読む世界 Faile(20)「消滅した作家の集団」

同じものを書く人たちと言っても、それぞれ違った狙いがあり、それぞれジャンルも違います。それに従って、類は友を呼ぶということでしょうか、グループができていきます。

本来はそれぞれ自由であるはずなのにと思うのですが、本来作家という仕事をする人は孤独なので、どうしても同じ方向を目指す仲間が欲しくなって、グループ化していきます。

その時、その時の時の勢いで、活気づくグループもあれば、勢いを失ってしまうグループもあります。

そんな中で、顕著であったのは「冒険作家クラブ」でしょう。 世界の変わった土地、一般の人が行かないようなところへ冒険をして、それで注目を浴びていたグループでしたが、時代の変化と共に科学が急速に進化していって、一般の人でも、行ってみようと思えばほとんどどこへでも行けてしまいます。かつては勇気ある作家たちによって行われていた冒険の旅も、まるで色褪せてしまうような、一般市民による冒険旅行が勢いづいてきました。

もう作家の行う冒険旅行など、とても珍しいものではなくなってしまいました。

言うまでもなく「冒険作家クラブ」は、事実上消滅してしまいました。

これと同じような運命にあるように思われるのは、かつて勢いを持っていた集団の一つである「SF作家クラブ」でしょう。もちろんこの集団は消滅したわけではありませんが、すっかり勢いを失ってしまっているということでは、いささか「冒険作家クラブ」と同じような時代の波をまともに受けてしまっているといっていいでしょう。

現代のように科学の進化が激しい時代になると、作家が想像する科学の世界では、とても捉えられないような現実が表現されて行きます。

読者も小説で読む科学よりも、現実の科学の進化を、目の当たりにしているほうが、どれだけ驚異に満ちたものか、どれだけ興味深いものか知れません。そうなれば、SFというジャンルに興味を失って行ってしまうのも、止むを得ないことかもしれません。

とにかく昨今は、フィクションである小説の世界が、極端に勢いを失ってしまっています。物語から実話の世界へ移行してから、もう十年以上もたっていますが、時の流れの勢いに従って、ますますその勢いを増して行きつつあるようです。

それでは、どんな世界に踏み込んでいけばいいのでしょうか。 時代が、どう変わろうと、どんなに科学が進化しようと、簡単にその姿をとらえることのできない世界があるのではないでしょうか。

心の世界です。

これからは歴史的な事実、さまざまなことが起こる現象的なものを取り上げるのではなくて、依然として謎めく心の世界・・・つまり心理的なものを描いていく小説の誕生が必要なのかもしれません。もうそれ以外のものでは、特に興味のある世界はなくなってしまっています。

現在もまだ健在である「推理作家協会」にしても、もう作家によって作られた犯罪にしても、それを超えた、とても想像し得ない事件が次々と起こってくる現代では、もうそれほど魅力的な集団ではなくなりつつあります。

これからは、更に新鮮な世界が開発され、それに伴った作家の集団が生まれてくるかもしれません。それは時代が沈滞した時よりも、むしろ現代のように、激しく揺れ動いている時のほうがいいのかもしれませんね。しかし果たしてネット文化が激しく進展する中で、どう紙の文化を復権させていくか、もの書きを目指していく人には、大きな課題が立ちふさがっているように思えますがどうでしょう☆