『ムトゥ・踊るマハラジャ』

 いやいやいや、いや〜いやいや、面白い!踊る踊る、歌う歌う、飛ぶわ蹴るわ走るわの大騒ぎ。いろいろなメディアで取り上げられたんで御存知の方も多いとは思いますが、インドのアクション・ミュージカル・ラブロマンス大河ロードムービー。まあ早い話が、ありそうなネタは全部突っ込んだゴッタ煮映画です。全体としては、まあ正直者が大活躍して最後にはハッピーになるというとても安直なお話なので、個々の要素を見てみましょう。

アクションについて

 アクションは香港映画のバッタもん的なカンフー。インド人もカンフーやるのか?という感じですが、主人公のムトゥはトレードマークの腰巻をあたかもヌンチャクのように始終ヒョイヒョイやっていて、ひょっとすると香港映画のファンなのかも。それから、カーチェイスならぬ「馬車チェイス」がありまして、これも時速10キロ程度の馬車から腰の引けたスタントが滑り落ちる程度の間の抜けたアクションがはいってますが、何か台数がやたらと多いのですっかり騙されてしまうすごさがあります。

ミュージカルについて

 言わずと知れた「何の脈絡も無く突然歌い出すシーンの連続」ですが、まあミュージカルって元来そういうものですよね。基本的に1人で歌い踊ることはあんまりなくて、バックにたくさんのダンサーを引き連れてマイケル・ジャクソンばりのダンスを披露します。またヒロインの方は例の首カクカク、手がクニャクニャ動く例のダンスですが、あの手振りは何かいろいろと意味があるんでしょうね。とにかくこれ聴いてると、もう世の中のことがどうでもよくなってきて、ラブアンドピースな世界に陥ると言うか、脳みそがグニャグニャになるような歌と踊りです。

ラブロマンスについて

 この映画の基本線の1つは、主人公ムトゥとヒロインの旅芸人との恋物語ですが、最初はお互いすごくいがみ合っているのだけどやがて打ち解けていくという、まるで日本の古典的ラブコメ漫画のような展開です。ちなみにキスが限界という点や、お決まりの三角関係・四角関係が出てくるあたりも日本の古典的恋愛ストーリーの構成に良く似ていて、この辺は万国共通の文法と言えるのではないでしょうか。

大河について

 ガンジス川とインダス川が……って違うわい!(一応ボケ) この映画のもうひとつの線が、ムトゥの父と悪者との関係でして、この説明をする回想シーンはまるで別の映画のように重厚な感じになります。教訓あり、涙あり、いかにも出てきた瞬間悪役とわかるような悪役もちゃんといて、お決まりのパターンで財産を狙ってしまうあたり、水戸黄門に通じるものがあります。

ロードムービーについて

 前述した馬車チェイスから、そのまんまムトゥの馬車は「隣の州」(よくわからないんですがムトゥがタミル人らしいのでその近辺?)まで行ってしまいます。で、そこはもう違う言語圏で話が通じないわしきたりは違うわで、その辺が結構ロードムービー入った展開になってます。でも踊りのスタイルが同じだなあ、、、

一応全体も

 全体通して、欧米や日本の映画から見ると映像が大変チープな感じなんですが、そのチープさが決して手抜きではなくて「金は無いけど何とかしよう」的な感じなんですね。カメラの移動も、背中なめ→股抜け→向こう側の人のアップなんていうので、股のところで明らかに切れてるんですけど一所懸命つなげようとしてるんです。ハリウッドならこんなのCGでサクッとやっちゃうんでしょうけど、でもCG使っちゃえばいいだろみたいな『エアフォース・ワン』に比べたらこっちの方が絶対映画としての気合はありますね。ということで、映画を初心に戻って見ることのできる一本と言えるでしょう。


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