楽しむ世界 Faile 3 「ひとくち古代史考」(宝物)

今回は「宝物」ということについてお話したいと思います。

少年の頃、大事なもの・・・それこそベーゴマとかメンコ、ビーダマの類ですが、そんなものを友達と勝負をして勝った時の、戦利品として沢山溜めていたりしたものです。そんなことが両親にでも知られてしまったら、たちまち捨てなさいなどと、厳しく注意されてしまうので、とにかく誰にも知られないように、自分だけの秘密の場所に、こっそりと隠しておくのが、とてもスリリングで、わくわくする楽しみでした。

みなさんの記憶の中ではどうでしょうか。

目下、テレビの番組の影響で、所謂、お宝ブームのようですが、しかしあなたはそういった「お宝」を持っているとしたら、どんなところへ仕舞っておきますか。

自宅の金庫か、銀行の貸金庫へでも置いておくのでしょうか。

しかし・・・ちょっと待って下さい。

「宝物」と古代が、どんな関係があるのかと質問されそうですね。

実は大いに関係があるのです。

たとえどんなに時代は古くても、大事なものは大事で、何とかそれを大事にとっておきたいと思う気持ちは、自然の欲求です。しかも他人に知られずに、密かに持ってもいたいはずです。古代でも、いい加減なところへ置いておいたりすれば、たちまち盗賊などの標的となってしまいます。運が悪ければ奪われてしまうことになってしまいます。古代では、セキュリティなどというものが存在しているはずもありません。

超古代では、とにかく大事なものは地面を掘って、その窪みに大事なものを入れて、こっそり仕舞っておくしかありませんでしたが、こうして地面を掘って作ったV字のようにへこんだところを、「クラ」と言っていました。乗馬の時に馬の背に置く鞍も、このV字の形から起こった名称です。

V字に凹んだと言えば、マクラ(枕)もそうですね。

はじめのうちは、こうした地中のクラに、大事なものを仕舞っておいたり、隠しておいたりしていたわけですが、やがてそれも、蛇の道は蛇とかで、すぐに突き止められて、安全ではなくなってしまいました。

いつの時代でもそうですが、こっちが知恵を絞って隠せば、盗賊も知恵を絞って探し出すといった具合で、地下の「クラ」も、安心というわけではなくなってしまったわvです。

さてさて、それでは大事なものを仕舞っておくのに、もっとも安全なところといったら、どんなところでしょうか・・・。

やがて古代の人々は、自分の手の中に持っていることだと考えるようになったのです。

両掌をまるめて、その中へ大事なものを仕舞うということです。つまり手のクラへ仕舞っておくことです。

たしかにその通りかもしれません。

大きなものは別として、宝石のようなものは、手のクラ・・・テクラ・・・へ仕舞って持っているに限るということになったわけです。そしてテクラへ仕舞っておくその大事なもののことを、テクラモノ・・・タカラモノというようになっていったようなのです。

宝物は、肌身離さずに持っていることが、一番安全だということなのでしょうね。

我々がよく使う「宝物」という言葉には、いつも手の中に持っていたいほど大切なものという意味があったのでした。なかなか意味深い言葉ですね。そう思いませんか。「宝物」には、こうして古代から伝えられた知恵が籠められているのですが・・・☆