本の隠し部屋
個人的読書記録乃頁

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2004年読破作品一覧
 正岡子規
仰臥漫録 病床にある子規が、毎日の食事、訪問客、俳句などについて綴った日記。 →詳細
 大沢在昌
天使の牙(上下) 2003年映画化された作品の原作。 →詳細
 沢木耕太郎
一号線を北上せよ 私が棺桶に持って行こうと思っている「深夜特急」。その続編的位置の作品。 →詳細
 江戸川乱歩
江戸川乱歩名作集1 どのお話も主人公が劇的に謎解きをしているのだが、最後に「本当に推理はあっていたのだろうか?」と自問自答する、すっきりしない結末の話が集まった短篇集です。
 京極夏彦
塗仏の宴(上下) いろんな話が絡み合って、一つの物語へ収束していく様は読んでいて圧巻でした。さすがだなぁ、京極。の割りに、謎解きというか憑物落としが軽い気がした。もっとガックリ憑物落としてくれたら気分爽快だったのになぁ。
伏線張った終わり方だし、堂島大佐と藍童子はまた絡んでくるんだろうね。あと途中から関口くんの存在が忘れられていたのがらしいというかなんというか(^^ゞ
 江戸川乱歩
吸血鬼 偽装、花氷、かたわ者、連続殺人・・・などなど乱歩テイスト満載。思えば初めて読んだ明智モノだ、これ。
最後、復讐を果たした三谷が倭文子の手を握ったのは、復讐したとはいえ、実は途中から本当に彼女を好きになってしまったが故の行動だったのだろうか?そう思うと、奇想天外なこのお話がしんみりした様相を帯びてきて、ちょっと格調高くなるなぁ。
 清水義範
まちまちな街々 「旅行先の見聞録を書くからタダで旅行させてね」
妙案を思いついた泥江はK書店に掛け合い、妻と一緒に日本各地をタダで旅するのであった。
1を知って10を知った気になってしまう泥江氏と彼をサポートする妻の会話がいい。こういう旅や旅の味わい方はいいなぁ。あと富山県にある埋没林博物館へはぜひ行ってみたい。
 清水義範
どうころんでも社会科 前回読んだ「まちまちな街々」と似ている作品でした。というかベースが同じ内容の話があった。沖縄では昆布は特産品ではないのに沖縄の昆布消費量は全国で2位である。それには富山の薬売りが関係していたーーこの土地がこのように発展したのはこういう流れがあったからです、とか、歴史にこの国の武将がこうして登場するのはこういう理由があるからです、とか、人間が生きている周囲の環境はそれ自体がすでに社会科なのです、という考えの元に書かれた作品で、社会科と言えば社会科だし、雑学といえば雑学といえなくもない。ただ、やはりそうして地域のことを考えられる清水義範は面白いなぁ、と思う。
 吉田鋼市
 久我万里子
ヨコハマ建築・都市物語 横浜市内にある建築物を紹介している本。(近代西洋建築だけでなく、現代建築も掲載されている)自分が訪れたところから、まだ行ったことないところ、知らなかった建築物まで網羅されていて、見ごたえのある一冊。小脇に抱えて横浜散策へ繰り出したくなる。構成は第1部、第2部と分かれているのだが、第2部の著者はかなりロマンチストと見た。ちょっと読んでいてこそばゆかった(^^ゞ
 正岡子規
松蘿玉液 子規が晩年編んだ4大随筆集の1つ。俳句に関する評論はもとより、人身攻撃など世論に対する評論、日本画と西洋画について、ベースボールのルール説明、果物の特色、など多面にわたる内容となっていて面白い。これが書かれたときはまだ病状は軽かったのかなぁ?先に読んだ2冊(「墨汁一滴」「仰臥漫録」)よりも病気に関する記述が少ない。
 清水義範
陽のあたらない坂道 歴史に名を残している有名人の影に、実は名は残ってないけれども偉大な発明をしていた人々がいたかもしれないーーという発想をもとに書かれた小説。リンドバーグが無着陸飛行に成功した影で、実は日本人がアフリカ大陸までたどり着いていたのだ、とか。発想の転換が面白い作品。
 池澤夏樹
夏の朝の成層圏 南の海で船から転落した主人公・ヤシが、命からがらたどり着いたのは無人島であった。
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 ジュール・ベルヌ
十五少年漂流記 新潮文庫を2冊買って、応募券を送ると、もれなく「ブックチャームプレゼント!」に踊らされて買った本(もう1冊は太宰治の「人間失格」)。
このジュブナイルを実はこの年まで一度も読んだことがなかった。
期せずして続けざまに漂流モノを読んだけど、先に読んだ「夏の朝の成層圏」とは全然違った漂流モノでした。
とにかくこちらは、勇気、希望に満ち溢れている。さすが少年が15人は違うね。この手のお話は本当はもっと若い時に読むべきなんだろうなぁ、と思った。
 江戸川乱歩
屋根裏の散歩者 池袋で開催された乱歩展を見て、この作品を読んだら、とても興味深かった。
土蔵に暮らす厭世人は多分乱歩がモデルだろうし、下宿屋に鍵がかかって密室になることが丁寧に繰り返し記述されているのは、実は乱歩が生きていたころは、丁度下宿屋の過渡期(?)だったらしく、それまでの下宿屋は個室に鍵がなくて、ふすまで隔ててあっただけだったのが、鍵のかかる下宿屋が登場したのがこの頃だったのだそうだ。モダン好きな乱歩も早々にこれへ移り住んだという、その事実が投影されているのだろうと思う。アパートに鍵がかかるかかるって、現代人にとっては当たり前のことを何でこうもしつこく?と思うところだけど、乱歩展を見たおかげで時代背景がわかって面白かった。ちなみに収録作の「虫」は気持ち悪かったです。
 志賀直哉
小僧の神様 初めて読んだ志賀作品。思えば日文科卒なのに、有名な近代文学をほとんど読んだことがないというのは問題だなぁ。 さておき。志賀作品の特徴は知らないのですが、彼の作品は写実です。日常生活をそのまま書き写した作品が多く、その中で、登場人物たちの揺れ動く心が描かれてました。とくに志賀自身がそうありたかったのかな〜と思わせるのは「静かである」ということ。「人間の静かさ」に対する考察が繰り返し出てくる。彼の生と死を同一に考えるものの見方は共感が持てた。「城の崎にて」はまさに名作だと思います。
 太宰治
人間失格 自分と世間(他人)との距離感をうまくつかめない主人公・葉蔵の辛く、苦しい半生を綴った作品。
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 太宰治
富嶽百景・走れメロス 表題作は学生の頃勉強したはずなのに全然内容を覚えてなかった。
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 高浜虚子選
子規句集 季節、天文、雑記などに分類した子規の俳句・約1300あまりを収録した句集。 →詳細
 夏目漱石
それから これを読んで、「三四郎」「それから」「門」がどうして「三部作」と呼ばれるのかがわかった。これは実際に3冊読んで見ないことにはなにが「3部作」なのかわからんでしょう。
このお話は、享楽主義者の主人公が、友人の妻を実は愛しており、その結果、世間からも孤立していくお話(続く「門」は孤立した2人が2人の世界だけで生きていく話)。
主人公が「働くために働くのではなく、生活のために働く時点で、純粋な労働ではなくなっている。自分が純粋な労働のために働くのでなければ意味がないのだ・・・云々」と話すところは結構共感。
他にも、夏目漱石節が炸裂していて面白かったです。