勝手なおしゃべり (2)

「聴覚障害者のための家電商品とは」勉強会での提案



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  「聴覚障害者のための家電商品とは」勉強会での提案
       2002年7月31日
 石田良子と申します。肩書きは何も無い自由人です。

 私には親しくしている、盲ろうのお友達がいます。約束をせずにどなたかがその方の家を尋ねても、玄関を開けてもらう方法はありません。でも私には突然訪問しても、家に彼女がいさえすれば、入れてもらえる方法があります。
 私は呼び鈴を押す代わりに、玄関前でおもむろにタバコを1本出して、火をつけます。深く吸い込んだあと、戸の隙間に口を近づけて「ふーっ」と煙をはきます。2、3回これをしていると、中で彼女が「あら? タバコのにおい。石田さんが来たのかしら」と、気づいて戸を開けてくれます。

 これまで出されていた、聴覚障害による不便さと、その解消法については、ライト(フラッシュライト)・文字・バイブによる提案が多かったように思います。
 それに加えて、この、「香り(におい)」が、何かの合図に上手く利用できるのではないでしょうか。
 玄関のボタンを押すと、部屋に何かの香りが流れるといったように。
 
 合図に使えるものとして、もう一つ日頃考えているものがあります。それは、「空気の流れです」。
 たとえば、天井に一直線に細い切れ目があり、そこから空気を噴出す。水ならば、滝といった感じです。ここを通過する、または体が触れれば、何かを伝えられる。この先は危険という合図にもなるかも知れません。
 香りと空気の流れが、これから工夫される商品に何かのヒントになるかと、提案します。

 実は、今日私がここで提案するようにと、呼んでいただいたのは、全く違うテーマで、「触読式置時計」についてです。
 これは、盲ろう者、特に盲ろう児のために何人かのグループで半年ほどかかって考えたものです。
 今日のお話を聞いていますと、聴覚に障害のある人は、全国に600万〜800万人いるとのこと。聴覚障害者のために商品に工夫を加えれば、市場がこれだけ増えるというお話が多かったように思います。
 それに引き換え、私の提案します「触読式置時計」は、わずかな数の盲ろう者。その中でも全盲ろうの方で、しかも触読に慣れていない方と、これから時間の勉強をしようとする盲ろう児のためのものです。
 と、いうことは、例え商品化しても、市場は極小さいということです。
 これを考えると、今日のテーマである、共用品とかユニバーサルデザイン商品には取り上げにくいものだと思います。
 
 にも係わらず、私はここで皆さんに提案をしてみようと考えました。それには理由があります。
 今回の時計の研究には、「できるだけ既存の時計を生かして、多くの方にも一緒に使ってもらえる時計」という考えは入れませんでした。むしろ、ほんのわずかな全盲ろう者と盲ろう児のためだけを考えることにしました。
 この、特殊な条件を前提に考えを進めていく内に、面白いことに気がついたのです。思い切って一般の方の使う時計とは切り離して考えを進めた結果にできた時計の構想。これは、時計という概念に捉えられていたときには、考えられなかった新しいものでした。
 そして、反対に少数の人だけのためと考えたものが、とても奇抜な新しい時計を生み出すヒントになるのではないかと思えてきました。
 これは、最近聞かれるようになった、「アクセシブル・デザイン」という言葉に当てはなるものかも知れません。
 少数の人たちの条件にあわせて考えられた時計が、ユニーク商品として一般市場に出ていく可能性を感じています。

 具体的な時計の考えは、時間が足りないためにご説明できませんが、例えば、「時計は円運動でなければならないのか。1日を横の長さに置き換えたらどんな時計になるのか」「針の動きであらわす必要があるのか。針の変わりに、ピンが飛び出すといった時計の可能性はないか」「デジタル時計の文字が、飛び出してきたら見て使う者にとっても、面白い時計になるのではないか」などです。
 これは、私たちがそれぞれ「棒時計」「ピン時計」「触読式デジタル時計」といっている構想です。

 もし、触読式置時計に興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、お声をおかけください。詳しい研究資料を見ていただくこともできるかと思います。
 ありがとうございました。
2002年08月06日 01時16分17秒

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