サックスにピート・ゾーン、それとドラムが初耳でマイケル・ジェロームという人なんだけど、マタックスばりのタイトで気持ちのいいグルーヴ。心ととけつつ身は跳ねつつ、しんみりもしたり。'Hard
on me'でのギター・ソロには昇天しました。
◎山本精一/クラウン・オブ・ファジー・グルーヴ[Pヴァイン,2002]大阪
ボアダムズや羅針盤、ROVOは多少聴いてるけど、ソロ・アルバムは初めて。ジャケのデザインや紙質に至るまで含めたトータルな作品として素晴らしい。多くのミュージシャンが参加はしているが、ベースは一人で5年もかけて録音したそうだ。ゆったりとしたグルーヴと精緻に音を重ねて作り込まれたサウンドには心地よいテンションと同時に不思議な解放感があって、中毒状態。窓を開け放して満天の星空の下かなんかで聴いたらもんのすごく気持ちよさそう。傑作。
◎ソウル・フラワー・ユニオン/ラヴ・プラスマイナス・ゼロ[ブレスト,2002]大阪・京都
8月に出たアルバムで、ここ数作の中ではいちばんよく聴いてる。10曲のうち6曲がカヴァー曲で、ヴァン・モリスンの「クレイジー・ラヴ」、ボブ・ディランの「嵐からの隠れ家」、アイリッシュ・トラッドの「ラグラン・ロード」とか定番的な選曲だけど、どれもまるっきり自分の歌にしてしまっている中川敬の歌がすごくいい。それに、「タンザニアからパタゴニアまで」「フリー・バルーン」などのオリジナル新曲がまた、なんともロマンにあふれていてよいのだ。音数が減ったせいで、サウンドと音質面でもとっつきやすくなったし(^^;)、力こぶ入ってないのが良いです。次はかなりのリキ入れて作るようなこと言ってたので、期待してます。
◎ジョン・コルトレーン/至上の愛 デラックス・エディション[インパルス,2002]アメリカ
新たに発見された未発表テイクなどを収めたディスクと、オリジナル(こちらも新しいマスターから起こしているらしい)のリマスター版との2枚組。モダン・ジャズを聴き始めた学生時代には、タイトルを繰り返すチャントのようなコーラスがヘンに印象に残っちゃって、こむずかしげなアルバムのように思っていたんだけど、いま聴くとぜんぜんそんなことないですね。さいきんは若い人たちにあまり聴かれてないふうだけど、やっぱりコルトレーンいいな、と。音質も文句なし。このシリーズ、ディスクを取り出しにくいジャケットの作りは感心しないけど。
◎ザ・チーフタンズ/ダウン・ジ・オールド・プランク・ロード[RCA,2002]アイルランド
副題に“THE NASHVILLE SESSIONS”とあるとおり、カントリー音楽の聖地ナッシュヴィルで、盛りだくさんのゲストを迎えてのセッション・アルバム。アイルランド色は濃くないけど、とにかく鮮度も成熟度も高いエネルギッシュな演奏に、えー、またカントリーのセッションなの? ってな気持ちは吹っ飛んでしまった。バディ&ジュリー・ミラー、ベラ・フラック、アリスン・クラウス、ヴィンス・ギル、ギリアン・ウェルチ、リッキー・スキャッグス、ジョン・ハイアットと、多少僕にもなじみのある名前を並べただけでもこんなメンツで、いやそれにしても素晴らしい。「ブルーグラスやオールドタイミーなカントリー・ソングがケルト音楽の直系にあたる音楽であるということを、このアルバムほど明確に伝えてくれるものはない」とライナーには書かれているけど(by島田耕)、その辺はよく分かりません(^^;)。デレク・ベルが参加した最後のアルバムになってしまったことだけが悲しい。ハイエナ爺も必聴、と見た。
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