知る世界 「桂川日記」(51)「炎天下を歩く」

今年は炎天下を、取材のためにあるくことがかなりありました。本を執筆するためという目的もありますが、バスもほとんど通らない田舎の道を、たった一人で目的のところを目指して、てくてくと歩いているときは、話しかける人もなくて、いささか孤独感に襲われることもあるのですが、その周辺に人影も無くて、とにかく目的地へ行かない限り、人と出会うこともない田園地帯を、ひたすら歩きました。

下着は勿論のことシャツまでびっしょりと汗で濡れ、バンドを占めた胴回りまで、完全に汗で濡れてしまいました。

そんな苦労をして訪ねたのは、在原業平が晩年過ごしたという十輪寺と彼と恋仲であったという二条皇后の高子が通ったという大原野神社でした。

こうして実際に行ってみて、大原野神社へ参詣に来た皇后に、十輪寺で塩を焼いて合図をしたという、伝説も確認することも出来ました。古代のロマンを、現代で想像する楽しみを感じます。 日を改めて、業平が祖父の平城天皇とちちの阿保親王の供養のために建立したという不退寺へも行ってみました。

奈良から平安へと政権が変わると同時に、暮らしの中心地が、奈良から京都へと変わっていった業平にとって、生まれ、育った平城京は、最後まで忘れられないところであったということが判り恋多き貴公子の心のよりどころが、どこにあったのかを偲んできましたが、それにしても、今年の炎天下を、一人でこつこつと歩いた思い出が染み付いたようです。

何か満たされたような孤独感は、なんとも見えません。

あなたも、是非経験してみては如何ですか。

こんな中から、少しでも私の思いが原稿の中に写しこめたらいいのにと思っているのですが、まだまだこれからも取材のたびはつづくことになりそうです☆

十輪寺高札の写真
十輪寺庭の写真
塩竈の写真
大原野神社の写真
不退寺本堂の写真