出たぜ木村太郎、久々の間抜けコメント!

 フジテレビ深夜ニュースで端っこの方に座っている木村太郎は、どう見ても所在無い感じではあるが本人はご意見番のつもりらしく、しかもときどきインターネット関連のむちゃくちゃ間抜けなコメントを吐いて、インターネットコミュニティに格好のお笑いねたを提供してくれる(拙文を参照)。今日も「いかにも時事問題通のオヤジがちょっとインターネットをかじった状況で言いそうな」一発をかましてくれた。

 ネタはコソボ問題なのだが、空爆状況に関するNATOの記者会見でビデオ映像が使われたことについて、太郎がかましたのが次のような主旨のコメント。

 インターネットについてそれなりに知識のある人なら、これを読んで(実際に番組を見た人なら、見た時点で)腹を抱えて笑っていることだろう。以下、多少無粋ではあるが、どの辺がどう可笑しいかを説明していこう。

 まず、パソコンへの表示だが、確かに画面では「プロジェクターで映し出されたウィンドウ」が確認でき、そのウィンドウフレームはWindows95的である。ただし、Linuxのfvwm95はWindows95と寸分たがわぬと言ってもよいほどに似せてあるし、BeOSでもWindows95に似せた表示をすることができる。まあ、この辺はいいだろう。

 次に、パソコンでビデオと言うと、むしろメジャーなのはRealやQuickTime、Video for Windowsだろう。他にもビデオデータの保存形式はいくつもあるし、何より「普通のビデオの映像出力を、ビデオキャプチャカードを介してパソコン上に直接表示」させることも可能なのだから、MPEGだと断定する理由は何も無い。フレームの周りにボタンなどがないことから、RealやQuickTimeやVfWではなさそうだが、、、

 どんどん進もう。MPEGは、インターネットでよく使われるもの「ではない」。少なくともMPEG1、MPEG2は必要とする帯域が広すぎる上に遅延やデータ欠損に対する耐性にも難があり、インターネット向きではない。MPEG1はどちらかと言えばCD-ROMに焼くなどの蓄積用途向きだし、MPEG2も蓄積型のDVD-ROMや帯域が保証されるデジタル衛星放送などで使われている(将来は帯域保証された有線のビデオ・オン・デマンドなどでも使われるだろう)方式である。余談だが、MPEG2を使用しているデジタル衛星放送では、雪や台風の厚い雲などで衛星からの電波が弱まるとブロックノイズが頻発してくるため、軍事利用にはあまり適さないのでは無いかと思われる。MPEG4になると携帯電話などでの利用を想定して狭帯域を意識したものになっているが、これはようやく標準化にこぎつけた(んだっけ?)という新しい規格なので、どちらにしろまだあまり使われていない。

 さて、ではNATOはインターネットを軍事目的に利用していないのか、というと、ビデオなんつーレベルとは無関係に彼らは「ネットワーク」を使っているはずである。何といってもインターネットの元になったパケット交換網の考え方自体、「核攻撃を受けても寸断されない強固なネットワーク」を意図したものだったのだから。また、インターネットのはしりと言えるARPANETは国防総省の肝いりで作られた実験ネットワークだし、1983年には研究目的の利用と軍事目的の利用を分けるため、ARPANETから軍用のMILNETが分離成立している(この辺はRFC2235にある)。NATOがネットワークを持っていたって、何も不思議は無いわけだ。

 ここでなぜふじもとが「インターネット」ではなく「ネットワーク」と言ったのかというと、インターネットというのは基本的に第三者の管理・運営するネットワークを経由して目的地までたどり着くものであり、機密性の高い軍事情報を「第三者の手を介して」運ぶことは大変危険なことだからである。もちろん、それは個人情報や企業情報も同じなのだが、こちらはコストとのバランスが重要であって多少の危険は甘受するか暗号化で危険を軽減することになる。一方、軍事組織はコストより安全性・機密性が最優先されるのがおそらく一般的な考え方であり、このことから考えるとNATOなどはインターネットではなく独自の組織内ネットワークを持っているのではないかと想像できるのだ。そこでのプロトコルがTCP/IPであるかどうかは知らない。

 最後に軍事利用の話であるが、仮に(記者会見で出す程度の)ビデオ映像がネットを介して運ばれたとして、これは軍事利用と言えるのだろうか??企業の広報と変わりないじゃん。

 ということで、またしても太郎はぶちかましてくれたわけだ。今後もどういうボケをかましてくれるか(え?しゃれになってない?)目が離せない存在だと言えるだろう。


fujimoto@eva.hi-ho.ne.jp

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